■第8師団の南西諸島防衛整備
鹿児島県の島嶼部防衛は防衛上の喫緊課題でしたが来週、奄美警備隊などが新編され、この状況が漸く改善します。
第8師団奄美警備隊、いよいよ来週26日に編制完結し鹿児島県島嶼部の防衛警備体制を大きく強化されます。奄美大島へ新設される自衛隊施設は新設の奄美駐屯地と瀬戸内分屯地で、550名規模部隊が鹿児島県島嶼部最大の奄美大島にて守りを固めます。南日本新聞等によれば、今月に入り駐屯部隊が続々と傭船フェリーにて九州より到着しているとのこと。
鹿児島県島嶼部は防衛上の空白地帯となっていまして、ここに奄美警備隊が置かれ状況は大きく改善します。防衛上の空白地帯となっていた背景には、冷戦時代にソ連軍の上陸蓋然性が低く、中国海軍にはまともな外洋航行艦艇や航空機が無く、敵が想定外であった為でした。しかし、中国軍太平洋進出と鹿児島方面への国籍不明機増加が状況を変えました。
奄美大島は防衛上、九州島と沖縄本島を結ぶ要地であり、周辺海域では中国潜水艦浸透事案等、2010年代に入り冷戦時代とは比較にならない程の緊張が醸成されてゆきました。中国軍が沖縄を、とは既に時代遅れの発想であり、九州を越えてミサイル爆撃機は紀伊半島沖まで進出していまして、点と点を結ぶ要地の防衛力強化は焦眉の課題となっています。
奄美駐屯地と瀬戸内分屯地が来る3月26日に新設され、新編記念行事では航空自衛隊よりブルーインパルスが飛来し祝賀飛行を実施ます。奄美駐屯地は奄美市名瀬大熊に建設、ここには新編の奄美警備隊と西部方面隊第2高射特科団第3高射特科群より一部中隊が駐屯します。奄美警備隊は第8師団隷下に新編され、350名規模の部隊であると考えられます。
瀬戸内分屯地は奄美大島の大島郡瀬戸内町に新設される奄美駐屯地の分屯地で、健軍駐屯地の第5地対艦ミサイル連隊より一部中隊が分屯します。第3高射特科群一部中隊と第5地対艦ミサイル連隊一部中隊の各定員は概ね80名程度と考えられ、奄美駐屯地には駐屯地業務隊が新設、会計業務や糧食と施設管理業務を瀬戸内分屯地と包括し実施されましょう。
第8師団隷下の奄美警備隊、第8師団は熊本市北熊本駐屯地に司令部を置く南九州の精鋭師団ですが、奄美大島では苦い経験がありました。2010年10月、総雨量766mmの豪雨が奄美を襲い鹿児島県より災害派遣要請が出されましたが、第8師団に海を越える装備は無く、フェリー航路再開まで海上自衛隊救難ヘリコプターにて先遣隊を送れたのみという。
鹿児島県を防衛警備管区とする第8師団には衝撃が走り、即座に防衛省へ第8飛行隊へ航続距離の長いUH-60JA多用途ヘリコプターの配備を要請、併せてキャンプハンセンの在沖米海兵隊へ隷下普通科連隊を順次研修へ派遣、実際にUH-60JAの配備も実現しました。ここに中国軍事圧力増大があり、同じ九州の第4師団対馬警備隊のような部隊を新編します。
対馬警備隊は本部管理中隊と普通科中隊という350名規模の部隊です。本部管理中隊とは通信小隊や施設作業小隊に情報小隊と本部班等、部隊が独立行動を行うための小隊を集成したもので、警備隊の規模は、師団普通科連隊が本部管理中隊と5個普通科中隊に重迫撃砲中隊、旅団普通科連隊が本部管理中隊と3個普通科中隊ですから、小規模ではあります。
軽装甲機動車や中距離多目的誘導弾と120mmRT重迫撃砲に91式携帯地対空誘導弾、対馬警備隊はこうした装備を有しています。中距離多目的誘導弾は射程8kmの対戦車ミサイル、120mmRT重迫撃砲は最大射程13kmの強力な第一線火力で、併せて対馬警備隊では多くの隊員がレンジャー資格を有しており、山猫部隊やウルトラ警備隊と呼ばれる精鋭部隊だ。
警備隊の運用は、重要地である為に部隊を置く必要はあるが、普通科連隊を一個丸ごと平時から維持させるには難しい地域へ置かれ、本部管理中隊を編成に置く事から指揮命令機能と支援能力だけは普通科連隊並、という編成であり、実際、対馬警備隊が創設された当時から、有事の際に九州から即座に複数普通科中隊を空中機動させる運用計画があります。
方面ヘリコプター隊、各方面隊の多用途ヘリコプター部隊についても、その保有数定数は一個普通科中隊を同時空中機動させる能力を企図し要求されたといい、警備隊が隷下の中隊により遅滞戦闘を展開しつつ、増援の普通科中隊を順次警備隊隷下へ戦闘加入させ、数時間で一個中隊という規模にて順次増強してゆきます。奄美警備隊も同様手法が採られるのでしょう。
03式中距離地対空誘導弾、奄美駐屯地に駐屯する第3高射特科群一部中隊は通称“中SAM”とも呼ばれる国産地対空ミサイルを装備します。これは奄美大島全域と徳之島や喜界島までを護る射程60km程度の防空用で同時多数の低空超高速目標への対処性能を持ち、垂直発射方式を採用する事で掩砲所に森林地帯や市街地といった錯綜地形でも運用が可能です。
12式地対艦誘導弾か88式地対艦誘導弾、瀬戸内分屯地第5地対艦ミサイル連隊一部中隊へ配備される装備です。第5地対艦ミサイル連隊は西日本地域唯一の地対艦ミサイル連隊で、88式地対艦誘導弾は冷戦時代、ソ連軍の北海道大規模侵攻へ備え開発された装備で沿岸部の標定装置支援を受け、内陸部の掩砲所等敵から発見されない地域より運用が可能だ。
88式地対艦誘導弾は護衛艦むらさめ型以降の艦対艦ミサイルとも共通化させたもので、陸上自衛隊の装備の中では射程は最も長く、奄美大島から運用した場合で奄美大島周辺海域は勿論、九州南部に近い屋久島南方海域と沖縄本島北方海域までの海峡を防衛可能です。これにより、南西諸島突破を企図する周辺国海上脅威の接近を拒否する事が出来ましょう。
鹿児島県島嶼部の防衛は、この奄美警備隊の新編により南九州を防衛する第8師団が完成させる事となります。加えて沖縄那覇駐屯地に司令部を置く第15旅団は年度内に沖縄県の防衛上空白地域である先島諸島防衛へ石垣島の警備隊新編準備を進めており、第15旅団はヘリコプター隊と高射特科連隊を有する強力な離島防衛部隊、更にその強化を進めている。
水陸機動団と即応機動連隊が有事の際に増援へ展開します。昨年新編されました佐世保の相浦に置かれる水陸機動団は水陸機動連隊を順次新編しており、上陸戦闘大隊のAAV-7水陸両用車により離島防衛が可能であり、即応機動連隊は昨年南九州と四国に改編創設、今年度末に南東北と北海道に改編創設され、機動運用部隊として有事の際の増援に当ります。
南西諸島の防衛力強化必要性が指摘されたのは1990年代の周辺事態法制定以来、台湾海峡有事の我が国への直接間接の影響が懸念された為でした。その後に異常な規模での中国軍拡と太平洋進出が進み、我が国防衛政策は一種後手に回った印象は否めませんが、抑止力が破綻し日本有事、となる前に、奄美警備隊創設や水陸機動団新編が間に合った事は重要です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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鹿児島県の島嶼部防衛は防衛上の喫緊課題でしたが来週、奄美警備隊などが新編され、この状況が漸く改善します。
第8師団奄美警備隊、いよいよ来週26日に編制完結し鹿児島県島嶼部の防衛警備体制を大きく強化されます。奄美大島へ新設される自衛隊施設は新設の奄美駐屯地と瀬戸内分屯地で、550名規模部隊が鹿児島県島嶼部最大の奄美大島にて守りを固めます。南日本新聞等によれば、今月に入り駐屯部隊が続々と傭船フェリーにて九州より到着しているとのこと。
鹿児島県島嶼部は防衛上の空白地帯となっていまして、ここに奄美警備隊が置かれ状況は大きく改善します。防衛上の空白地帯となっていた背景には、冷戦時代にソ連軍の上陸蓋然性が低く、中国海軍にはまともな外洋航行艦艇や航空機が無く、敵が想定外であった為でした。しかし、中国軍太平洋進出と鹿児島方面への国籍不明機増加が状況を変えました。
奄美大島は防衛上、九州島と沖縄本島を結ぶ要地であり、周辺海域では中国潜水艦浸透事案等、2010年代に入り冷戦時代とは比較にならない程の緊張が醸成されてゆきました。中国軍が沖縄を、とは既に時代遅れの発想であり、九州を越えてミサイル爆撃機は紀伊半島沖まで進出していまして、点と点を結ぶ要地の防衛力強化は焦眉の課題となっています。
奄美駐屯地と瀬戸内分屯地が来る3月26日に新設され、新編記念行事では航空自衛隊よりブルーインパルスが飛来し祝賀飛行を実施ます。奄美駐屯地は奄美市名瀬大熊に建設、ここには新編の奄美警備隊と西部方面隊第2高射特科団第3高射特科群より一部中隊が駐屯します。奄美警備隊は第8師団隷下に新編され、350名規模の部隊であると考えられます。
瀬戸内分屯地は奄美大島の大島郡瀬戸内町に新設される奄美駐屯地の分屯地で、健軍駐屯地の第5地対艦ミサイル連隊より一部中隊が分屯します。第3高射特科群一部中隊と第5地対艦ミサイル連隊一部中隊の各定員は概ね80名程度と考えられ、奄美駐屯地には駐屯地業務隊が新設、会計業務や糧食と施設管理業務を瀬戸内分屯地と包括し実施されましょう。
第8師団隷下の奄美警備隊、第8師団は熊本市北熊本駐屯地に司令部を置く南九州の精鋭師団ですが、奄美大島では苦い経験がありました。2010年10月、総雨量766mmの豪雨が奄美を襲い鹿児島県より災害派遣要請が出されましたが、第8師団に海を越える装備は無く、フェリー航路再開まで海上自衛隊救難ヘリコプターにて先遣隊を送れたのみという。
鹿児島県を防衛警備管区とする第8師団には衝撃が走り、即座に防衛省へ第8飛行隊へ航続距離の長いUH-60JA多用途ヘリコプターの配備を要請、併せてキャンプハンセンの在沖米海兵隊へ隷下普通科連隊を順次研修へ派遣、実際にUH-60JAの配備も実現しました。ここに中国軍事圧力増大があり、同じ九州の第4師団対馬警備隊のような部隊を新編します。
対馬警備隊は本部管理中隊と普通科中隊という350名規模の部隊です。本部管理中隊とは通信小隊や施設作業小隊に情報小隊と本部班等、部隊が独立行動を行うための小隊を集成したもので、警備隊の規模は、師団普通科連隊が本部管理中隊と5個普通科中隊に重迫撃砲中隊、旅団普通科連隊が本部管理中隊と3個普通科中隊ですから、小規模ではあります。
軽装甲機動車や中距離多目的誘導弾と120mmRT重迫撃砲に91式携帯地対空誘導弾、対馬警備隊はこうした装備を有しています。中距離多目的誘導弾は射程8kmの対戦車ミサイル、120mmRT重迫撃砲は最大射程13kmの強力な第一線火力で、併せて対馬警備隊では多くの隊員がレンジャー資格を有しており、山猫部隊やウルトラ警備隊と呼ばれる精鋭部隊だ。
警備隊の運用は、重要地である為に部隊を置く必要はあるが、普通科連隊を一個丸ごと平時から維持させるには難しい地域へ置かれ、本部管理中隊を編成に置く事から指揮命令機能と支援能力だけは普通科連隊並、という編成であり、実際、対馬警備隊が創設された当時から、有事の際に九州から即座に複数普通科中隊を空中機動させる運用計画があります。
方面ヘリコプター隊、各方面隊の多用途ヘリコプター部隊についても、その保有数定数は一個普通科中隊を同時空中機動させる能力を企図し要求されたといい、警備隊が隷下の中隊により遅滞戦闘を展開しつつ、増援の普通科中隊を順次警備隊隷下へ戦闘加入させ、数時間で一個中隊という規模にて順次増強してゆきます。奄美警備隊も同様手法が採られるのでしょう。
03式中距離地対空誘導弾、奄美駐屯地に駐屯する第3高射特科群一部中隊は通称“中SAM”とも呼ばれる国産地対空ミサイルを装備します。これは奄美大島全域と徳之島や喜界島までを護る射程60km程度の防空用で同時多数の低空超高速目標への対処性能を持ち、垂直発射方式を採用する事で掩砲所に森林地帯や市街地といった錯綜地形でも運用が可能です。
12式地対艦誘導弾か88式地対艦誘導弾、瀬戸内分屯地第5地対艦ミサイル連隊一部中隊へ配備される装備です。第5地対艦ミサイル連隊は西日本地域唯一の地対艦ミサイル連隊で、88式地対艦誘導弾は冷戦時代、ソ連軍の北海道大規模侵攻へ備え開発された装備で沿岸部の標定装置支援を受け、内陸部の掩砲所等敵から発見されない地域より運用が可能だ。
88式地対艦誘導弾は護衛艦むらさめ型以降の艦対艦ミサイルとも共通化させたもので、陸上自衛隊の装備の中では射程は最も長く、奄美大島から運用した場合で奄美大島周辺海域は勿論、九州南部に近い屋久島南方海域と沖縄本島北方海域までの海峡を防衛可能です。これにより、南西諸島突破を企図する周辺国海上脅威の接近を拒否する事が出来ましょう。
鹿児島県島嶼部の防衛は、この奄美警備隊の新編により南九州を防衛する第8師団が完成させる事となります。加えて沖縄那覇駐屯地に司令部を置く第15旅団は年度内に沖縄県の防衛上空白地域である先島諸島防衛へ石垣島の警備隊新編準備を進めており、第15旅団はヘリコプター隊と高射特科連隊を有する強力な離島防衛部隊、更にその強化を進めている。
水陸機動団と即応機動連隊が有事の際に増援へ展開します。昨年新編されました佐世保の相浦に置かれる水陸機動団は水陸機動連隊を順次新編しており、上陸戦闘大隊のAAV-7水陸両用車により離島防衛が可能であり、即応機動連隊は昨年南九州と四国に改編創設、今年度末に南東北と北海道に改編創設され、機動運用部隊として有事の際の増援に当ります。
南西諸島の防衛力強化必要性が指摘されたのは1990年代の周辺事態法制定以来、台湾海峡有事の我が国への直接間接の影響が懸念された為でした。その後に異常な規模での中国軍拡と太平洋進出が進み、我が国防衛政策は一種後手に回った印象は否めませんが、抑止力が破綻し日本有事、となる前に、奄美警備隊創設や水陸機動団新編が間に合った事は重要です。
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