北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

神戸国家災害戦略防災基地の必要性【5】東日本大震災慰霊の日に願う次の巨大地震への備え

2019-03-11 20:11:37 | 防災・災害派遣
■南海トラフ地震への国家の備え
 本日は東日本大震災慰霊の日です。そしてあの災厄が突き付けた事実は地質学が示し歴史地震として歴史にのみ残る巨大災害が現代にも発生し得る現実です。

 神戸国家災害戦略防災基地、仙台港であっても那覇軍港であっても良い、と本特集では提示しましたが、しかし確実性を期するならば神戸港の方が理想的です。神戸港の荷役能力の高さと伊丹空港という内陸部の空港施設、二つの利点を強調しましたがもう一つ、神戸市は本州最狭部に隣接している為です、要するに日本海側に近い太平洋岸の港湾という。

 福知山線を利用するならば、貨物列車という最大の陸上輸送手段の恩恵を享受できるでしょう。JR貨物により日本海縦貫線を通じて本州全域から救援物資の輸送について太平洋沿岸を通らず、神戸へ集積する事が可能です。小浜線の輸送力の低さを考慮するならば、東海道本線京都線と神戸線が無事であれば湖西線経由で北陸本線から輸送する事も可能です。

 横浜線、今回の特集において参考としている在日米軍首都圏戦略施設にあたる横田基地と相模原総合補給廠に横浜ノースドックがJR横浜線により連絡されています。永らく205系電車が山手線と同じような塗装で運行され続け、旧型車両が活躍するという印象がある横浜線、新横浜駅と横浜駅で東海道新幹線と東海道本線を結ぶ横浜線は横田基地へ向かう。

 横田基地はヴェトナム戦争最盛期までは基地への航空燃料輸送に液体輸送貨物列車を活用していました。ここで活躍した路線の一つは横浜線の輸送でした。陸上輸送において例えばEF-200電気機関車は一両で1500tの貨物を牽引し、トラック輸送やトレーラー輸送とは次元の違う大量の輸送能力を有しています。ここで神戸港と鉄道線の関係が活きてくる。

 伊丹空港、福知山線において重要な点は神戸港に近い点に併せて伊丹空港沿線を運行していまして、日本海側への運輸能力とともに、伊丹空港と神戸港を繋ぐ要素としても機能する点でしょう。ただ、関西国際空港のように直接空港内に乗り入れている訳ではなく、福知山線は尼崎から大阪方面へ延びる為、神戸港への直接輸送は考慮されている訳ではない。

 関西国際空港と大阪港の連接性の方が、平時における物流からは連接性は高いと考えられます。特に関西国際空港は海上空港であり、伊丹空港が内陸部で周辺に住宅地化されている状況とは違います、特に24時間尾航空機離発着を行える利点から、災害時に被害を受けないのであれば、関西国際空港の利点は大きいといえるでしょう。しかし、関空空港は。

 南海トラフ巨大地震を想定する限り、関西国際空港は5mから7mの津波直撃を受けます。2018年台風21号の高潮被害により第一期空港島全域が水没し丸々二日間、空港施設全体が閉鎖されました。可能ならば津波対策として静岡県の浜岡原子力発電所のように最大規模の津波を想定した止水壁と防波堤で覆う事が望ましいのですが、建設は現実的に難しい。

 関西国際空港が伊丹空港程津波災害への安全性を確保出来ない背景には、津波は最大波高以上に遡上高が大きくなり、勿論30m40mの巨大防波堤ならば防ぐことは出来ましょうが、無理に高過ぎる防波堤を建設しますと、滑走路を離着陸する旅客機が防波堤に衝突する危険が生じます、残る選択肢は空港施設10m程度の嵩上げですが、これは新設と変わらない。

 日本海縦貫線との連接性は、巨大地震により伊丹空港滑走路などが影響を受けた場合に代替案として石川県の小松空港から北陸本線経由で物資を輸送する事も可能です。もっとも、伊丹空港が破損するような規格外の規模の巨大地震で有れば、福知山線の影響も、なにより伊丹空港のすぐ隣を運行していますので路線被害も、無視できない可能性がありますが。

 東海道本線で輸送する事は難しい、何故ならば2011年東日本大震災では津波警報により被災地から離れた東海道本線が不通になった為です、東海道本線は静岡県で沿岸部を運行していますから、ね。東日本大震災では伊勢湾沿岸の近鉄線も津波警報により運行を見合わせました。南海トラフ地震でも伊勢湾が津波被害を受ける為、東海道本線は安全ではない。

 山陽本線は津波の直撃を逃れます。西日本沿岸全域に津波警報が発令される状況ですが、四国に守られた瀬戸内海沿岸の山陽本線は、潮位変化の被害は勿論無視できないでしょうが、津波の直撃による軌道崩壊等、復旧に時間を要する懸念だけは安心材料があるのです。もっとも、最大規模で発生した場合は、沿線が震度七の激震に襲われ破損の懸念はある。

 大阪府北部地震の実例、震度七の懸念が政府の被害想定において最大規模で発生した場合に山陽本線が含まれているのですけれども、同じ震度七の大阪府北部地震では沿線が激震に襲われた山陽本線も軌道崩壊の被害からは免れました、阪急線が駅電光掲示板落下等、落下しても特急ダイヤを表示したままという強靭さを発揮しましたが、軌道は無事だった訳です。

 神戸はなにしろ幕末の開港以来成長を続けてきましたので、日本の近代化と共に鉄道網や物流が集中する構造、阪神大震災により機能低下に見舞われるまでは荷役取扱量で世界一であった港湾です。そして神戸港は阪神工業地帯の最大の港湾施設であり、規模は非常に大きい。この為、道路網も港湾施設も鉄道さえも物流が神戸市に集約されているのですね。

 日本海に近い神戸の立地は、日本海縦貫線との連携は勿論の事、国家災害戦略防災基地としての役割を考える場合、日本海沿岸における巨大災害に対しても即応性が高いことを意味します。もちろん、ポートアイランドから救援物資を海上輸送する際には関門海峡か津軽海峡を経由する必要がありますので、即座、という訳には行けませんが鉄道が使える。

 日本海中部地震を筆頭に過去には津波災害は発生していますし、安土桃山時代の歴史地震として記録に残る天正地震の想定震源域は若狭湾沿岸部、従って南海トラフ巨大地震以外にも巨大な津波災害を伴う地震は日本海側においても留意する要素はあるのです。この点で福知山線と東海道本線湖西線を通じ、山陰本線北陸本線に至る神戸の立地は非常に高い。

 阪神淡路大震災、神戸港の強靭な利点はもう一つ、1995年に発生したあの災厄と共に港湾と埠頭は大きな被害を受け、液状化被害と共に岸壁の破損、荷役施設の被害も看過できないものでした。神戸港が阪神大震災で受けた甚大な被害は、現在でも神戸港メリケン波止場に一部が震災遺構として永久保存されています。しかし復旧と共に耐震岸壁へ替わった。

 神戸港耐震補強により、ポートアイランドも強化されるとともに、震災後に建設されました神戸空港も、滑走路など施設は大きくはありませんが液状化対策が施されています。南海トラフ巨大地震が連動発生した場合の神戸港の強靭性はまだ未知数ではありますが、少なくとも阪神大震災前ほどの脆弱性は、耐震強化により払拭されたと考えていいでしょう。

 南海トラフ巨大地震は最大規模で発生した場合、想定死者数32万という先進国では核攻撃を除いて想定外の規模の死者数を突き付けています。この為に日本国家は災害に最大の挑戦を突き付けられる構図ですが、神戸国家災害戦略防災基地という選択肢は、神戸という現代日本が作り上げた巨大都市総力が災害被害を局限化できる施策である、と信じます。今回三日間に渡り連日掲載しました、巨大災害への備えに関する提言特集は、巨大災害には巨大都市機能でしか対抗し得ないと結論とし今回を最終回としましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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神戸国家災害戦略防災基地の必要性【4】海上からの救援策,緊急展開型導橋と港湾代替施設

2019-03-10 20:15:54 | 防災・災害派遣
■被災地に神戸港&伊丹空港移設
 神戸国家災害戦略防災基地とは、移動式の港湾と空港を神戸周辺に準備し災害時に神戸港や伊丹空港の一部を現地に即座に移設する、という方式の提案です。

 防災といいますと耐震補強をしっかりと行い家具を固定、非常用持ち出し袋と三日分の食糧に水を用意しておけば、あとは火の用心と避難所整備、この認識が根底から崩れたのが東日本大震災でした。何しろ内陸数kmにわたって津波被害を受け、家屋は土台から建物五階部分まで根こそぎ津波に押し流される状況では個人や市町村の防災準備では限界がある。

 アメリカ軍の大規模戦争準備、今回防災に応用するべく参考としたのは、湾岸戦争やヴェトナム戦争で50万名規模の米軍部隊を本土から遠く離れた前線へ展開させた戦訓に基づく、拠点となる空港や港湾設備をそのまま現地へ持って行くという兵站基盤を応用出来れば、荒野となった被災地、救助即応に即座の復旧と迅速な復興に着手できるであろう期待です。

 神戸国家災害戦略防災基地、在日米軍が大規模武力紛争に備え我が国首都圏へ実施している横田基地、相模原総合補給廠、横浜ノースドック、この三施設体系に範を採った国家規模の防災施設群を建設すべきという視点、伊丹空港、神戸ポートアイランド、神戸港、という三要素から自治体に不能な高次元の国家災害戦略防災基地を、という考え方です。

 RDCS,緊急展開型導橋システムの略称ですが、大規模災害を考えますとONRアメリカ海軍先端研究室が主導として開発している港湾代替施設の導入を併せて検討する必要があるでしょう。本特集では移動式の空港と港湾施設を準備するべき、としていますが、移動式の空港がハーベストファルコンであるのに対し、移動式の港湾施設がこのRDCSということ。

 南海トラフ巨大地震に際して、確実に考えなければならないのは津波災害です。そして津波災害は人命への大きな脅威を及ぼすと共に港湾インフラや道路施設と沿岸部の空港施設や鉄道施設を危険に曝します。この中で船舶輸送の中枢となる港湾施設が津波被害を受ける事は、長期的な救助活動へ影響を及ぼします。港が使えなければ物資を陸揚げできない。

 マルベリーシステムという移動式埠頭が1944年のノルマンディー上陸作戦において連合軍が活用しました、これは最大200万規模の部隊展開を考える際にシェルブール港やカレー港を連合軍が確保しなければ、海岸から戦車揚陸艦などで上陸するのでは充分な荷役機能を確保出来ない為に代替案として開発されたもの、巨大な艀の海岸固定式埠頭、という。

 オーバーロード作戦として連合軍がノルマンディーへ上陸した際にドイツ軍が最も悩んだのは連合軍が大量の物資をどの港湾施設から揚陸しているか把握できなかった事であり、同時に主要港湾から距離のあるノルマンディー着上陸は軍事合理性から有り得無いとドイツ軍が判断している、ここに連合軍は戦略的奇襲の可能性を見出した事が成功へ繋がる。

 RDCSは、350mの連結式浮桟橋です。海岸線までは喫水のある船舶では接近できません、この為に港というものがあるのですが。しかしRDCSの350mという距離の導橋を構築してしまえば海岸地形にもよりますがRORO船、車両や貨物をそのままタラップから乗降させる構造の貨物船からそのまま海岸線へ揚陸させる事が可能です。これは津波災害に強い。

 津波災害において沿岸部へ揚陸させる際に最も障害となるのは津波漂流物です、何故ならば生存者を含む漂流者、生存者以外も含めて、漂流物とともに漂流している可能性があります。簡単に漁網などで掃海する事は出来ません、しかし、漂流物を除去しなければ揚陸艇を揚陸させる事もなかなかできません。外洋に面していれば流れてゆく可能性もあるが。

 港湾施設は、しかし潮流や波浪の影響を受けにくい場所が港湾としての条件として良港である為、津波漂流物が滞留する場所に築港される事が多い。そこで、RDCSが配置する事が出来るならば、漂流物が塞ぐ救援艦船と港湾施設の最中をそのまま水上道路を通す事が可能となります。津波被害を受けた後でも埠頭を使えば荷役作業が素早く展開できます。

 マルベリーシステムとRDCSの違いについてですが、RDCSは12mと24mの分割式艀構造を採用していまして、接合部分にはダンパーを備えています。マルベリーシステムよりも一つ一つは小型なのですが、ダンパーにより波浪の動揺、上下動の影響を吸収する事が出来ます。勿論限度はありますが、マルベリーシステムよりも長い距離を繋げる訳ですね。

 事前集積船や病院船という選択肢、陸上の倉庫に救援物資を集積するのではなく、貨物船、それこそそれほど大きくは無い中古のカーフェリーなどでも代替できるもので、船舶要員は平時には最低限の保守管理を、災害時には予備自衛官を招集し操船させる、召集が間に合わない場合には、現役要員が操船し、その補填に予備自衛官、という施策もあり得ます。

 きたかみ、太平洋フェリーの新旧交代が先日行われましたが、旧きたかみ、は廃船となります。こうした中古フェリーを取得するという選択肢はあるでしょう、はくおう、自衛隊の傭船はこの方式で取得しました。毎日運航するのではありませんから多少老朽化していても問題はありません。カーフェリーであれば輸送艦よりも輸送力だけは非常に大きい。

 病院船、政府は幾度か大規模災害への対処を主眼にその装備化を検討しています。要するに客船やタンカーを改造し病院設備を船内に搭載し、独立した運用が可能となります。また、アメリカ軍が世界中に展開させる事前集積船という、これは明らかに軍用に用途が限定されますが、師団規模の装備品をRORO船に搭載し、洋上へ配置するという施策もある。

 事前集積船という選択肢は、例えば貨物船数隻分に、別に戦車や装甲車は不要ですが、保存食料や3t半トラック、トラックならば消防でも運用可能だ、小型水陸両用車輌等を搭載し、遊弋させておく選択肢はあり得るかもしれません。もちろん、この施策を採っているアメリカ軍は車両のバッテリー性能維持等、定期的に必要な整備を行っているのですが。

 海上待機、これこそ自治体にはできない、政府が国家事業として防災政策を薦めなければ発想として生まれない発想です。ここまでも十年以内に来るか判らない災害へ備える必要はあるのか、という批判もあるでしょうが、ここまで記した防災施策は国家規模の災害対処とともに、防衛出動という起きえない事が望ましい事態への抑止力ともなるでしょう。

 ハーベストファルコンは津波災害により壊滅した飛行場施設を復旧させるためにアメリカの施策を学ぶという視点で必要性を提示しましたが、本来はアメリカ空軍が何もない滑走路だけの施設へ戦闘機部隊を展開させる為の資材です。災害時には寄与しますが、南西諸島有事にて、那覇基地がミサイル飽和攻撃を受けた際にも当然復旧へ活用できる装備です。

 ラニーミード級汎用輸送艇は大量の支援物資を沿岸部で埠頭と埠頭を仕分けと輸送の為に用いる沿岸用輸送艇ですが、災害時に大量の物資を輸送する用途であると共に、そもそも有事の際にも必要な燃料や衛生器材と戦闘支援器材を仕分けるもの、防衛出動に際しても必要な機材は戦闘車両や火砲と弾薬だけではなく、防災と防衛で重なる必要物資は多い。

 RDCS,緊急展開型導橋システムも津波被害を受けた港湾復旧に必要な機材であると提示しましたが、元々RDCS,緊急展開型導橋システムそのものはアメリカ軍が大量の物資や車両を事前集積船から沿岸部へ揚陸する為の器材である訳で、これも南西諸島有事の他に大量の陸上部隊を輸送する際などに輸送艦に載りきらない車両や物資の輸送に寄与するものだ。

 災害対処へ大きな投資を、とも受け取れるこの特集ですが、自衛隊の主任務は防災ではなく防衛だ、という反論は当然有り得るでしょう、当方も同感です。しかし、神戸国家災害戦略防災基地、という選択肢は同時に戦闘以外の戦闘支援や兵站という部分で、防衛力強化に資するものです。何より、共に国家危機、という部分で重なっているのですから、ね。

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神戸国家災害戦略防災基地の必要性【3】巨大航空基地と拠点港湾で荒野を拓く米軍戦略備蓄

2019-03-09 20:07:35 | 防災・災害派遣
■被災地救助拠点迅速構築
 大規模災害派遣と軍事行動、軍事行動には支援作戦という大規模災害による地域不安定化を回避する確たる区分があり、その準備は防災へ応用できます。

 神戸国家災害戦略防災基地、伊丹空港と神戸港という航空輸送と海上輸送の拠点に併せ、自治体規模の防災準備では対応できない高次元の災害対処、港湾や空港に総合病院を被災地へそのまま移動させる器材を集積しよう、というもの。特に空港そのものを持ち運びできるハーベストファルコンという設備は、注目すべきもの、災害以外に戦時にも重宝です。

 トリアージ、人命の取捨選択という究極の選択、これを強いられるのがふだん一年分の死傷者が数分で発生する大災害です、そして救命救急インフラ沿いの物が災害により機能不随となり、普段の百分の一の能力で百倍に事態へ対処を求められる事で飽和状態となり、取捨選択しなければ全員助からない故に助かる見込み順に、と追い込まれる構図ですね。

 救命救急の第一線や医療従事者の全員は、トリアージについて他に選択肢はない故に仕方なく追い込まれている構図、しかし、取捨選択、普段であれば行わず全員助けられる状況下なのに、という葛藤はあるようです。当事者にお話を伺うと、訓練でやっていても、実際にやらないように済むよう願いながらやる、必ずやらず済むならば絶対にやらない、と。

 空中展開による迅速な救命救急要員の現場進出、空中救急搬送と広域医療拠点、この二つが実現したならば、大災害においても、この問題はかなり解消されるのではないか、勿論限度はあるでしょうが、災害により最初に滑走路毎機能を喪失する空港、特に津波災害が重なれば沿岸部の空港が救助拠点ではなく救助を受ける側となってしまいます。ここで。

 ハーベストファルコン、これは米軍が空港が壊滅した地域へAEW-空軍航空遠征集団を派遣させるための器材です。在日米軍施設にはありませんが、在欧米軍や中東のオマーン国内ツムライト空軍基地に備蓄されています。非常に興味深い装備で、ここまで高度な機材が災害時に必要かは議論の余地があるかもしれませんが、被災沿岸部に展開できれば便利だ。

 AEW-空軍航空遠征集団用のハーベストファルコンは、可搬式航空機シェルターと1100名分コンテナ住宅に整備器材と支援車両群から構成されています。ツムライト空軍基地には数セットが備蓄され、オマーン国内のセーブ国際空港やマシラ島海軍施設にも分散配置、オマーン国内のハーベストファルコン事前備蓄だけで26000名規模の空軍部隊を収容する。

 ハーベストファルコンには滑走路用金属マットが含まれ、これは多孔構造鉄板で整地された平野部に一直線に2700mを敷設するだけで滑走路とする事が出来ます。当然移動強い管制施設も含めていますので、津波で壊滅した地域付近へ、海上輸送し揚陸するだけで、勿論余震と津波を警戒する必要はありますが、若干内陸部でも臨時空港を設置できましょう。

 東日本大震災では航空自衛隊の宮城県内における拠点となる松島基地、東北地方空の玄関口である仙台空港がともに津波被害を受けました。勿論、行方不明者捜索、空港や基地施設へ漂流した被災者が滑走路を覆う瓦礫下に居られる可能性を考えますと、安易に滑走路復旧、という選択肢は難しかったのでしょうが、ハーベストファルコンがあれば、どうか。

 松島基地は、幸い基地隊員は格納庫上等に避難し無事でした。写真は岩国ですが、日本には沿岸部の飛行場は多い。ハーベストファルコンのような資材を沿岸部の艀等揚陸点から搬送できれば、そのまま津波で使用不能となった滑走路に滑走路マットを敷設し、海水に沈んだ整備車輛はそのまま代替車両に、内陸燃料分配システムを用いれば航空燃料を迅速に基地へ送油し、基地機能を短時間で再開し得ました。

 F-2B戦闘機が松島基地にて津波被害を受けました。ただ、松島基地が教育訓練部隊である事を知らずに緊急発進による空中退避を行わなかった事を非難する、自衛隊を全く知らない方が居る事は知っています。教育訓練部隊が必要以上に頑強な施設と待機体制を執ったならば、自衛隊は事実上の戦闘機部隊を練習部隊と偽っているのではないかと誤解を招く。

 しかし、津波被害後に、内陸燃料分配システムやハーベストファルコンのような記事があれば、災害直後の救援受け入れ態勢は大きく変わったと考えます。例えば、全国から集められた防災ヘリコプターは松島基地と仙台空港が使えず、陸上自衛隊の霞目飛行場と山形さくらんぼ空港等に集められ、特に空港は整備員と器材不足と燃料不足が響いたともいう。

 可搬式基地施設というべきハーベストファルコンが自衛隊へ配備されていなかった事を責める事はお門違い、責任は有権者であり主権者の我々に在る、なぜならばハーベストファルコンのような可搬式基地施設はアメリカ軍が外征用に備蓄しているものだからです。外征する状況は憲法上不要でしたし、東日本大震災以前にはあれほどの災害は想定外でした。

 可搬式航空機シェルターと1100名分コンテナ住宅に整備器材と支援車両群、構成要素は上記の通り、日本国内でも同様の物は製造できます。積んでおきますとかなり場所を取りますが、RORO船に積載するならば、それ程大き過ぎるものでもない。しかし何故保有していないのか必要性が認識されていなかった。移動式空港との選択肢が無かったともいえる。

 可搬式航空機シェルターは風速35m/s、最大瞬間風速55m/s程度の悪天候でも航空機を防護できる折畳式の航空機用テントです。サイパン島やグアム島へ訓練展開する米軍機等が格納庫に入りきらない航空機を収容するものですね。災害時には、なにしろF-15でも収容できるものですので小さな公民館並、災害時には救助部隊収容や避難所へ転用できます。

 移動式空港施設といいますと、運んで組み立てるハーベストファルコンよりも、航行して整備までできる海軍の航空母艦を考える方も居るでしょう。しかし、世界最大のニミッツ級原子力空母であっても運用できるのは艦載機まで、全長は333mであり、2500m級滑走路を必要とするボーイング777のようなワイドボディ旅客機を着陸させる事は出来ません。

 メガフロート、金属製艀構造の海上滑走路、という選択肢もあり得るのかもしれません、実際、メガフロートは1997年に東京湾へ実験施設が建築されましたし、静岡県や三重県等で防災用に検討されました。ただ、救援物資を輸送する貨物輸送機、つまり旅客機と同型の機体を発着させ、荷役作業を行う、となりますと、かなり大がかりなものとなります。

 名護市辺野古沿岸部へ在日米軍普天間飛行場移設先を建設する際にもメガフロート構造は検討されました。ただ、あれは可搬式ではなく、更に会場には滑走路を建設するのみであり、管制施設や整備施設は陸上配置の構想、それでもミサイル攻撃や台風への脆弱性を指摘され、埋め立て構造を採用する事となりました。現在、大きな問題となっていますが。

 メガフロート、最低限神戸空港とまではいかずとも長崎空港規模のメガフロートを、曳船で被災地へ地震発災から、津波被害や地震被害を受けた空港が復旧するよりも早い短時間の展開が可能となれば、空港施設代替の選択肢に含め得るのですが、残念ながらメガフロートを長大な滑走路規模の大きさで数ノットの曳航が可能な技術はまだ完成していません。

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平成三〇年度三月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2019.03.09-03.10)

2019-03-08 20:03:58 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 3.11が今年もいよいよ来週にやってまいります。そんな中の今週末は西の防災フェスタと東のイギリス艦一般公開と並ぶ、さあ皆様、週末はどうしますか。

 モントローズ&むらさめ晴海埠頭一般公開。土曜日と日曜日にイギリス海軍23型フリゲイトモントローズが一般公開されます、昨年八月にイギリス海軍揚陸艦アルビオン一般公開が行われた同じ晴海埠頭での一般公開です。モントローズは本日8日に晴海埠頭に入港し、14日木曜日まで停泊します。場所は晴海、写真の45型防空駆逐艦デアリングが入港したところ。

 アルビオン一般公開が同じ晴海埠頭にて行われた経験からですが、一般公開は1000時から1500時まで、早めに行動しましょう。こういいますのも、モントローズは満載排水量4200tのフリゲイト、一度に多数は乗艦出来ません。昨年のアルビオン一般公開では非常に大勢が見学に並び、受付終了二時間前には待ち時間内に見学不能、となっていたほどです。早めに、ね。

 23型フリゲイトは中国軍による南シナ海人工島建設への航行の自由作戦参加や、北朝鮮国連経済制裁違反瀬取行為監視へイギリスより派遣されており、艦長コナー-オニール海軍中佐以下任務完了後の親善訪問を実施、ホストシップとして艦長岡田周作2佐以下の護衛艦むらさめ、が当っています。昨年12月にも写真のアーガイルが日本を訪問していました。

 舞鶴防災フェスタ、土曜日に実施されます。毎週末に一般公開が行われています舞鶴基地ですが、3.11東日本大震災鎮魂と次に迫る南海トラフ巨大地震へ備え、舞鶴基地が公開される。艦艇一般公開と東日本大震災災害派遣写真パネル展示に陸上自衛隊装備品展示と陸上自衛隊車両体験試乗、また抽選による曳船等支援船による港内体験航海等が行われます。

 ひゅうがヘリコプター発着展示も予定されていまして、こちらは自衛官志願適齢者を念頭に募集広報の一環として体験航海も行われるとのこと。東日本大震災では唯一の全通飛行甲板型護衛艦として活躍した護衛艦ひゅうが、舞鶴航空基地に所属するSH-60J/Kが発着艦します。つまり、基地内にて護衛艦ひゅうが出入港も、撮影できる、という事ですね。

 さて撮影の話題を。自衛隊関連行事、阪急沿線や新快速で一本、という近場の行事は別としまして、遠出する行事において案外油断しやすいのは頭痛薬と目薬などの常備薬の準備です。当方は頭痛薬にお世話になりますが、友人知人には胃薬のお世話になるというお話しや、列車移動には酔い止めが絶対必要、という事例もあります。嵩張らないが、その分、忘れていきがち。

 頭痛薬等は頭痛さえなければ、あんなものなくとも平気さ、と強気に浸れるのですが、一定以上の頭痛となりますと、病院へ行くかどうしようか、と弱気になってしまいます。もちろん、薬局が近くに在れば現地調達するのですが。そしてもう一つ、目薬は行事の最中に、そういえば忘れてきた、と大変な事になってから気付かされることも多く困りますね。

 目薬が必要な状況というのは、戦車が砂塵を巻き上げ、ヘリコプターが砂嵐を極致再現した瞬間など、細かい砂粒は網膜にとって有害ですので洗い流したいのですが、目薬が無いとなかなか。ミネラルウォーターのペットボトルでもあれば御の字ですが、炭酸飲料がしゅわしゅわガスを噴出する状況では積み。忘れがちでも薬類は確実に携行したいものです。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭


・3月9日-10日:晴海埠頭英艦モントローズ一般公開…http://www.mod.go.jp/msdf/
・3月9日日:京都舞鶴防災フェスタ2019…http://www.mod.go.jp/msdf/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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【G7X撮影速報】小牧基地航空祭2019.快晴恵まれた平成最後の自衛隊航空祭(2019-03-02)

2019-03-07 20:07:21 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■C-130H輸送機,迫力の展示
 小牧基地航空祭2019、一眼レフEOS-7Dの写真に先んじてコンパクト機種G7Xにて撮影しました情景の後篇です。

 小牧基地航空祭、名鉄牛山駅から徒歩五分、小牧線は名古屋市営地下鉄から乗り換えすぐ、なのですが、小牧基地は毎年来場者が増大に増大を重ねていまして、牛山駅から基地正門前の信号まで、先の基地正門まで行列がつながってしまう、という椿事もありました。

 C-130をはじまりから完了まで思う存分撮影、したかったのですが、実は私事ながらこの日は所用がありまして、午前の早い時間帯に撮影終了することを条件に展開可能となりました。なにしろ、行けるぞ、と画定しましたのが夜明けの時刻、黎明とともに長躯進出です。

 名古屋市内から地下鉄乗り入れ、これは便利です。京都駅を新幹線のぞみ号で名古屋まで一時間ほど、名古屋から中央線を金山へ、金山駅から地下鉄で平安通、ここから名鉄上飯田連絡線を経て小牧線牛山駅へ。随分前は上飯田連絡線開通前は犬山周りが基本でした。

 牛山駅から行列が基地まで伸びているのは閉口しました、最初の最初に駅からでるまで、改札機が二つだけという事もあり時間を要した、東京からの友人は颯爽と中に入っているという。手荷物検査は素早く完了しまして、小牧エアターミナルから撮影となった訳です。

 航空祭をどの撮影位置から撮影するのか、毎回悩むところです。確実に此処か其処、と決めて行きたいのですが、何分その撮影位置を確保できるか、開門2時間前にでも並ばない限り、自由に決められるものではなく、試行錯誤といいますか研究というか、毎回新鮮だ。

 小牧基地、小牧エアターミナルはエプロン地区にあって若干高台となっています。この位置から撮影しますと、航空祭基地埋め尽くす群衆と航空機という、なにか一風活況を感じさせる構図を撮影することが出来る。行けるか不可か際どい始まりの割には及第点ですよ。

 G3Xがあってもいいのかな。この写真はCANONのコンパクト機種G7Xmark2にて撮影しました。いいカメラなのですが望遠ズームが35mm換算で125mmまで、画質が落ちることを承知でデジタルズームを併用する。メイン機種は一眼の7Dmark2、機種棲み分けだ。

 G7Xは広角性能がいいのですが、航空祭では望遠ズーム能力が全て。ズーム機能を重視した機種はSX-70はじめ1000mm以上を誇るすごいものが多いのですが、有る程度画質も欲しい。そこでG3Xという際物、センサーはG7X相当で600mmズームを持つ機種がある。

 航空祭ではG7X撮影速報、と掲載していますが、遠くない将来、予算面と7D後継機種の去就が明確になった暁には、G3X,かさばりますし少々高いですがG7X撮影速報、という記事が、しれっとG3X撮影速報、というものが混じるように、なってゆくかもしれませんね。

 ブルーインパルスの飛行展示が挙行です、が繰り返します通り、時間切れという。順番に地上展示を撮影しまして撤収です。人口密度の多そうな写真中心に掲載した上で恐縮ですが、奥の方は随分と空いている。なお、聞けば先週、遂にOH-1が飛行再開とのこと。

 小牧基地はエプロン地区と格納庫地区、その奥に救難教育隊の格納庫がひろがっていまして、なんと本年は第10戦車大隊の74式戦車が展開しているという。そこで飛行展示は時間切れですが、せめて地上展示だけでもあるもの全て撮影、と一つ一つ回ってゆきました。

 KC-130,有る種目玉の虎の子二機ですが、なんと奥の救難教育隊格納庫前に揃っていました。新定番の岡崎消防のレッドサラマンダー全地形車両、地震体験車も撮影完了し、初の午前中撤収となりました。午前中ですと牛山駅帰路の混雑もそれ程では無かったのが幸いです。

 小牧基地からの撤収は予定通りに完了しまして、なにしろ平成最後の航空祭ですが、行けない可能性が高かった航空祭だけに、小牧基地航空祭2019、それらしい雰囲気を撮影出来たのは幸いです。最後になりましたがお世話になりました皆様、有難うございました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】京とれいん阪急6300系電車,休日の特別な運行が結ぶ京都河原町-大阪梅田

2019-03-06 20:05:06 | コラム
■京とれいん特急結ぶ京都-大阪
 特急電車は惜しまれつつ引退したらばそのまま消えゆく事が基本ですが、華麗な復帰を実現する事もある、それが大好きな列車ですと感慨も格別です。

 京とれいん、阪急電鉄が週末限定で運行する特急です。京都から梅田まで停車しない、ノンストップ特急の伝統を引き継ぐ貴重な列車なのですが、特急料金不要という阪急特急の伝統を引き継ぎつつ、しかし列車内は観光特急に伍する豪華絢爛な内装を誇っています。

 2019年3月23日より、6300系京とれいん、第二編成としまして7000系電車を改修した京とれいん雅洛の運行が開始されます。6300系はクロスシート車ですが7000系はロングシート車、この通勤者を大胆に観光列車化するという。なかなかに楽しみではありますね。

 阪急6300系電車の改造車がこの京とれいん運行に当っていまして、この6300系そのものは1975年から京都本線特急用に8編成が量産された一時代を構成する主力特急でした。そして、神戸本線や宝塚本線の特急や急行よりも当初から車内が特急として配置されました。

 6300系特急電車、私鉄特急では有数の気品を備えた実用的な電車です。特急料金不要は阪急電鉄のP8編成、超特急つばめ号と競った特急以来の伝統ですが、片側二扉の転換式クロスシート車で、車体側面の連続する車窓が、かつて北陸の国鉄急行型を思い起こさせる。

 京都本線特急として活躍した6300系ですが、阪急特急は当初こそ京都河原町と阪急烏丸を出ますと大阪十三と梅田までノンストップ運行が為されていましたが、徐々に停車駅が増し、その結果は片側2扉の構造が通勤輸送における頻繁な乗降に支障をきたすようになる。

 9300系という三扉セミクロスシート車が6300系の後継車両と位置づけられるのですが、実際デビュー当初に乗車した感想は、シートが新型で座り心地が良く中々、という所感が。ただ、ただし、です、車体の構造上客室内が広い一室となっている6300系の方が、いい。

 2010年に6300系は京都本線での特急運行を終了する事となりました。準急転用も阪急には過去に二扉車を三扉改造した結果に車体構造が脆弱化し寿命を縮めた2800系電車という失敗がありましたので、支線である嵐山線へ短縮編成型を一部転用する事としています。

 京とれいん、奇跡は起きた、という印象でしょうか、実は当方は当時信じられなかったのですが、2010年のさよなら運転に日本全国から鉄道愛好家が乗車に撮影に記念にと押し寄せた活況を阪急電鉄上層部が6300系の大きさを再認識し、観光特急化する決定を下します。

 6354F編成、八編成量産された6300系の一本が観光特急、京とれいんに改造される事となります。六両編成に短縮され、一号車と二号車に五号車と六号車をリニューアル化したクロスシート座席とし、中間部の三号車と四号車はセミコンパートメントへ改造されました。

 2011年より京とれいん運行開始、運行はノンストップですがダイヤ上は先行する特急の真後ろを運行し、先行列車停車中は線路上を運転停車し、先行列車発射後に通過する、という不思議な運行です。しかし乗降無という運行は読書に談話に交歓に上質なひと時を得る。

 京扇特別塗装に改造されつた車内、正直にいますと、6300系原理主義というわけではありませんが、登場当初の6300系が落ち着いていてよかったなあ、という印象もあったのですが、これは乗ってみますと価値観が一変します。セミコンパートメント、中々居心地良い。

 2010年に本線運行終了の予定でした6300系が更に阪急を代表する特急として2019年にも活躍を続けている、土曜日日曜日限定運行ですが、嬉しい限りです。7000系京とれいん雅洛運用開始とともに6300系京とれいん去就は気になりますが、活躍を期待したいですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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神戸国家災害戦略防災基地の必要性【2】西太平洋最大の横浜-相模原-横田米軍巨大戦略備蓄

2019-03-05 20:02:38 | 防災・災害派遣
■第三次大戦阻止への備えに学ぶ
 南海トラフ巨大地震が最大規模で発生した場合、犠牲者数は東日本大震災の16倍、下手な大都市核攻撃よりも巨大な被害が生じる、規格外の脅威へは規格外の備えが必要だ。

 神戸国家災害戦略防災基地の必要性、と銘打った本特集、この種の施設が最も必要なのは首都直下型地震の脅威下にある首都圏ですが、東京には横田基地と相模原総合補給廠に横浜ノースドックという在日米軍の戦略備蓄施設があります。米軍基地があるから建てられないのではなく、政府間でこれを災害時に利用できる枠組を構築する方が先決でしょう。

 南海トラフ巨大地震を念頭に、巨大津波により港湾が破損したので建設業者に復旧の入札を図り募集、という手順よりも、出来れば24時間以内に津波で壊滅した港湾を使用再開できるよう要請する事は民間業者にはできません。ローテーションで待機させる事も難しい、だからこそ、国が実施するべき、その為の施設と備蓄を行おう、という事が今回の狙い。

 第17地域支援群、在日アメリカ陸軍の部隊ですが、国家災害戦略防災基地の運営はこの部隊の方式を参考とするのが理想でしょう、相模原総合補給廠や横浜ノースドックを管理する部隊です。興味深いのは相模原総合補給廠は弾薬庫というような戦闘に直結するものを備蓄している施設ではない点ですね。弾薬庫は広弾薬庫等他の地域へ分散されています。

 相模原総合補給廠に備蓄される移動式病院設備は、第三次大戦への備えといえる規模です。伊丹駐屯地に置かれている中部方面衛生隊の設備とは比較になりません、一式だけで外科手術施設だけで45室を備え1500名の入院を念頭とした巨大施設です。2000年頃に一度報道公開されていますが、何基備蓄されているかは不明です。衛生テントは陰圧式、自衛隊も対特殊武器衛生隊等へ配備している。

 野外手術システムが自衛隊へ配備されていますが、あくまで後方の病院施設へ搬送するまでの外科手術を行う事で延命させる器材といい、二次感染防止は最大限配慮しているものの、総合病院と全く同じ施設を有するものではない、これは野外手術システムの説明で強調されました。対して此処でいう後方の病院施設を目指すものが相模原総合補給廠のもの。

 中部方面衛生隊よりはかなり大規模である、移動式病院、病院設置は病院法の制約があります、この為、厚労省から病院許可を受けた可搬式施設を平時から確保し、書類上は平時物資集積地を病院扱いとしつつ有事には本籍地のまま施設だけを移動する施策が理想でしょう。実現すれば現場でトリアージは不要、兎に角病院絵搬送する平時の手続きが可能に。

 横浜ノースドックは第17地域支援群隷下の第836輸送大隊が管理する陸軍施設です。みなとみらい地区等から見える米軍施設で、ラニーミード級汎用輸送艇等2000t級の揚陸艦のような艦艇と上陸用舟艇型の船舶が多数並ぶ様子がいつでも確認できます。第三次大戦への備え、というと若干語弊があるのでしょうか、朝鮮戦争規模の百万単位の部隊が激突する戦闘を想定している、とも。もともとは横浜港の一等地、尚、ここを戦後進駐軍が接収した事で横浜の戦後復興が大きく遅れました。

 神戸港のポートアイランド地区へ第836輸送大隊型の部隊を置き、巨大災害時に際しては内陸部の物資を海上から、逆に海上から物資を集積する基点とします。日本の官庁には荷役大量管理の現業を行う機関が自衛隊だけですが、災害時に統合任務部隊指揮下へ置くか、シービーズ海軍建設大隊型の部隊を新設するのであれば総務省管轄下でもかまいません。

 ラニーミード級汎用輸送艇、揚陸艦型の構造となっていますが、大量の船舶貨物が埠頭に接岸できない状態で、RORO船等を沖合に係留したまま海上で荷物を受け取る動力艀型の運用を行います。ラニーミード級汎用輸送艇そのものでなくとも、多少沖合、大阪湾から播磨灘まで航行できれば動力艀でも代替できますし、民間船を徴用する法整備でもよい。

 輸送艇一号型程の性能は不要です。横浜ノースドックを見ますと一番大きなバースで全長1350mの直線岸壁を有し、大型倉庫施設は5棟あります。この他に150m級バースが二つ、それぞれ15mの荷役幅を確保している。災害時に神戸港を接収する法整備だけでも対処出来そうに見えますが、施設が完全に機能している状態で即応体制を維持する事は難しい。

 横田基地の役割を期待するのは伊丹空港です。伊丹空港は自衛隊伊丹基地ではありませんが、自衛隊の輸送機は総数が限られており、特に国外からの緊急救援物資を自衛隊機だけで輸送できるほどの余裕はありません、したがってチャーター機等が主体となります。しかし、伊丹空港に近い伊丹駐屯地か川西駐屯地跡地に輸送調整部隊を置く必要はあります。

 伊丹空港は騒音問題から四発機乗り入れ規制が施行されていますが、C-2輸送機やボーイング777は降りられてもC-130輸送機やボーイング747運用不能は論外で、関西国際空港は津波の直撃を受け、神戸空港や八尾空港は滑走路長が足りません。小牧基地は内陸部ですが、200km以上離れており、災害時に限定して運用できる自治体との調整は必須でしょう。

 国家災害戦略防災基地の目的は国単位、地方空港や代替滑走路を国際空港並の発着に耐える基盤を構築する資材、港湾や空港を被災地に復旧ではなく迅速に造成する事、市町村単位や都道府県単位の備蓄ではなく、被災者千数百万が飢餓状態とならないよう給食支援基盤を、道路網や橋梁が完全に破損した地域へ構築する事、移動式総合病院施設の備蓄など。

 D-MAT緊急医療援助隊制度が東日本大震災を含め巨大災害では優れた医師や医療従事者により大きな成果を上げています。しかし、背嚢や医療鞄に収まる器材だけでは応急処置が限度、総合病院に伍する機能は発揮出来ません。また、緊急援助物資も空港や港湾が破損したままでは卸下出来ず、道路網が不通のままでは避難所へ運ぶこともままなりません。

 日本という国単位で、というものは、都道府県単位では持ち運びできる空港や港湾を用意する事が出来ない為です、そもそもその発想さえない。また病院法の関係上で被災地に病院を建築する事も出来ませんし、民間の建設業者にプレハブ構造であっても道路網が壊滅した地域へ十数時間で被災地へ達し、その後十数時間で着工しさらに十数時間で診療開始に至る能力を求める事はできない。

 相模原総合補給廠に在日米軍が極東地域での第三次大戦にさえつながりかねない大規模戦争に備え備蓄している機材が日本にそのまま準備されているならば、上掲の問題はかなりの部分で解消できます。移動式大規模病院施設と内陸燃料分配システムに架橋施設や重工兵器材、これら器材を被災地へ緊急展開させられる重要港湾や国際空港の両方に近い立地へ備蓄しておくことは意味がある。

 横浜ではなく神戸港を挙げたのは、南海トラフ巨大地震の想定被災地に近く、更に大阪湾が紀淡海峡という広い海峡を経て津波被害の直撃を受ける懸念に対し、神戸港は同じ大阪湾でも淡路島という地形から津波被害を若干避けられる可能性があります。更に空港施設は神戸空港が海上空港ですが、伊丹空港は内陸部、津波被害の完全な圏外に在る為です。

 津波災害を最大限考慮するならば、姫路港や高松港という津波が入りにくい播磨灘や瀬戸内海沿岸部が理想的ですが、物資は航空輸送を併用する為、やはり神戸港と伊丹空港の立地が必要です。特に伊丹空港は航空貨物取扱を行いますので、その関連施設がある。もう一つ伊丹空港並の施設を建設するよりは既設空港と神戸港を併用する事が理想的でしょう。

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ストライクウィッチーズ(第12回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦)大津地本,広報起用

2019-03-04 20:04:15 | 映画
■自衛隊広報とアニメーション
 ストライクウィッチーズはアニメーションと劇場版も公開された作品です。大津地本の募集広報アニメーションコラボポスターが何故か問題になっています、この話題を。

 ストライクウィッチーズの日本人キャラクターを起用した大津地方協力本部ポスター、京都新聞によればその内容に批判が集まっています。実に的外れな内容ですが、キャラクターの服装の内容が問題であるという。実のところ本作は“パンツじゃないから恥ずかしくないもん”という放映当時の公式設定もあり、実に11年遅れの批判と云わざるを得ません。

 大津地方協力本部が起用したストライクウィッチーズとは。この世界とよく似た、しかし魔力という概念が存在する1939年、突如異世界からの武力攻撃を受けた人類は戦車や火砲という通常兵器では対抗できない敵へ魔法で対抗するべく世界が結集した、という作品です。2020年に第三期が放映予定といい、大津地本は話題性含めコラボを組んだのでしょう。

 広報は平時の実戦である、とはとある広報幹部のお言葉。少子高齢化により人材確保が日本全体で困難となっている中、安定志向の価値観もあり特に数年間で退官を迎える任期制自衛官の確保は相当な困難となっており、志願年齢制限の延長等で対応を試みていますが、体力と電子装備やプログラミング等の新技術に対応する若者の志願減少は大きな問題、ここに今風の広報を試みたかたち。

 文部科学省の文化庁2008年推薦アニメにストライクウィッチーズが選ばれている事は、京都新聞文化部ならば把握しているはずです。第12回文化庁メディア芸術祭においてストライクウィッチーズは審査委員会推薦作品として選ばれており、同年は応募作品346本の中から、本作に加え、劇場版空の境界、スカイ-クロラ、みなみけ、等などが選ばれています。

 中二病でも恋がしたい!等の滋賀県を舞台としたアニメーション作品とのコラボレーションを大津地本は重視するべきだ、とか、戦車部隊と中部方面隊管内最大の演習場を受け入れる湖北に留意し戦車が搭乗するガールズ&パンツァーとのコラボ等、大津海軍航空隊以外あまり関係のないストライクウィッチーズを起用した事に若干疑問符はあるのですが、ね。

 大津地本ポスターは昨年から掲示していたとの事ですが、突如先週からの批判報道を受け、急遽撤去しています。しかし批判はいつの間にか全国放送のワイドショーへ取り上げられるようになり、そもそもアニメーションとのコラボや、女性キャラクターそのものを自衛隊広報へ連携する事への批判、変な方向に走っているような印象を受けなくもありません。

 魔女狩りのようだ。当方の所感でしたが、金曜日の小牧航空祭前夜にてストライクウィッチーズは魔女の作品だから魔女狩りに遭った、という冷静な分析、誰がうまい事云えと。しかし、前述の通り文化庁推薦アニメの一つでもあり、批判は適当なのかという印象が一つ。内容としても、描写は兎も角として自衛隊広報の趣旨から大きく逸脱はしていません。

 魔法科高校の劣等生、SFアニメ作品が一昨年の岐阜基地航空祭では広報に起用され、その前年は国民的人気劇画ゴルゴ13が起用、麻生外務大臣が愛読している関係もありゴルゴ13は外務省邦人保護広報にも活躍していました。ハイスクールフリートや艦隊これくしょん等海事系作品は海上自衛隊とも深く広報協力し、この種の連携は今に始まった事ではない。

 蒼き鋼のアルペジオ、人格を持つ潜水艦が主人公の作品なのですが、2012年自衛隊観艦式では何故か海上自衛隊とコラボレーションを実施しています。どうしてもSFといいますと軍事要素と若干でも重なるものがありまして、同時にリアリティを追求しますと軍事機構たる自衛隊の協力が要る、対して広報を強化した自衛隊、双方の利益一致となったかたち。

 ストライクウィッチーズポスター、大津と無関係か、と問われますと大津には大津海軍航空隊、水上戦闘機強風等が配備されていた歴史があります。作品に日本は出てきませんが日本とよく似た扶桑国が登場します。主人公の宮藤芳佳は武藤金義、登場人物の坂本美緒は坂井三郎がモデルといい、日本海軍の搭乗員でした。ですから繋がりが皆無ではない。

 広報とは受け手の主観的なもの、多様であっていい。ストライクウィッチーズ起用への批判はジェンダー論的批判がありますが、ならばゴルゴ13を併用し二種類広報予算を確保すればよいのか。アニメーションの自衛隊広報連携事態へ批判があるのであれば専守防衛という領域に入った敵は確実に無力化する防衛力と精強さを誇示した広報とすればよいのか。

 防衛力と精強を前面に推し出した広報というものは、あっていいとは思います。例えば自衛隊の任務、南西諸島へ押しかかる中国大陸某国からの軍事脅威や朝鮮半島某国からの核攻撃脅威に北方領土で軍事演習を続け北海道北部へ大陸某国からの軍事脅威を受ける現状を前に自衛隊が如何にシーレーンを維持し航空優勢を確保、着上陸を阻止するか、など。

 しかし、精強さを第一に推し出す広報へも批判が集まる事も事実です。例えば昨年実施された築城基地航空祭へは航空祭特別塗装のF-2戦闘機、平成の零戦と呼ばれた機体に築城海軍航空隊時代の標語、見敵必戦を捩った見敵必殺を記したところ、好戦的だとの地元自治体の批判が集まった事も記憶に新しいもの。故に批判は絶無とはできず、やるしかない。

 ガーリーエアフォース、現在もBS-211にて毎週水曜日2500時より、小松基地と那覇基地を舞台に擬人化した自衛隊機、JAS-39やF-4EJとF-2,米軍のF-15が搭乗する作品が放映されていまして、自衛隊と中国軍や台湾軍と米軍が協力し未知の勢力から人類を護る、との世界観のアニメーション作品へ、音響や基地描写等の面で航空自衛隊が協力しています。

 ガメラ2レギオン襲来、1996年のSF映画で映像作品として初めて日本SF大賞を受賞した作品がありました。もし巨大生物災害が現実の日本において発生した場合、人々や公的機関はどう動くのか、を問うた作品、自衛隊も富士学校や高射学校はじめ撮影に全面協力しているのですが、何故か新聞赤旗で叩かれた。故にこうした批判は常にあるのでしょう。コラボも含め、完全賞賛ではなく、上手くやってゆく方向性を模索するべきなのでしょう、ね。

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【G7X撮影速報】小牧基地航空祭2019,快晴恵まれた平成最後の自衛隊航空祭(2019-03-02)

2019-03-03 20:05:44 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■活況!平成最後の小牧航空祭
 小牧航空祭は快晴下で終幕しました。平成最後の航空祭、小牧以外にも四月には熊谷基地祭等はありますが航空基地での自衛隊航空祭は小牧が平成最後です。

 小牧基地航空祭、土曜日に実施されました。なかなかに活況でしたね。過去には本当に静かな航空祭、という印象があった小牧ですが、年々活況が活況を呼び、併せて迫力も重ねられています。コンデジ写真、少々粗い画質ですが、毎回恒例の速報というかたちで。

 小牧基地航空祭の思い出話、小牧基地は愛知県の豊山町、名古屋空港と滑走路を共用する航空自衛隊基地です。三菱重工小牧南工場が隣接していまして、かつてF-2を生産、いまいろいろな意味で話題の国産旅客機MRJ製造、F-35戦闘機最終組立で知られる工場です。

 名古屋市内から地下鉄で一本、名鉄小牧線沿線の基地へ上飯田連絡線という名古屋市営地下鉄から名鉄小牧線を結ぶ新線が開通したことで名古屋中心部から直ぐにいくことが出来るようになった基地です。昔は基地まで引き込み線などもあった様ですが今は徒歩で行く。

 C-130H輸送機の基地であり、C-130Hは長らく航空自衛隊が海外派遣へ投入できるほぼ唯一の機種であり海外派遣の拠点基地ともなっています。C-130輸送機は世界中で採用された傑作機ですが無給油でフィリピンやグアムへ飛行可能、導入に社会党が反対していました。

 KC-767空中給油輸送機の配備が開始され、こちらも小牧基地へ。C-130配備前には自衛隊にはC-1輸送機しかなく、これは高速飛行が可能であり、短距離運用性能も高いことから傑作機の一つなのですけれど、なにしろ航続距離が政治的に抑えられた背景がありました。

 小牧基地航空祭といいますと、海外まで飛行できるC-130H輸送機を配備している自衛隊基地、ということでこの編隊飛行が大きな目玉となっています。目玉なのですが、小牧基地は名古屋空港と滑走路を共用していますので、名古屋空港最盛期は苦労があったという。

 中部国際空港開港、2005年に愛知県常滑市沖合の伊勢湾に新空港が開港されまして、名古屋空港は県営名古屋空港へ移行しました。しかしそれまでが大変、なにしろ名古屋空港は過密度が凄い。名古屋空港最盛期は国際線もあり、ボーイング747も乗り入れていました。

 名古屋空港、滑走路は長くなく一本しか有りません。この為、旅客機の合間を縫う航空祭で、しかし、C-130輸送機にくわえ、過去には米軍がAV-8攻撃機の垂直離陸を展示したり、大人気F-14戦闘機が地上展示へ加わったり、大都市近郊の航空祭として注目度があった。

 小牧基地航空祭、しかし、戦闘機の派手な機動飛行は無く、有る種控えめな飛行展示が、一方で2006年引退まではT-1練習機の飛行展示など小技の利いた展示が披露されていまして、通好みの展示が溢れる中で一般受けする展示は抑え気味、つまり混雑しません魅力も。

 C-130H輸送機の編隊飛行は、在日米軍を含めれば東京の横田基地でも見られなくはないのですが、自衛隊C-130の編隊飛行はここか、1996年からはじまった航空観閲式くらいでしか見られません、そして機動飛行も意外とがんばり、傑作機であることを思い出させる。

 イラク派遣、この小牧航空祭ですが自衛隊の国際貢献任務が増大しますと、実任務にC-130が多数必要となり、忙しくなった。これで航空祭に参加できる総数が少ない状況が続いていました、3機編隊とか2機編隊という、編隊を自称できる最小限度が続いていたのですね。

 本年は4機、もう少し飛んでほしかったのですが、オープニングフライトにて組まれたのみ。過去少なかった年度の航空祭では、東ティモール派遣やソマリア沖海賊対処任務支援、いやいや自衛隊はイラク以外に本当に世界狭しと頑張っていまして、このためでした。

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【くらま】日本DDH物語 《第五四回》護衛艦しらね型構想,未成の6000t型ミサイル護衛艦

2019-03-02 20:12:35 | 先端軍事テクノロジー
■戦後日本の巡洋艦建造計画
 しらね型ヘリコプター搭載護衛艦へ至る幾つかの検討の中にミサイル巡洋艦というべき試案もありました。

 6000t型ミサイル護衛艦、検討に終わった護衛艦ですが海上自衛隊は8300t型ヘリコプター巡洋艦を検討当時、やはり大型化したミサイル護衛艦を検討しています。6000t型ミサイル護衛艦は3500t型ミサイル護衛艦として建造された護衛艦たちかぜ型を改良したもの、と考えられますが、当時米海軍ではベルナップ級ミサイル巡洋艦の整備が行われています。

 たちかぜ型護衛艦ではMk13ミサイル発射機を後部甲板に配置していますが、6000t型ミサイル護衛艦構想ではこちらを前後に二基配置する構想だったとも、Mk10連装発射装置を採用するつもりだったともいわれます。もっとも、はるな型護衛艦の設計当時には全通飛行甲板案や前後に艦砲を搭載、艦砲を一門とする案など検討期には闊達な議論があります。

 あまつかぜ建造当時、海上自衛隊は連装発射装置の搭載を念頭に設計を行っていましたが、最後はMk13単装発射装置に落ち着きます。実はターターミサイルは初期にミサイル本体と発射装置に万全の信頼には一考の余地があり、連装発射装置が開発、アメリカ海軍初の量産ミサイル駆逐艦、チャールズアダムス級も初期艦は連装発射装置を採用していました。

 チャールズアダムス級ミサイル駆逐艦は横須賀基地へも配備されており、海上自衛隊部内でも新護衛艦あまつかぜ配備は連装発射装置という認識が、ミサイル関連の担当では単装発射装置は認識されていたのですが、全体に周知されていたとは言い難く、廉価版と誤解されたものでした。確かに、一見したならば連装発射装置の方が勇ましく強力にみえる。

 実際には単装発射装置でも4秒で一発が射撃可能で、ミサイルを誘導するSPGイルミネータは一基一発しか誘導できませんので、過度な連射機能を備えますと誘導不能となりかねません。ミサイルが長射程化しますと、誘導時間がかわり、発射装置の連装化も現実的な選択肢となるのですが、搭載出来る対空レーダーや三次元レーダーも高度化を迫られます。

 ベルナップ級ミサイル巡洋艦、海上自衛隊は護衛艦たちかぜ型に先行するアメリカ海軍ミサイル巡洋艦を認識したのでしょうか。ベルナップ級のMk10連装発射装置は元々RIM-2Fテリアミサイルを搭載する念頭として設計されています、こちらは射程70km、巡洋艦ですので強力なMk76ミサイル射撃装置をイルミネータとして誘導に用いることが可能です。

 ターターシステム艦ですが、電子計算処理能力は余裕を確保していましたので、慣性誘導で次々と発射したミサイルを順次誘導する多目標対処能力も有していました。テリアは早い時期にスタンダードERへと転換します、こちらは海上自衛隊の運用したSM-1よりも射程が長く現在のSM-2にあたり、射程は70kmとテリアと同程度の射程を有していました。

 6000t型ミサイル護衛艦には当初二基の単装発射装置を前後に搭載する案があったはいけいには、ミサイルに関して前方の経空脅威には前方の発射装置を、後方からの脅威にたいしては後方の発射装置を、という艦砲の延長線上のような認識があったともいわれます。ロケットモーターの特性上確実な間違いとは言い切れませんが、正解ともいいきれません。

 7200t型護衛艦としてイージス艦こんごう型が建造され、護衛隊群に2隻のミサイル護衛艦が揃ったのは1994年の護衛艦きりしま就役、あまつかぜ、たちあぜ、あさかぜ、さわかざ、はたかぜ、しまかぜ、こんごう、きりしま、と時間を要しました。しかし、この事業を進める背景には、艦隊防空がシーレーン防衛に必要となるという脅威の変化が影響しました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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