北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都発幕間旅情】彦根城桜花(滋賀彦根)桜並木に浮かぶ国宝天守閣と天下普請の壮大な掘割

2021-04-21 20:01:50 | 旅行記
■桜並木と彦根城の掘割を巡る
 彦根城へ、春の陽気と共に桜の季節と云う事で少しだけ遠出してみる事としました。

 さくら、この季節というものは一年が長いようで短いとも言われるものですが、この一瞬の先始め満開を迎えて咲き乱れてから散ってしまうまでの時節を眺めてみますと、いやいや、季節を仕事単位やプロジェクト単位で視ているだけで、一年は長いものだ、と思う。

 彦根城。滋賀県彦根市の、東海道本線からも一瞬見える山頂の城郭です。東海道本線彦根駅はすぐ近くにJR西日本とJR東海の分岐点と云うべき米原駅が程近く、一寸途中下車したくなるものですが、途中下車と云わず目的地として散策してみるのも、面白いですね。

 城郭探訪、我が国における近世の城で天守が残っているのは、弘前城天守、松本城天守、犬山城天守、丸岡城天守、彦根城天守、姫路城天守、備中松山城天守、松江城天守、丸亀城天守、松山城天守、宇和島城天守、高知城天守の12城、現存天守閣は特別な重みがある。

 国宝天守閣はこのうち、松本城天守、犬山城天守、彦根城天守、姫路城天守、松江城天守が指定されていまして、その城郭は天守閣に登らずとも周囲を散策してゆくだけで、何かこう興味深い情景と出会えるものです、特に桜の咲く春の季節には感じる重みもひとしお。

 天守、附櫓及び多聞櫓は国宝に指定されていまして、別名“金亀城”、城構えは重厚となっています。彦根市の象徴的な史跡であり、明治時代には城が破却された際に解体の危機となりましたが、明治天皇へ請願はじめ尽力により破壊を免れ、市民に大切にされています。

 連郭式平山城の彦根城、連郭式平山城とは本丸に二の丸と三の丸、そして北側に山崎曲輪が配置されている構造であり、その為に掘割は広く水を湛えています。掘割の周囲には桜並木がこう美しいのですが、ちょっと早咲きと聞いたもののこちらも先走り過ぎたかも。

 複合式望楼型 三重三階地下一階天守閣は江戸初期の1604年築というもので、その屋根には切妻破風と入母屋破風に唐破風の様式が、中層に花頭窓と最上階に高欄付廻縁を巡らせる、角度によって印象が一新する不思議な天守閣となっています、築城主は井伊直継です。

 西日本と東日本の中間点と云うべき彦根を護る井伊氏の拠点、ここは江戸時代にも中山道と北陸道の分岐点であり、陸路と琵琶湖の水路から京に至る文字通りの緊要地形であり、草創期の江戸幕府においてはいつ西国大名が蜂起するかという切実な問題がありました。

 徳川四天王の一柱でありました井伊直政、この要衝を護るには戦国の世からの家臣しかいないと徳川家康は、1600年関ヶ原の戦い、その勲功により18万石にて近江国北東部を下賜しました。関ヶ原で重傷を負った井伊直政は簡単に群馬上野へ帰参出来ない事情もある。

 彦根18万石に加え、築城には幕府より公儀御奉行3名が派遣され、尾張藩や越前藩など12大名が築城を支援する天下普請となり、御殿は二の丸に、本丸に天守、西の丸と山崎曲輪に三重櫓が建てられる極めて大きな城郭となります。そのすべてを掘割が囲み包んでいる。

 掘割から見ます彦根城は内堀に中堀と外堀の3重の堀が城山を取り囲むとともに水源は琵琶湖、いまは干拓されていますが、掘割は築城当初更に広く、掘割の一部は伝染病対策により埋められていまして、そして周囲に兵站拠点となる城下町が広がってゆく構造でした。

 彦根城の掘割を外周一周そのまま巡り廻りますと、総距離は無いのですが、立ち止まり天守閣を仰ぎ見て、しかしもう少しよく見える場所はどこだろう、と思想と探索とともに歩み進めていますと、存外時間は経って行くものでして、それはもう、楽しい時間です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【防衛情報】ゴトランド級近代化改修とイラン初空母竣工,オランダホランド級OPV去就議論

2021-04-20 20:16:19 | インポート
■週報:世界の防衛,最新11論点
 今回は謎空母に初期艦というか初期のAIP潜水艦ゴトランドと哨戒艇や哨戒艦やコルベットの話題などを。

 サーブ社は近代化改修を行ったゴトランド級潜水艦ウップランドを12月16日、スウェーデン海軍へ引き渡しました。今回の近代化改修はゴトランド級としては二隻目で、スウェーデン海軍ではゴトランド級3隻が運用されています。ゴトランドは航空運用艦ゴトランドの名を継ぎ1990年に就役、世界初の実用AIP潜水艦ですが艦齢は30年となった。

 ゴトランド級の近代化改修は船体老朽部分の交換と航法システムの最新型への換装、また潜望鏡周辺のセンサーについても最新型へ交換すると共に戦闘情報システムが50の項目に渡って改良されています。なお、スターリングシステムなどAIP推進システムはそのままとなった模様です。スウェーデン海軍では当面、ゴトランド級の運用を継続する計画です。
■北朝鮮の新型SLBM登場
 北朝鮮の潜水艦発射弾道弾、日本海ASWが一段と大きな任務になりそうな新しい動きがパレードにて示されました。

 北朝鮮は五年に一度行われる朝鮮労働党党大会に合せ軍事パレードを実施、新型のSLBM潜水艦発射弾道弾とされる北極星5型を初めて公開しました。北極星SLBMは北朝鮮の潜水艦発射弾道弾シリーズで初めてその姿が公表されたのは2015年4月22日でした。北極星5型は試験塗装を施され、トレーラーにより牽引、行進に際し展示されました。

 北極星シリーズの最初に示された北極星1型は三種類ほどが2016年にかけ公表され、何れも全長はほぼ同等でしたが、弾頭部分形状等に相違点がありました。2017年には北極星2型が公開され、こちらは運搬車両がT-62車体を延長した独自の発射装置となっており、潜水艦以外に陸上からの運用を可能とさせ、陸海でミサイル体系統合化の可能性があります。

 2019年に北極星3型が初公開され、こちらは前型である1型や2型と比較し全長や直径で大型化、この頃から北朝鮮ではディーゼル方式の弾道ミサイル潜水艦の建造が発表されるようになります。続いて2020年に発表された北極星4型では直径は同程度ながら全長が若干短縮されていました、これに続く5型についてはその弾頭形状に変化がみられています。
■コンステレーション級エンジン
 アメリカ海軍が建造する新型ミサイルフリゲイトは日本のDD汎用護衛艦と比較しても同等の水準です。

 アメリカ海軍は新たに建造を開始するコンステレーション級ミサイルフリゲイトのエンジンとしてGE社製エンジンの採用を発表しました。採用が決定したのはGE LM2500-G4エンジンで、これはもともと航空機搭載用のエンジン出会ったものを千波強に転用したものです、エンジンは設計するフィンカンティエリマリネットマリン社に引き渡されます。

 コンステレーション級ミサイルフリゲイトはEASRレーダーとスタンダードSM-2を搭載、満載排水量6200t規模のミサイルフリゲイトで艦種区分はFFM,イタリア海軍のカルロスベルガミーニ級フリゲイトを原型としてアーレイバーク級を補完する防空艦として建造が決定されており当面は10隻が建造され、最終的に20隻が建造される計画となっています。
■エジプト海軍最新鋭FREMM
 エジプト海軍は近年海軍増強が著しく、一頃の陸軍大国から地中海における重要な海洋秩序へのステイクホルダーとなっています。

 エジプト海軍は12月、イタリアフィンカンティエリ社より新フリゲイトFREMM型のアルガララを受領しました。アルガララはイタリアから導入する2隻のカルロベルガミーニ級フリゲイトの最初の一隻で満載排水量は5950t、エジプト海軍よれば6700t、アスター30艦対空ミサイルと多機能レーダーMM/SPY-790-EMPARを搭載する強力な艦隊防空艦だ。

 アルガララに続くもう一隻のカルロベルガミーニ級は2024年に引き渡される方針で、エジプト海軍はカルロベルガミーニ級の他にフランス海軍よりアキテーヌ級駆逐艦を1隻導入しているほか、近年ではミストラル級強襲揚陸艦2隻をロシア経済制裁の影響から安価に入手して以来、海軍の近代化を急速に進め、地中海での存在感を大きく伸ばしています。
■ウクライナ,トルコ艦導入
 ウクライナ海軍、あぶくま型護衛艦と同程度の大きさの水上戦闘艦を整備し海軍再建を進めるという。

 ウクライナ海軍は12月16日、トルコ政府との間でトルコ製アダ級コルベット4隻と無人航空機の導入に関する協定を締結しました。契約金額は未発表だ。ウクライナ海軍ではアゾフ海にて海軍艦艇多数がロシア軍に拿捕され、海軍の再建を進めており、今回の協定を元にウクライナ国内の防衛産業再編による海軍近代化をトルコ支援下で進める構想です。

 アダ級コルベットは満載排水量2300t、小型艦ですが、SMART-S-Mk2レーダーを搭載しており、76mm艦砲とRAM近接防空システム及びハープーン対艦ミサイルと324mm短魚雷を搭載し、ヘリコプターも搭載、MTU社製ディーゼルエンジンとジェネラルダイナミクス社製ガスタービンエンジンを搭載するCODAG方式で31ノットの速力を発揮します。
■ホランド級哨戒艦去就議論
 オランダと云いますと掃海艦と外洋哨戒艦を統合したようなMCM機雷戦艦の計画が話題ですが。今回はOPV,外洋哨戒艦の話題だ。

 オランダ海軍では現在海軍が運用するホランド級外洋哨戒艦の去就が議論されています。ホランド級は重武装のカレルドールマン級フリゲイトの後継として4隻が建造されたもので、満載排水量は3750t、Thales-IM-400統合マストセンサーと76mm艦砲を搭載し、NH-90ヘリコプターとその格納庫を有しています。この他に30mm機関砲や機関銃などを積む。

 ホランド級外洋哨戒艦はオランダの冷戦後の海洋戦略として海軍よりもテロ対策を重視し2011年から2013年にかけ4隻を建造しました。しかし、IM-400レーダーの搭載により安価であるはずのホランド級の建造費はカレルドールマン級よりも高いものとなり、また広大な監視能力を持つレーダーに対し、搭載武器は艦砲のみで、射程はまったく足りません。

 オランダ海軍が本級を計画した2000年代初頭とは異なり、オランダは現在、ロシア海軍の脅威と直面しており、一方で海軍に水上戦闘艦は最新のデーゼンヴェンプロヴィンシュタインが4隻とカレルドールマン級が2隻残るのみ。ホランド級はそろそろ延命改修か退役を検討する時機ですが、この軽武装の艦を維持する意義について議論が高まっています。
■インド海軍国境警備用小型艇
 要目から考えますと複合艇になるのでしょうか河川哨戒艇になるのでしょうか。

 インド海軍はゴア造船所との間で小型哨戒艇12隻の増産契約を締結しました、小型哨戒艇は乗員キャビンに天蓋を有し十数名を輸送、重機関銃2丁等を搭載し、契約から一年以内の2021年内にも12隻全てが納入される計画です。小型哨戒艇は特殊部隊支援用に用いられる計画ですが、同時に中印国境地域においても哨戒用に用いられるとされています。

 中印国境地域での哨戒任務、しかし中国と印度は現在のところ海を接していません。この為、ヒマラヤ地域の高山池沼での運用を示しているとされ、これは2020年に中国兵によるインド兵集団暴行事件が発生して以来の続くヒマラヤ地域での緊張を前にインド陸軍に加えてインド海軍が哨戒艇部隊を派遣するという新しい段階に入っているといえるでしょう。
■イランがまさかの空母建造?
 うちの地元では空母とは呼べないな、空母と云うと私たちが想像する様な艦艇の他にタンカーに鉄板を張って間に合わせたものが戦時中にあったのですが。まさか21世紀にそれをやるとは。

 イラン海軍は1月13日、同国海軍初となる“航空母艦”マクラーンを取得したと発表しました。一見して民間タンカーと違いが分りませんが、これは取得した民間タンカー上甲板の上に鉄板を敷いて飛行甲板とした上でヘリコプターを発着させる、イギリスが第二次世界大戦中にMACシップとして建造した方式を再現した方式といえるかもしれません。

 マクラーンは航空母艦であると同時に前進作戦基地と位置付けており、タンカー部分の載貨重量は10万t、補給艦として用いる事も可能とのこと。外見から判別は難しいですが、飛行甲板部分は航空エレベータの様なものは確認できず、ヘリコプター等について露天係留するだけなのかもしれません。また前進作戦基地というが車両ランプの様なものも無い。

 イラン海軍は近くヘリコプター6機から7機を搭載するイラン海軍初の“航空母艦”を建造すると2020年に発表していましたが、まさかこれなのでしょうか。イラン海軍はマクラーンについて、補給なしで1000日の航海が可能としています。軍事用途は見い出しにくいですが、ホルムズ海峡などでアメリカ海軍空母へ異常接近する運用が考えられるでしょう。
■イランミサイル護衛艦ゼーレ
 ゼーレというとエヴァンゲリオン世代には別物を想像してしまうのですが、護衛艦というと日本ではもう少し大きいものを想像しまして、もうなにがなんだか。

 イラン海軍は1月13日、ミサイル護衛艦ゼーレを竣工させました。ゼーレはドイツが1977年にイランへ輸出したカマン級ミサイル艇を独自に模倣したシーナ級ミサイル艇の5番艦でイラン海軍はカマン級の取得を求めていたものの、1979年イラン革命により不可能となり、運用を維持していましたが年々難しくなり、形状を模倣し代替しているものです。

 ゼーレは満載排水量234t、中国製C-802対艦ミサイルかこれを模倣したイラン製ヌール対艦ミサイルとイタリアOTOメララ社製76mmスーパーラピット砲を不法コピーした艦砲を搭載しているもので、シーナ級ミサイル艇は2003年より建造開始、最終的に10隻建造を計画しています。イラン海軍ではより大型の水上戦闘艦建造も計画しているとされます。
■ウダロイ級を近代化改修
 ウダロイ級、舞鶴で何度か見る機会がありまして強そうな艦だなあと設計思想と機能美に驚かされたものです。

 ロシア海軍は旧式化したウダロイ級駆逐艦の近代化改修を本格化させました。冷戦時代にクレスタ級巡洋艦やカーラ級巡洋艦を置き換えるプロジェクト1155M大型対潜艦として称されるウダロイ級駆逐艦は満載排水量8500t、1980年からソ連崩壊の1991年にかけて12隻が量産され、新生ロシア海軍でも貴重な現用艦艇として8隻が維持されていました。

 マーシャルシャポニコフが改修の第一号となり公試中です。ウダロイ級は艦橋基部の左右両舷に搭載された射程45kmの巨大なSS-N-14/RPK-5対潜ミサイルが外見上の特色で、MGK-335対潜ソナーと併せる事で50km圏内の強力な対潜攻撃能力を有していましたが、近代化改修に際しては射程2500kmのカリブル巡航ミサイル発射筒に換装されています。

 ウダロイ級駆逐艦7番艦のマーシャルシャポニコフは2016年より改修へ入渠、ミサイルの換装に加えて背負い式の100mm艦砲を艦砲一門に縮小、また対艦ミサイルや対空ミサイルも換装しています。これにより区分も大型対潜艦からフリゲイトに変更されています。ロシア海軍ではこの近代化改修と共に10年程度の艦齢延長を期待しているようです。
■インド,テジャス艦載機構想
 お祭りの際の発表ですがテジャス戦闘機についてこれはもう凄い発表がありました。

 インド海軍は共和国記念日軍事パレードにおいてテジャス戦闘機空母艦載機型の模型を行進させました。空母艦載機型とは、トレーラ上にインド海軍の航空母艦を思わせるスキージャンプ台が再現され、その上に全長2mほどのテジャス戦闘機模型が二機、滑走中の様子を再現したものです。けっして2mの無人機ではなく、テジャスの縮尺模型というもの。

 テジャス戦闘機がインドが1980年代に開発に着手、1990年代に完成を見越して延々と技術的問題や設計錯誤などから遅延が続き、完成は無理ではないかと云われたものの2020年末に遂に正式発注が為されたものです。もっとも陸上機の空母艦載機転用としては着陸装置等の大幅な設計変更が必要であり、その実現性については未知数と言わざるを得ません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【防衛情報】オーストラリアSEA1000計画アタック級潜水艦建造中止,そうりゅう型退け採用

2021-04-19 20:09:25 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 オーストラリアがフランスからの500億ドル規模の潜水艦建造計画の中止をは票しました。

 オーストラリア海軍SEA1000計画アタック級潜水艦建造500億ドルの建造計画が中止となりました。これは現在オーストラリア海軍が運用する1990年代のコリンズ級潜水艦の後継として12隻を導入する事になっていました、フランスのナーバル社製通常動力潜水艦で、フランス海軍が導入する最新バラクーダ級攻撃型原潜を通常動力潜水艦とした潜水艦です。

 SEA1000計画はオーストラリア海軍が当初、海上自衛隊の潜水艦そうりゅう型を導入計画としてアボット政権時代に入り開始されました、これは前のラッド政権の親中政策が豪州安全保障基盤へ悪影響を受けた反省からでしたが、アボット政権から同じ自由党のターンブル政権に代わると、国内産業重視機運が高まり、日本の技術移転抑制姿勢が影響します。

 アタック級潜水艦は、そうりゅう型と異なり豪州国内での合弁企業による建造が認められ、ここが評価された形ですが、実物はペーパープランのみ、当初250億ドルの計画は12隻500億ドルに拡大、巨費は現在の自由党モリソン政権に代わりますと逆に批判されると共に更に800億ドルにまで拡大する懸念が指摘されており、遂に一旦白紙となった構図です。

 コリンズ級潜水艦、水中排水量3350tの通常動力潜水艦でスノーケル航行時の航続距離は9000浬という長大な航続距離を有しており広大なオーストラリア大陸周辺海域の防衛を任務としています、乗員は45名で恐らくは2交代制、6隻が建造されており一番艦コリンズは1996年就役、6番艦ランキンは2003年に竣工、現在も全艦が運用中の潜水艦です。

 自衛隊の潜水艦そうりゅう型に決定していたならば、もう2021年には竣工が始っていたように思うのですが、また一隻当たり戦闘システムをオーストラリア仕様とした場合でも10億ドル前後で実現したでしょう。12隻で500億ドルとか800億ドル、という事にはならなかったはずです。勿論これは建造も重整備も神戸の、日本の施設で行った場合、ですが。

 オーストラリア海軍、アタック級導入断念の代替案にスウェーデン製潜水艦継続調達の可能性が急浮上しているようです。これはオーストラリアンファイナンシャルレビューの発言を3月1日付インディペンデントオーストラリア紙が報じたものですが、現行のコリンズ級潜水艦は1990年代の潜水艦であり、2020年代には後継艦を建造せねばなりません。

 コリンズ級潜水艦はスウェーデンより技術協力を受け建造された潜水艦で、オーストラリア海軍では導入当初、深刻な騒音問題に悩まされていました。この為、ドイツ製214型潜水艦、日本製そうりゅう型潜水艦、スウェーデンコックムス社製潜水艦が後継艦に提案された際に、スウェーデン案は採用されにくいものと考えられていた訳ですが一転しました。

 そうりゅう型潜水艦輸出、ここに一旦決まりかけたものの、システムが2030年代に建造するには古くなり、また豪州国内での建造に日本が難色を示した事でフランス製潜水艦が採用された形ですが、コストが制御不能となり中止となりました。コックムス社が再浮上した背景、最早再度一から選定する時間が無く、既存の提携関係を活かす為かもしれません。

 スウェーデン製潜水艦は性能としては欧州では高性能潜水艦という評価がありますが、これを元としたオーストラリア海軍コリンズ級潜水艦については、竣工当初こそ世界最大級の通常動力潜水艦と云う事で話題とはなりましたが、騒音問題の発生、そして稼働率などの面で本型のオーストラリア海軍における評価は芳しいとは言い難いものがありました。

 コリンズ級はオーストラリア国内でのノックダウン生産が行われており、組立の問題もあったのかもしれません。組立くらい、と思われるかもしれませんが日本も1960年代に国産うずしお型建造当時、僅かなシャフト部分の歪から“ガタピシ音”という固有の騒音問題を発生させてしまい、この解決までに十年以上を必要とした事例があり、難しさが分る。

 ヴェステルイェトランド級潜水艦、コリンズ級はこれを改良したものなのですが、オーストラリア海軍の運用とヴェステルイェトランド級潜水艦が合わなかった可能性は、あります。具体的にはスウェーデン潜水艦は浅いバルト海での運用を想定しています、潜航性能はあっても運用水深が浅海域を重点的に考えている可能性はあり、合わなかった可能性も。

 アタック級潜水艦は、しかし設計の時点で無理なものがありました、フランス海軍が建造するバラクーダ級攻撃型原潜を通常動力潜水艦とするものでした。オーストラリアはラロトンガ条約に批准しており、オセアニア非核地域を形成している事から原潜を保有する事は出来ません、しかしオーストラリア国土は広大である為に大型潜水艦が求められます。

 バラクーダ級攻撃型原潜を通常動力化する、文字にするのは簡単ですが、原潜はディーゼル発電機のような吸排気系統を必要としない設計ですので、全く異なる通気系統を増設せねばなりません、そしてバラクーダ級攻撃型原潜はポンプジェット推進方式を採用していますが、静粛性は高いもののエネルギー効率が低く、これも航続距離を低下させてしまう。

 実際のところ、そうりゅう型を導入していれば、と考えるところなのですが、なにしろ途中から配備計画が2010年代を2030年代に延伸され、そうりゅう型は2030年代には陳腐化するという、唐突な評価が出されてしまいます。実際その頃には自衛隊も潜水艦たいげい型、その次あたりの潜水艦の時代となっているでしょう。ある意味不満もあるのですが。

 オーストラリア海軍は、しかしアタック級潜水艦こそ当初の250億ドルの予算が800億ドルまで高騰しつつある状況で急遽中止とした構図ですが、コリンズ級潜水艦後継計画そのものは中止していません。更にホバート級イージス艦やキャンベラ級強襲揚陸艦、空軍のF-35A戦闘機導入等防衛力強化を進めており、何れは最適な潜水艦も導入するのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【日曜特集】中部方面隊創隊五〇周年記念祭【9】訓練展示模擬戦状況開始(2010-10-17)

2021-04-18 20:20:30 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■五〇周年行事の訓練展示
 観閲行進に続いて訓練展示が始ります。自衛隊行事の転換点、そして訓練展示撮影適地と観閲行進撮影適地は距離が在り動く必要があるのですね。

 国旗退場。中部方面隊創設50周年記念行事は全ての式典と観閲行進及び祝賀飛行が終了し国旗は退場しました、起立で迎えた国旗を起立して見送る。ただ、これで全ての行事が終了したのかと問われるとそうではなく、いよいよ訓練展示が開始される。次の撮影位置へ。

 予備自衛官の隊列、ベテラン揃いだけに気合十分だ。個人的に思うのは折角やる気を以て退官後も任官してくれるのだから9mm機関拳銃や海上自衛隊が採用のMP-5,ベネリM-3等軽量だが警備任務に威力を発揮する装備と機動隊の防爆警備車等を付与してはと思う。

 予備自衛官の任務、駐屯地警備隊や弾薬輸送中隊等ですが、現代の駐屯地は策源地であり休養の戦力回復拠点という意味もありますので、例えば106mm無反動砲とか旧式だが故障しにくいことで定評ある保管装備のM-1919A6機関銃等を潤沢に配備しては、ともおもう。

 撮影位置を陣地変換する途中に居ました明らかに何かありそうな方々、サバイバルゲームなどで仮設敵、という装備で参考となる様でしたらば是非どうぞ。もちろん手にしている89式小銃はエアガンなどでは無く実銃であり、これから始まる訓練展示模擬戦の仮設敵だ。

 仮設敵の攻撃、しかし観閲行進の撮影位置から訓練展示の撮影位置に陣地変換しました際に思ったのが、凄く混雑している、満員御礼、ということ。人垣の隙間から望遠レンズのズームで撮影します、こういう場合には撮影のコツを掴んでいると、なんとかなるもの。

 訓練展示状況開始。仮設敵の96式装輪装甲車、…、じゃないBTR-96装輪装甲車がM-2機銃というかデグチャレフ機銃から猛烈に攻撃を加えてくる。車体には敵国の旗のような緑一色の旗を掲げている、所属も消しており、いったいどこのくにのBTR-96なのだろう。

 発砲焔といいますかマズルフラッシュ、12.7mm重機関銃の威力は物凄く、なにしろ親指なみの弾丸を次々と射撃し、人体に命中すると体が千切れる程の威力という。原型は1917年で銃器設計天才ジョンブローニング博士の設計を上回る機関銃は百年後も未だ出てこない。

 120mmRT重迫撃砲の陣地進入とともに軽装甲機動車が次々と戦闘加入する、多少というかかなりブレているが、撮影位置を切り替えたものの想像以上の大混雑により移動を開始した事を少し後悔しましたが、しかし、元の位置で仮設敵後姿しか撮影できないよりまし。

 仮設敵のBTR-96装甲車が後退してゆく。BTR-96もそのようですが、陸上自衛隊の96式装輪装甲車の重機関銃は車内からリモコン操作が可能です。もっともコングルベルク社製RWS遠隔操作銃搭のような立派なものではなく、潜望照準器と引き金が車内にあるのみ。

 軽装甲機動車12.7mm重機関銃搭載型が、12.7mm機銃には12.7mm機銃で対抗する。2010年には第一空挺団降下訓練始めにも軽装甲機動車に12.7mm機銃を、銃架をそのまま車載する方式を採っていましたが、こちらは車体に装着し運用している。若干射界には制約が。

 流鏑馬のように軽装甲機動車が駆ける。第36普通科連隊、その車体銃座部には物々しい防盾が射手を護り上面にはワイヤーカッターも装着されている、PKO仕様の軽装甲機動車だ。車高が高く野戦では発見されやすい為、昨今自衛隊PKO参加も少なく倉庫に積まれる。

 軽装甲機動車に取り付けられているのは5.56mm分隊機銃MINIMI,これはベルギーFN社が開発した小銃弾を用いる小型機銃ですが、弾薬を小銃班で共通化できる一方、やはり5.56mm弾には射程や威力の面で限界があり、同じFN社製の7.62mm機銃も採用すべき。

 74式戦車の登場とともに伊丹駐屯地式典会場が意外と広いのがお分かり頂けるでしょうか、いや、脚立がありませんと、この角度が精いっぱいなのですよ。2020年代ならばコングルベルク社製RWSのようなミラーレス一眼を遠隔操作する器材もあるようですが、なかなか。

 戦車は対戦車ミサイルやロケット弾で一発と思う方、笑わせてはいけない、電線や看板や木々の梢に叢、ミサイルの安定翼は意外な程に引っかかり落ちやすく、ロケット弾の近接信管も戦車に当る前に電線かかれば戦車と区別せず爆発する、戦車は50km/h以上でる。

 現用戦車は70km/hを簡単に叩き出し、対戦車ミサイルは最低射程距離が、対戦車ロケットは安全距離があります、戦車は安全な車内から周辺を監視し、多目的榴弾で歩兵列線を一蹴し同軸の連装機銃は驚くほど遠距離を正確に狙い、背後の敵は重機関銃が迎え撃つのだ。

 74式戦車が軽装甲機動車の支援へ展開、軽装甲機動車からも下車戦闘の準備が進む、展開が早い早い。こう云うのも、伊丹駐屯地界隈は騒音からの苦情が多く、数年に一度しか模擬戦を行えない状況となっていまして、その為、この訓練展示も数分で終わってしまう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【京都発幕間旅情】山陰本線特急やくも381系特急電車と山陽本線レッドウイング227系電車

2021-04-18 18:20:42 | コラム
■国鉄時代からJR時代への転換
 今ある列車が醸す昭和時代的な旅情はある日を境に数年で転換してしまう事が多い、今を大切にね、と思う。

 やくも。特急電車の名前は映画“八岐大蛇の逆襲”の冒頭にトンネルを抜けて米子駅に到着する描写に描かれていまして、同作で活躍した庵野秀明氏や樋口真嗣氏が映画シン・ゴジラ、シン・エヴァンゲリオン、シン・ウルトラマンでコンビを組んでいるのですね。

 八岐大蛇の逆襲に併せて、という訳ではありませんが、初めて米子市を探訪した際にあの映画と、駅舎もホテルもデパートもそのままであり、塗装こそ違うものの特急車両も同じである事に妙に感動したものでした、米子駅舎は2020年秋に建て替えで閉鎖されましたが。

 381系特急電車により運行される特急やくも、岡山駅と出雲市の220kmを結んでいます。岡山駅と倉敷駅に新見駅経て伯耆大山駅から、米子駅として松江駅と玉造温泉駅を経て出雲市駅に至ります。その始まりは1958年から京都駅と大社駅を結んだ急行だいせん、です。

 1972年に山陽新幹線岡山開業を受け山陰地方と山陽新幹線岡山駅を結ぶべく運行開始されましたのが、この特急やくも、です。381系特急電車は振り子式制御車輛、この381系も近い将来287系や289系に置き換わるでしょうから、ある意味貴重な情景といえますね。

 JR西日本227系電車。広島駅の主力車両です。いや広島駅と云えば在来線は113系や105系の国鉄時代ではないのか、こう思われるかもしれませんが、ここ数年で一挙にこの227系に置きかわっているのですね、気動車だけが国鉄時代の面影を伝える広島駅というもの。

 レッドウイング号、JR西日本227系電車はこうした愛称が冠せられていまして、この新快速で有名な223系を思わせる面持ですが、山陽本線の広島周辺の運用を想定し、最高速度は110km/h、将来的に120km/hとする、そんなゆったりとした車両運用体制ではあります。

 113系や105系の国鉄時代は、しかしこの227系が2014年に導入されますと、待てど暮らせど、いや駅で暮らしていませんがホテルで山陽本線を望見出来る広島駅近くの、という意味でですよ、国鉄時代の車両というものはやってきません。今は国鉄は岡山周辺に多い。

 国鉄時代からJR時代へは思ったよりも転換が始まるとあっという間なのだ、そんな事実を広島の転換は体現しているようですね。もっとも新型車両は転換式クロスシートがなかなか乗り心地が良く、乗っている身として歓迎なのですが、撮っている身では寂しくも思う。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【土曜特集】横須賀いせ-しらぬい寄港の春,艦艇日記【5】掃海母艦と砕氷艦(2019-04-14)

2021-04-17 20:01:33 | 日記
■自衛艦隊司令部の船越地区へ
 横須賀基地を一周する軍港めぐり遊覧船は船越地区へとゆっくりと進んでゆきます。

 自衛艦隊司令部庁舎とともに掃海母艦うらが。掃海隊群は改編により輸送艦部隊である第1輸送隊を隷下においています、これにより水陸両用作戦に必要となる司令部機能を併せて掃海隊群が担う事となり、膨大な情報と陸上自衛隊からの増加幕僚を収容可能となる。

 うらが型掃海母艦は1990年代の竣工であり老朽化が始まっています、なお将来的に掃海隊群は多目的護衛艦と哨戒艦を隷下に置く増強改編が計画され、旗艦能力は重要となりますが、その先には掃海ヘリコプター運用能力を持つ、ひゅうが型が後継となるのでは、と。

 ゆうぎり。あさぎり型護衛艦の三番艦です、2900t型護衛艦として建造された前型はつゆき型は対空対潜対水上装備を有しオールガスタービン推進で哨戒ヘリコプターを搭載するシステム艦として設計されていましたが、満載排水量4000tの護衛艦では過大な装備でした。

 あさぎり型は3500tと船体が600t増大して艦内設計に余裕を含ませ満載排水量も5800tと大型化しています、が、マストとファンネルは二本に増えて上部構造物は低くなりミサイル位置も変更、ヘリコプター格納庫は1機から2機搭載用に大型化、艦容は一変している。

 あわじ、ひらど。海上自衛隊最新鋭の掃海艦です。掃海艇と掃海艦の相違点は深海に設置される深深度機雷への掃討能力を有するのが掃海艦です、深深度機雷とは潜水艦を狙うもので重要水道等の潜水艦航路に敷設された場合、非常に大きな脅威となる、これを討つ。

 えのしま。えのしま型掃海艇の一番艇です、海上自衛隊は伝統的に機雷に探知されにくく万一触雷した場合でも安全性を担保する木造船体を採用してきましたが、本型からは船体寿命を延伸すると共に建造技術が継承されるFRP船体を採用しています、これは事情も。

 えのしま型、あわじ型、共にFRP船体です。海上自衛隊の掃海艇は機雷掃海を重視していましたが時代は秘匿性高い高性能機雷を一つ一つ処分する機雷掃討の時代へ、自衛隊もこの潮流に乗った所建造費が倍増し毎年建造さえ出来ず、結果木造船体建造技術が消失する。

 しらせ。横須賀基地で最も新しい潜水艦桟橋に接岸していました、基準排水量12500tで満載排水量22000t、吃水は9.1mあり自衛隊最大の潜水艦そうりゅう型の吃水は8.5mといいますので潜水艦桟橋は、そうりゅう型よりも吃水の深い艦船でも接岸できるということか。

 しらせ、クレーン部分を中心に。二代目の砕氷艦しらせ、は南極大陸などに輸送支援を実施する際にコンテナ貨物輸送を重視し、ここからコンテナを船体側面に装着できる利点があります。CH-101輸送ヘリコプターも運用出来る為に、実は輸送艦としての能力も高い。

 砕氷艦は長らく海上自衛隊最大の艦船、という位置づけでした。補給燃料を満載した補給艦の方が大きいのですが、これが基準排水量13500tましゅう型補給艦で基準排水量は補給艦が最大となり、ひゅうが型護衛艦の竣工により砕氷艦より大きな護衛艦が誕生している。

 しらせ真正面から。艦番号は5003、自衛隊では作戦艦艇を三桁で支援艦艇を四桁艦番号としています。しかし、砕氷艦は良いのですが輸送艦おおすみ型などは4001と四桁であるため、水陸両用作戦の重要性を考えれば後継艦の艦番号は三桁となるように期待したいです。

 はしだて、特務艇です。艦番号は91ですがこちらは四桁番号とするわけにはならないのかな、と。ひゅうが、いせ、いずも、かが、といったヘリコプター搭載護衛艦艦番号を二桁として、180番台の艦番号をイージス艦増強に併せて空けるべきだ、とおもうのですよね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

令和三年度四月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2021.04.17-2021.04.18)

2021-04-16 20:20:46 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 まん延防止等重点措置拡大が続く中ではありますが皆様いかがお過ごしでしょうか、今週末も自衛隊関連行事はCOVID-19感染拡大により実施されません。

 菅総理大臣がバイデン大統領との初の日米首脳会談へ出発しました。バイデン大統領が主要国の首脳と対面で首脳会談に臨むのは菅総理大臣が初めてです、これを記念しましてアメリカへ菅総理が搭乗した政府専用機、そのB-777が配備されています千歳基地航空祭の懐かしい情景と共にCOVID-19最新情報を視てみましょう。航空祭再開までは、とおい。

 政府はまん延防止等重点措置について現在発令されている東京や大阪など6都府県に加え、10の都府県に拡大する方針です。新たにまん延防止等重点措置の対象となるのは、神奈川県、愛知県、埼玉県、千葉県、以上に対して本日までに政府分科会が拡大する事を了承しました、これを受け菅総理は渡米中ですが、政府は夕方開く対策本部で決定する方針です。

 変異ウィルスN501の感染拡大がまん延防止等重点措置拡大の背景に在ります。西村経済再生担当大臣はこの点について、現状の推移をみる限り5月には首都圏と関西圏と中京圏いずれもほぼ変異株に置き換わるという予測が報告されている事から極めて高い警戒感を持って対応しなければならない、こう説明しまん延防止等重点措置拡大へ理解を求めました。

 まん延防止等重点措置は都道府県知事により市町村ごとに指定されます。その指定市町村は、神奈川県は横浜市と川崎市と相模原市、愛知県は名古屋市になる見通しで、埼玉県ではさいたま市と川口市、千葉県では市川市と船橋市に松戸市及び柏市と浦安市、以上では感染拡大が特に顕著である事から自粛要請や施設利用制限等に踏切ることとなるでしょう。

 対象地域について、政府分科会専門家からは、奈良県と福岡県の感染状況を注視する必要がある、と指摘しています。都道府県単位で発令される緊急事態宣言と異なり、まん延防止等重点措置は市町村単位で指定される為に機動的な対処が可能ではありますが、一方で大阪府では大阪市以外にもまん延兆候が顕著で、何れ府内全域に何らかの措置が必要です。

 大阪府、まん延防止等重点措置が大阪市に発令中でしたが、更に周辺都市部へも拡大されています。中でも変異株は若年層への感染が問題視されており、実際問題として、府内に180ある府立学校の内17校が休校中、府立学校では教職員や児童生徒の感染が確認された場合には保健所の調査が終わるまで感染拡大を防止する為に休校措置が執られています。

 重症者とは意識不明か自発呼吸出来ない状態等の患者を示すもので、非常に苦しいとか高熱で意識がほとんどない場合でも意識不明でなければ重症者に定義されない場合があります。その重症者が、第一波から第三波までは高齢者に集中していましたが40代での重症化が増加しています。これは世界保健機関の定義する若年層が20代を示す為ともいえますが。

 N501変異株はWHO世界保健機関によれば感染率が1.7倍となっています、1.7倍とは分り難い表現ですが従来の感染対策では防げない事から、ドイツフランスなどはN95サージカルマスクかN80医療用マスクの公共交通機関利用時での着用義務化を行った上で外出制限は順次解除しているものの、飲食店はじめ商店等営業の禁止等の措置を取っています。

 N501変異株は、抗体が形成されるまで時間がかかる傾向があり意識不明の期間が長い、感染力が強いと共に重症化が従来の2%から変異株では4.7%と、留意すべき情報があります。ただ、後遺症についてイギリス保健省が150日程度安静にしている事で回復した事例が多く、実質五カ月ですが、絶望する必要はないもようです。まだまだ警戒は必要なのですね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

菅-バイデン日米首脳会談,初の対面会談とイラン核危機-台湾海峡危機-ウクライナ東部危機

2021-04-15 20:00:47 | 国際・政治
■いま世界に迫る"三つの危機"
 東京五輪2020に向け聖火リレーが日本全土を巡る中、世界にはCOVID-19やミャンマー軍政危機等が山積しています、中でも対応を誤れば世界危機に展開する懸案が、ある。

 菅総理大臣は間もなく、政府専用機によりアメリカへ、バイデンアメリカ大統領との初の対面首脳会談へ向かいます。一月のバイデン政権成立以来、バイデン大統領は菅総理大臣はじめ各国の首脳と電話会談に臨んできましたが、対面での首脳会談は菅総理大臣との日米首脳会談が初めてとなります。しかし、大統領就任後初の会談は実務的となるでしょう。

 ホワイトハウスで現地時間16日に行われる初の菅バイデン首脳会談は、自由で開かれたアジア太平洋、その実現と維持に向けた協力の在り方が協議される見通しであり、安全保障は台湾や尖閣の問題がありこれは明らかに覇権主義的な動きにより海洋閉塞化や周辺国領域占拠の行動を深めている中国へ日米間での対処方針への実務的な内容が含まれましょう。

 菅バイデン首脳会談は、いわば1940年にイギリスのチャーチル首相とアメリカのルーズベルト大統領が戦艦プリンスオブウェールズ艦上において開いた太平洋会談に重なる印象です。一方で、バイデン政権は、トランプ政権時代の日本重視路線を更に強化した、イギリスやオーストラリアなどに並ぶ重要な同盟国という位置づけとしましたが、課題は多い。

 バイデン政権、その外交は現在世界危機の入り口にあると言えるのかもしれません。アメリカ外交の歴史的な転換点、具体的には単なる回帰ですが、2021年はロシアのウクライナ東部介入危機、イランの核開発強化、台湾海峡危機、この三点が場合によっては海洋自由原則や基本的人権の尊重という国際公序を転換させかねない喫緊の課題となっています。

 我が国南西にあたる台湾海峡の情勢は、周辺事態法整備に際しては中国への配慮から台湾海峡を周辺事態に含めるか否かの激論が交わされたものですが、あれから四半世紀、平和安全法制下、台湾海峡有事がとなれば明らかに我が国への重要影響事態です。2019年と2020年の習近平主席による武力統一の示唆以降、明らかに緊迫度を増してきたのですね。

 台湾海峡危機はクリントン政権時代の1997年ミサイル危機から連綿と続く、それは同時に国共内戦以来継続する緊張の再燃にほかならないのですが、重大な課題です。そして特に、2020年より台湾海峡の中華民国防空識別圏内へ中国空軍機の侵入頻度が爆発的に増大しており、アメリカ防空識別圏へ飛来するロシア機の実に千倍に迫る規模となっています。

 中国軍機の防空識別圏侵入は一日で25機が飛行することもあり、台湾の金門島へ明日中国の空中機動部隊が降着したとしても不思議ではない危機的状況となっています。そして1997年ミサイル危機に際し、アメリカは空母2隻を展開させ圧倒的海軍力で拡大を阻止しましたが、1997年と2021年では中国軍の空軍力海軍力はそれこそ飛躍的に成長しました。

 台湾海峡、特に金門島のように中国大陸外縁の台湾領は現在の中国空軍戦力であれば海峡西部の絶対航空優勢を中長期的に確保し、そのまま地上部隊を侵攻させることは能力的に十分可能である一方、唯一、単なる侵略であれば国際社会の中国経済制裁口実とされる懸念などから回避している段階であり、台湾が田和挑発に乗るのを待っている段階といえる。

 太平洋正面の海軍力については、依然としてアメリカ海軍の圧倒的な優位は普遍ですが、局地的に優勢を喪失するだけの戦力差には縮まっています、また中国軍のミサイル爆撃機や中距離弾道弾はアメリカの戦略拠点である在沖米軍基地や日本首都圏在日米軍基地、要衝グアムを射程に収めており、その数と質の向上も年々強化され、歯止めがかかりません。

 イラン核開発は、もはや引き返せない危機に展開しています。こういいますのもオバマ政権時代に締結しトランプ政権時代にアメリカが離脱したイラン核合意は、前提としてイランに核兵器開発の意図は無いという大前提が存在しており、その上でその証左に合意を締結した背景がありました、要するに核は平和利用しかしない、と言う前提にて成立します。

 ウラン濃縮を60%まで引き上げる、この発言がロウハニ政権から示され、そもそも原子力発電に代表される核の平和利用では10%の濃縮しか必要としません、これをイランはアメリカがトランプ政権時代に20%まで引き上げており、核兵器開発を最終的に目指す以外説明できないウラン濃縮に着手しており、イラン核合意の大本の前提が崩れてしまいました。

 イランは1979年イラン革命においてイスラエル国家の消滅を国是とし、いまも堅持していることからイラン核開発は核合意も含めてイスラエルには反対の姿勢を示していますが、ウラン濃縮60%に進めるイランの施策、核兵器開発の決意という状況を突きつけられた現時点で、もとのイラン核合意にアメリカが無条件にて戻ることを非常に難しくしています。

 遠心分離機の国外搬出や核関連技術者の中でも核兵器技術者の国外出国、アメリカはイランがウラン濃縮60%に着手した時点で、これを認める選択肢も現状維持のまま核合意に戻り核兵器開発を十数年単位で遅延させる妥協案は採り難くなりました、すると最低限、遠心分離機の国外搬出や核関連技術者の中でも核兵器技術者の国外出国が条件となりうる。

 イラン核開発が進めば、イスラエルの諜報活動による妨害工作、それでも不十分となればイスラエルがイラクに対し実施した様なイラン核関連施設への限定攻撃、という次の緊張に展開しかねません。中東和平の枠組みさえも根本から破綻させかねない事態であり、バイデン政権として、静観による核開発黙認か軍事介入、様々な選択肢に悩まされるところ。

 ウクライナ東部情勢についても緊迫の度合いを増しています。ウクライナ政府はウクライナ東部国境付近にロシア軍8万名が集結しているとして警戒を強めています。バイデン政権は4月9日、数週間以内に黒海へ海軍艦艇の派遣を示唆し、少なくともウクライナ東部紛争停戦合意破綻を海軍力により回避しようという姿勢を示しています。ここは謎が多い。

 ロシア軍は前回のクリミア併合やドンバス自治州騒擾への関与等を経て、日欧米からの経済制裁を受け、その経済活動を大きく後退させた状況にあります、ここで停戦状態を破り軍事行動に出る事が在れば、更なる制裁の危惧があります。ロシアは例えばワクチン外交によりCOVID-19感染対策を盾に軍事行動を強行する事も出来そうですが、実際は難しい。

 ウクライナ東部軍事介入、ワクチン外交により欧州等の黙認を得ようとしても、ロシア製COVID-19ワクチンは不活性化ワクチンであり、米欧の開発したmRNAワクチンと異なり変異ウィルスへ現段階で効果がありません、従って逆にファイザーワクチンやアストラゼネカワクチンを必要とする立場である事から、ワクチン外交の立場は真逆なのですよね。

 ウクライナ東部の緊張、問題はしかしアメリカにとってより複雑です。ウクライナのゼレンスキー大統領は4月13日、東部戦線の最前線防衛陣地視察の様子をCNNに公開、恒常化しているロシアの脅威を合せ、ウクライナのNATO加盟への支持を国際社会に訴えました。これはウクライナには安心要素ですが、NATO全体には不確定要素となりえるもの。

 北大西洋条約第五条には集団的自衛権行使が明示され、加盟国一国への武力攻撃をNATO全体への攻撃を視なす条文があります、するとウクライナでの戦端、勿論NATO加盟となればNATO理事会がウクライナ軍行動へ関与する事にもなるのですが、例えば2008年の北オセチア紛争のような攻められた側が挑発を行った場合でも、欧州大戦、となりえます。

 ウクライナ東部問題の悩ましい点は、ロシアの兵力集中が一時的に引いた場合でも、クリミア併合とロシアと国境を接するウクライナ東部の緊張は、常に再燃の懸念があり、その限りにおいて、例えばクリミア返還でも行われぬ限り、ウクライナはNATO加盟を要請し続け、またロシア軍の僅かな動きが、その蓋然性をアメリカに突き付けてしまう現実です。

 菅バイデン首脳会談。台湾海峡問題は当然議題に上るでしょうが、イラン核開発問題は対処を間違えれば広島長崎以来の核兵器実戦使用の緊張を高めるものとなりますし、ウクライナ東部の緊張も対処を誤ればロシア軍と米軍を含むNATO軍が衝突する欧州大戦への導火線となりかねません。会談はこうした意味で日米関係今後を示す重要な会談となります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【京都発幕間旅情】犬山城(愛知県犬山市)桜の花々が春色染める木曽川河畔は白帝城の天守閣

2021-04-14 20:15:17 | 旅行記
■さくら色の犬山城を巡る旅
 春を迎えますと一斉に桜の花々が咲き始める情景は日本の四季というものを強く印象付ける風物詩です。

 犬山城の天守閣を満開の桜がつつむ。此処は愛知県犬山市、木曽川の清冽な流れが木曽山脈を出て広い濃尾平野に羽ばたく分岐点でもあります、そしてその分基点は同時に戦国時代、いやその前から尾張と美濃の国境の要衝でもありました。ここに勇壮天守閣は輝く。

 複合式望楼型三層四階地下二階の天守閣は1620年改築のもの。犬山城、ここは岐阜基地撮影の際に間近までは歩み進めているものの、なにしろ2021年3月16日のファントム完全退役が間近である頃には、永劫の時を刻む天守閣よりはあとわずかの戦闘機が優先です。

 森繁久彌の社長シリーズを久々に観る機会に恵まれまして、この際に名鉄犬山観光ホテルが描かれ、しかも岐阜基地撮影の際にここのランチは庭園一望で素晴らしいらしい、と情報を頂きました。ファントム引退、そこで勇躍送る会を企画しましたのはこの少し前です。

 名鉄犬山観光ホテル、思い立ったら吉日と良く調べもせず進出しますと、なんと改築中、しかしその名鉄犬山観光ホテルがこの犬山城を見上げる木曽川河畔にありまして、美しい情景を撮影して後、鮨か鰻にしよう、と転進し、その後に犬山城散策へと転じました訳で。

 白帝城の天守閣、ファントムが除籍された2021年の桜前線は例年よりも急ぎ旅で、桜の木々と共に構図に入れてみました。元々古来日本の花見とは貴族が冬の終りの暖かさに観梅を愉しむ風流であり、観桜の文化は、武家の時代に貴族趣味に距離を置いた故のはじまり。

 応仁の乱その最中、さてこの犬山城の造営は室町時代に遡るものでして、岩倉織田氏当主の弟織田広近が砦を築いた事に始ります。応仁の乱はここまで及んでいました、遠江を攻めた西軍斯波義廉が凱旋の帰京に際し東軍の斯波義敏、清洲織田氏と対立した背景がある。

 草創期の城郭は文字通り砦に他ならなかったのですが、美濃守護代の斎藤妙純が1497年に近江で討ち死にしますと、連座してその盟友岩倉織田氏の勢力は衰退する事となり、緊張状態の高まり、この1497年は犬山城が砦から城郭へ大きく拡張される転機となりました。

 木ノ下城、当時織田氏の居城は清洲城に頭首織田信秀が、そしてその実弟織田信康の居城木ノ下城にありましたが、緊張の高まりを受け木ノ下城を破却し新たに犬山の当地に城郭を造営する事となります。今日の天守閣は二層部分までが、この際に造営されたようです。

 尾張と美濃の緊張状態は高まり、1544年加納口の戦いにて織田信康が斎藤道三との戦い信康は討ち死にしました、実子織田信清は城主を継ぐと共に城郭を広げる事となりまして、今の犬山城の縄張りと城郭構造はこの頃に完成します、この際に城郭を白帝城と呼ぶ様に。

 白帝城、これは木曽川河畔の丘上に鎮座する城郭の佇まいから、かの李白が歌に詠んだ長江流域は高台の城郭、白帝城を詠った故事に合せたもので、城下町は観光地化されていますが、その道々から見上げる城郭の気風は印象的で、不利い街並みに情感を醸しています。

 成瀬氏の犬山城、江戸時代には尾張藩付家老平岩親吉が城主となり、ほどなくして成瀬正成が城主として入城します。こうして成瀬氏9代が明治維新まで城主として城郭を護り、明治維新以降は成瀬さんの犬山城として親しまれてまいりました、国宝天守閣の一つです。

 天守閣に航空機が重なる、これは偶然の産物ではなく日常風景の一つです。犬山城は岐阜基地に程近く、いや実際には10kmほど隔ていますが、岐阜基地を発着する航空機と天守閣が重なる風景とも出会います。天守閣と桜の重なりを探し散策しますと春を感じました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【防衛情報】F-2後継機と米F-16後継准第五世代機構想,T-7A高等練習機とAT-6E軽攻撃機

2021-04-13 20:15:45 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 F-2後継機開発を考える上で興味深いアメリカ空軍の話題とT-7Aレッドホーク練習機やAT-6Eウルヴァリン軽攻撃機の話題などを。

 航空自衛隊はF-2戦闘機後継機の開発を本格化させます。これはF-35戦闘機の第五世代戦闘機を上回る第六世代戦闘機の開発開始と理解されていますが、実際のところ同じように第六世代戦闘機の開発を進めるイギリスでは、その定義を安価で取得性の高い点、整備の自動化による運用費用低減として挙げています。そこで今回はアメリカを視てみましょう。

 アメリカ空軍のチャールズブラウン参謀総長はF-16戦闘機の後継機となる准第五世代戦闘機の必要性について発言、新型戦闘機はF-16戦闘機の能力全般を保持しつつ超音速巡航能力やデジタル情報共有能力等について充分な第五世代戦闘機に準じた性能を有する、第五世代戦闘機には及ばないが第4.5世代戦闘機を凌駕する機体の必要性を提唱しました。

 F-16戦闘機後継機についてはF-35戦闘機が量産されていますが、2500機以上を配備されているF-16を1:1で置き換える水準ではなく、F-35はどちらかといえばF-15CとF-16C双方の一部を置換えている航空機です。そしてF-15については戦闘爆撃機型のF-15FXの生産が開始されており、空軍がF-16再生産の可能性も検討している最中の発言というもの。

 T-7Aレッドホーク練習機、アメリカ空軍ではスウェーデン製JAS-39戦闘機の技術的延長としてT-7A練習機を開発しており、ブラウン空軍参謀総長はT-7A練習機の技術に依拠した、若しくはT-7Aが養成する第五世代戦闘機要員の航空デジタルエンジニアリング技術を応用した航空機を意図しており、参謀総長発言は間接的にF-16再生産を否定したものです。

 上記の通り、アメリカ空軍ではF-16戦闘機後継の動きが模索されている訳ですが、同時に元々F-16後継機として開発されたF-35戦闘機は高性能化と共に取得費用が増大しており、F-16を1:1で置き換えるには十分ではなく、しかしF-16最新型の、F-16Vは性能面でF-35に匹敵こそしないが準じる、既存の性能水準では対応出来ない事を率直に認めた構図です。

 自衛隊のF-2戦闘機後継については、ある意味、F-2は開発当時F-16block42と比較されたものですが、F-2戦闘機の水準では将来航空戦闘においては性能が充分でない点、生き残れない事を示したといえるのかもしれません。そしてアメリカもF-35に続く戦闘機は更なる高度な戦闘機を求めるのではなく、現実に取得否用な費用を求めている点は実に興味深い。

 JAS-39派生のT-7Aレッドホーク練習機、面白い点はF-16後継機の話題に、勿論JAS-39派生機とは明示しないものの、敢えてT-7Aという名称を示した点に興味深い所があります。勿論T-7Aは第五世代機要員の養成に特化した機体であり、要するにこの機体で練成した要員が操縦できるという意味に留まるのかもしれませんが、派生型の可能性もあるのか、と。

 T-7Aレッドホーク高等練習機は新しい話題がありますが、ここで考えたいのは、JAS-39設計を原型とした文字通り高等練習機であるT-7A、同時に日本ではT-4練習機の老朽化が本格化しており、そろそろその後継機を、国産かライセンス生産かを含め考えなければならない時期となっている点です。さて、そのT-7A練習機の新しい話題は以下の通り。

 アメリカ空軍が進めるT-7Aレッドホーク高等練習機についてボーイング社はフルレート生産へ移行しました。この計画は2018年9月に発表された量産計画に基づくもので、ボーイング社は練習機本体351機と地上練習シミュレータ装置46基を92億ドルで生産、またスウェーデンのサーブ社はボーイングへ胴体部分を製造し、供給することとなりました。

 T-7Aレッドホーク高等練習機はボーイングサーブT-Xとして、サーブ社が開発したJAS-39グリペン戦闘機の技術を元に第五世代戦闘機要員養成に特化したカリキュラムを具現化する練習機として開発されています。全くの新型機ですがJAS-39の確たる技術に依拠した事から、計画は36カ月でモックアップから初号機初飛行へと順調に進んだ計画でもあります。

 以上がT-7Aレッドホーク高等練習機に関する新しい話題です。一方、アメリカ空軍ではF-16戦闘機の一部がMQ-9リーパー無人攻撃機などに飛行隊機種転換している事例があるのですが、そこで問題化しているのが、戦闘機要員の不足です。これはF-35を操縦する為には、特にF-35は複座練習型が無い為に一定程度の別の戦闘機での経験が求められるが。

 MQ-9リーパー無人攻撃機などに機種転換されてしまいますと、戦闘機で操縦経験を積む事は出来ません、戦闘機操縦要員には独特の感覚が求められるものの、これは経験意外に数値化する事が難しい、そこでアメリカ空軍では練習機をCOIN機として運用する、ちょっと先進国においては珍しい選択肢により戦闘機要員に高い経験を積ませようとしています。

 アメリカ空軍は2月にAT-6Eウルヴァリン軽攻撃機初号機及び二号機の納入を受けたと発表しました。これはテキストロン社が製造しているT-6中等練習機の派生型である軽攻撃機で、2機のAT-6Eはオハイオ州のライトパターソン空軍基地へ配備されたとのこと。T-6練習機はスイスのピラタスPC-9をアメリカ空軍が採用したもので強力なエンジンを積む。

 ピラタスPC-9はターボプロップ練習機であり、一見初等練習機のような印象を与える機種ですが1600hpの強力なエンジンを搭載しており、ジェット練習機が本来担当していた速度領域の高等練習を可能としています。PC-9を採用した諸国では戦闘機要員までを養成する事例もありますが、アメリカ空軍ではT-38,T-7A練習機を続く高等練習機としています。

 AT-6Eウルヴァリン軽攻撃機はCOIN機、対叛乱ゲリラ航空機に位置付けられるもので武装としては12.7mm機銃や70mmロケット弾と複合光学式アイボールセンサーを搭載し運用しています。この種の航空機は中国軍やロシア軍は勿論、シリア軍やイラン軍水準を相手とした場合でも生き残る事は不可能に近いですが、軽装備のゲリラには威力を発揮する。

 以上の新しい試みです。ピラタスPC-9派生の攻撃機、アメリカ以外の先進国ではNATOも自衛隊もオーストラリア軍も、この種の任務は戦闘ヘリコプターが実施します、何故ならばCOIN機は戦闘ヘリコプターのように競合地域の野戦飛行場ではなく、不整地滑走路なりの滑走路を必要とする為で、即時の航空支援や航空阻止任務には全く不適だからです。

 しかし、アメリカ空軍もAT-6Eウルヴァリン軽攻撃機を主力として用いるのではなく、T-7Aに繋がる中等練習機に、何らかの用途を見い出す事で戦闘機要員を確保しようとしている、興味深い選択肢と云える。いずれにせよ、あのアメリカ空軍でさえも第五世代戦闘機に費用高騰には苦慮している点は、日本の次期戦闘機開発に何か方向性を示すように思います。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする