■特報:世界の防衛,最新論点
最近のミサイル開発状況はまさに乱れ飛ぶ核ミサイルの脅威が2020年代も不変である事を示しているようです、ミサイル防衛重要性の理解の為にも最新の情報を纏めてみました。
ロシア国防省はRS-28/SS-X-29-30サーマット大陸間弾道弾の試験を本格化させている、今秋には発射試験を期しているという。サーマットは2018年にウラジミールプーチン大統領により開発開始が発表されたもので、クラスノヤルスク機械工場において製造が進められている。計画では2022年に戦略ミサイル部隊への部隊配備を開始したい方針という。
RS-28/SS-X-29-30サーマット大陸間弾道弾は常温備蓄可能な液体燃料方式を採用し、10tまでのペイロードの搭載能力を保持、10発から15発の多核弾頭方式をとる。弾頭には従来型の水爆弾頭の搭載も可能だが、このほかにも、すでに開発が進められているアバンガルド極超音速滑空体を搭載し、現在運用されているSS-18ミサイルの後継を期している。
RS-28/SS-X-29-30サーマット大陸間弾道弾の重視している点は、アメリカのミサイル防衛システムを突破できる能力であり、ブースター点火時間を最小限として赤外線放出による探知時間を軽減、またミサイル防衛システムの盲点である南極上空を飛翔する軌道を採用し、モーザルアクティブ防護システムを搭載し迎撃ミサイルを棒が薄る事も可能とされる。
■米トライデント核ミサイル延命
ロシアが大陸間弾道弾を開発する一方でアメリカは既存ミサイルの延命改修を行います。
アメリカ海軍はトライデントⅡ潜水艦発射弾道弾延命型のトライデントⅡD5LE発射実験を成功させました。この試験は9月17日、フロリダ州ケープカナメラル沖合にて実施され、オハイオ級戦略ミサイル原潜ワイオミングより発射、トライデントⅡD5LE実験用弾道ミサイルに核弾頭は搭載されていませんが、想定海域へ正確に命中させたとのこと。
トライデントⅡD5LEはオハイオ級戦略ミサイル原潜及びイギリス海軍のヴァンガード級戦略ミサイル原潜に搭載されたトライデントⅡ改良型で、製造より長期間を経て老朽化した部分を更新したものとなっています。アメリカ海軍の潜水艦発射弾道弾はアメリカ核戦力の七割を占めており、戦略空軍ミニットマン大陸間弾道弾と核抑止双璧を為しています。
オハイオ級戦略ミサイル原潜は冷戦時代後期におけるアメリカ海軍第二核報復能力の主力であり、大陸間弾道弾が敵の核攻撃により機能喪失した際の第二撃を担っていましたが、緊張緩和による一部艦をトマホーク154発搭載の巡航ミサイル原潜への転換が実施、残る艦も老朽化が進み、後継としてコロンビア級戦略ミサイル原潜の建造が開始されています。
■北朝鮮,列車型ミサイル発射器
北朝鮮は9月に奇妙な位置からミサイルを発射し山間部からのミサイル運用能力を世界に示しました。
北朝鮮軍は9月15日、日本海に向け列車型発射装置より二発の弾道ミサイルを発射し我が国EEZ内に落下したた。弾道ミサイルは長時間飛翔し、不規則な軌道を飛翔した為当初は我が国EEZ排他的経済水域外に落下したと見られていただ、防衛省が弾道情報を制裁した結果、我が国EEZ内に落下した事が判明している、我が国周辺の船舶に被害情報はない。
ミサイルは上昇限度5万m程度と、所謂ロフテッド軌道のような極端な高高度を飛行した訳ではないが、750km以上を飛翔しており、ミサイル防衛を回避する不規則な機動性を持つミサイルである可能性もある。そして北朝鮮は翌16日、ミサイル実験は鉄道からの列車貨車を利用した移動式発射装置より発射した事を発表、その際の映像も公開している。
鉄道貨車型発射装置は旧ソ連が冷戦時代にICBM大陸間弾道弾の運用に活用したが、ミサイル位置を人工衛星等から捕捉されにくい利点がある。北朝鮮の列車貨車型発射装置は、しかしコールドランチ方式ではなく、通常の弾道弾を発射している為、周辺鉄道施設へのブラスト被害を考慮すれば、現時点ではそれほど長射程のミサイルは運用できないだろう。
■北朝鮮,超音速滑空兵器
北朝鮮は弾道ミサイル一辺倒の時代を終えて現在複数種類のミサイル開発を進めていますが、これは北朝鮮軍運用と戦略体系の新しい変化を意味するのでしょうか。
北朝鮮軍は巡航ミサイルと超音速滑空兵器の同時開発を進めているとされる。これは従来の北朝鮮ミサイル開発が核兵器運搬能力を持つ長距離弾道ミサイルを重視したのと比較し、変化の表れといえるのかもしれない。変化とは核兵器を第一撃に投入する刹那的な軍事行動ではなく、アメリカ戦時指揮権返還後の韓国弱体化を見越し武力統一への転換だ。
9月28日、北朝鮮は日本海へミサイルを発射、当初は弾道ミサイルと視られていたが飛行高度が低く我が国防衛省は判断を保留していた、北朝鮮は29日、このミサイル実験を火星8を改良した新型の極超音速ミサイルと発表した。速力はマッハ5程度とされ、ミサイルは上昇後、弾頭を切り離し誘導機動性と滑空機動性の評価試験を実施、成功したとしている。
9月12日には巡航ミサイルの発射実験を実施、北朝鮮上空を八の字軌道で2時間6分に渡り巡航飛行し1500km先の目標に命中させたとしている。巡航ミサイルは低速で既存のレーダー管制高射機関砲でも撃墜可能だが、低空を飛行する為に早期警戒機等による低空目標監視を行わねば、地上レーダーでは対応時間が限られている、新しい段階の装備である。
■韓国,ミサイル潜水艦3番艦
韓国はアメリカ軍からの戦時指揮権返還による米軍自動参戦時代の終了を前にミサイル開発を急いでいます。
韓国海軍は9月28日、トサンアンチャンホ級潜水艦3番艦シンチャホの進水式を実施した。トサンアンチャンホ級潜水艦はチャンボゴⅢ計画として開発された潜水艦で、チャンボゴⅠがドイツの209型潜水艦ライセンス生産であったのに対し、トサンアンチャンホ級潜水艦は韓国独自設計であり潜水艦発射弾道弾6発を垂直発射装置から運用可能である。
トサンアンチャンホ級潜水艦の一番艦トサンアンチャンホは9月15日に初の潜水艦発射弾道弾実験を実施、400km先の目標海域へ命中したとしている。トサンアンチャンホ級潜水艦建造計画は3隻で今回が最終艦となるが、2028年までに更に大型化させた3600t級潜水艦3隻を建造する計画があり、北朝鮮の核恫喝へ韓国は潜水艦で対抗しようとしている。
■パキスタン,ガズバビミサイル
アフガニスタンでタリバーン政権が成立しようとした頃にパキスタンは新型ミサイルを試験していました。
パキスタンは核弾頭対応のガズバビ短距離弾道弾試験を実施したと発表した。ミサイル実験は八月初旬に実施したとしているが、発射位置や射程等についてパキスタン陸軍戦略軍司令部は発表していない。ただ、アフガニスタンでのタリバーン攻勢と同時期に核弾頭運搬用の弾道弾発射実験を行った事は、結果的に、タリバーンへの牽制とも受け取れよう。
ガズバビ短距離弾道弾は全長9.64mで発射重量は5256kg、射程は500km前後、ミサイルの形状や安定翼の配置から中国のCSS-7,東風11型ミサイルの影響が考えられている。パキスタンは隣国インドによるアグニ弾道ミサイル発射を受けガウリ弾道ミサイルの開発を進めているが、この開発には北朝鮮のノドン開発要員による秘密技術協力が指摘されていた。
■インド,ニルバイ巡航ミサイル
インドは隣国で核対立の続くパキスタンでのミサイル実験と同時期に独自のミサイル実験を行っている。
インド軍用に開発されるニルバイ長距離巡航ミサイルが発射実験に成功した、DRDOインド防衛研究開発機構が発表した。ミサイルはインド軍が開発を進めている1000km級の新型巡航ミサイルで、GPS誘導とINS慣性誘導装置を併用し目標に接近、海上目標等を狙う。試験は八月中旬にベンガル湾沿岸オリッサ州ミサイル試験場より実験されたとのこと。
ニルバイ長距離巡航ミサイルは発射重量1500kgで、地上移動指揮車輛や水上戦闘艦、将来的には航空機からの運用も想定している。弾頭重量は200kgから300kgで現在既に24種類の弾頭が開発されている。ただ、この直前に隣国パキスタンが悪化するアフガン情勢を背景にガズバビ短距離弾道弾試験を実施しており、インド実験の影響については未知数だ。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
最近のミサイル開発状況はまさに乱れ飛ぶ核ミサイルの脅威が2020年代も不変である事を示しているようです、ミサイル防衛重要性の理解の為にも最新の情報を纏めてみました。
ロシア国防省はRS-28/SS-X-29-30サーマット大陸間弾道弾の試験を本格化させている、今秋には発射試験を期しているという。サーマットは2018年にウラジミールプーチン大統領により開発開始が発表されたもので、クラスノヤルスク機械工場において製造が進められている。計画では2022年に戦略ミサイル部隊への部隊配備を開始したい方針という。
RS-28/SS-X-29-30サーマット大陸間弾道弾は常温備蓄可能な液体燃料方式を採用し、10tまでのペイロードの搭載能力を保持、10発から15発の多核弾頭方式をとる。弾頭には従来型の水爆弾頭の搭載も可能だが、このほかにも、すでに開発が進められているアバンガルド極超音速滑空体を搭載し、現在運用されているSS-18ミサイルの後継を期している。
RS-28/SS-X-29-30サーマット大陸間弾道弾の重視している点は、アメリカのミサイル防衛システムを突破できる能力であり、ブースター点火時間を最小限として赤外線放出による探知時間を軽減、またミサイル防衛システムの盲点である南極上空を飛翔する軌道を採用し、モーザルアクティブ防護システムを搭載し迎撃ミサイルを棒が薄る事も可能とされる。
■米トライデント核ミサイル延命
ロシアが大陸間弾道弾を開発する一方でアメリカは既存ミサイルの延命改修を行います。
アメリカ海軍はトライデントⅡ潜水艦発射弾道弾延命型のトライデントⅡD5LE発射実験を成功させました。この試験は9月17日、フロリダ州ケープカナメラル沖合にて実施され、オハイオ級戦略ミサイル原潜ワイオミングより発射、トライデントⅡD5LE実験用弾道ミサイルに核弾頭は搭載されていませんが、想定海域へ正確に命中させたとのこと。
トライデントⅡD5LEはオハイオ級戦略ミサイル原潜及びイギリス海軍のヴァンガード級戦略ミサイル原潜に搭載されたトライデントⅡ改良型で、製造より長期間を経て老朽化した部分を更新したものとなっています。アメリカ海軍の潜水艦発射弾道弾はアメリカ核戦力の七割を占めており、戦略空軍ミニットマン大陸間弾道弾と核抑止双璧を為しています。
オハイオ級戦略ミサイル原潜は冷戦時代後期におけるアメリカ海軍第二核報復能力の主力であり、大陸間弾道弾が敵の核攻撃により機能喪失した際の第二撃を担っていましたが、緊張緩和による一部艦をトマホーク154発搭載の巡航ミサイル原潜への転換が実施、残る艦も老朽化が進み、後継としてコロンビア級戦略ミサイル原潜の建造が開始されています。
■北朝鮮,列車型ミサイル発射器
北朝鮮は9月に奇妙な位置からミサイルを発射し山間部からのミサイル運用能力を世界に示しました。
北朝鮮軍は9月15日、日本海に向け列車型発射装置より二発の弾道ミサイルを発射し我が国EEZ内に落下したた。弾道ミサイルは長時間飛翔し、不規則な軌道を飛翔した為当初は我が国EEZ排他的経済水域外に落下したと見られていただ、防衛省が弾道情報を制裁した結果、我が国EEZ内に落下した事が判明している、我が国周辺の船舶に被害情報はない。
ミサイルは上昇限度5万m程度と、所謂ロフテッド軌道のような極端な高高度を飛行した訳ではないが、750km以上を飛翔しており、ミサイル防衛を回避する不規則な機動性を持つミサイルである可能性もある。そして北朝鮮は翌16日、ミサイル実験は鉄道からの列車貨車を利用した移動式発射装置より発射した事を発表、その際の映像も公開している。
鉄道貨車型発射装置は旧ソ連が冷戦時代にICBM大陸間弾道弾の運用に活用したが、ミサイル位置を人工衛星等から捕捉されにくい利点がある。北朝鮮の列車貨車型発射装置は、しかしコールドランチ方式ではなく、通常の弾道弾を発射している為、周辺鉄道施設へのブラスト被害を考慮すれば、現時点ではそれほど長射程のミサイルは運用できないだろう。
■北朝鮮,超音速滑空兵器
北朝鮮は弾道ミサイル一辺倒の時代を終えて現在複数種類のミサイル開発を進めていますが、これは北朝鮮軍運用と戦略体系の新しい変化を意味するのでしょうか。
北朝鮮軍は巡航ミサイルと超音速滑空兵器の同時開発を進めているとされる。これは従来の北朝鮮ミサイル開発が核兵器運搬能力を持つ長距離弾道ミサイルを重視したのと比較し、変化の表れといえるのかもしれない。変化とは核兵器を第一撃に投入する刹那的な軍事行動ではなく、アメリカ戦時指揮権返還後の韓国弱体化を見越し武力統一への転換だ。
9月28日、北朝鮮は日本海へミサイルを発射、当初は弾道ミサイルと視られていたが飛行高度が低く我が国防衛省は判断を保留していた、北朝鮮は29日、このミサイル実験を火星8を改良した新型の極超音速ミサイルと発表した。速力はマッハ5程度とされ、ミサイルは上昇後、弾頭を切り離し誘導機動性と滑空機動性の評価試験を実施、成功したとしている。
9月12日には巡航ミサイルの発射実験を実施、北朝鮮上空を八の字軌道で2時間6分に渡り巡航飛行し1500km先の目標に命中させたとしている。巡航ミサイルは低速で既存のレーダー管制高射機関砲でも撃墜可能だが、低空を飛行する為に早期警戒機等による低空目標監視を行わねば、地上レーダーでは対応時間が限られている、新しい段階の装備である。
■韓国,ミサイル潜水艦3番艦
韓国はアメリカ軍からの戦時指揮権返還による米軍自動参戦時代の終了を前にミサイル開発を急いでいます。
韓国海軍は9月28日、トサンアンチャンホ級潜水艦3番艦シンチャホの進水式を実施した。トサンアンチャンホ級潜水艦はチャンボゴⅢ計画として開発された潜水艦で、チャンボゴⅠがドイツの209型潜水艦ライセンス生産であったのに対し、トサンアンチャンホ級潜水艦は韓国独自設計であり潜水艦発射弾道弾6発を垂直発射装置から運用可能である。
トサンアンチャンホ級潜水艦の一番艦トサンアンチャンホは9月15日に初の潜水艦発射弾道弾実験を実施、400km先の目標海域へ命中したとしている。トサンアンチャンホ級潜水艦建造計画は3隻で今回が最終艦となるが、2028年までに更に大型化させた3600t級潜水艦3隻を建造する計画があり、北朝鮮の核恫喝へ韓国は潜水艦で対抗しようとしている。
■パキスタン,ガズバビミサイル
アフガニスタンでタリバーン政権が成立しようとした頃にパキスタンは新型ミサイルを試験していました。
パキスタンは核弾頭対応のガズバビ短距離弾道弾試験を実施したと発表した。ミサイル実験は八月初旬に実施したとしているが、発射位置や射程等についてパキスタン陸軍戦略軍司令部は発表していない。ただ、アフガニスタンでのタリバーン攻勢と同時期に核弾頭運搬用の弾道弾発射実験を行った事は、結果的に、タリバーンへの牽制とも受け取れよう。
ガズバビ短距離弾道弾は全長9.64mで発射重量は5256kg、射程は500km前後、ミサイルの形状や安定翼の配置から中国のCSS-7,東風11型ミサイルの影響が考えられている。パキスタンは隣国インドによるアグニ弾道ミサイル発射を受けガウリ弾道ミサイルの開発を進めているが、この開発には北朝鮮のノドン開発要員による秘密技術協力が指摘されていた。
■インド,ニルバイ巡航ミサイル
インドは隣国で核対立の続くパキスタンでのミサイル実験と同時期に独自のミサイル実験を行っている。
インド軍用に開発されるニルバイ長距離巡航ミサイルが発射実験に成功した、DRDOインド防衛研究開発機構が発表した。ミサイルはインド軍が開発を進めている1000km級の新型巡航ミサイルで、GPS誘導とINS慣性誘導装置を併用し目標に接近、海上目標等を狙う。試験は八月中旬にベンガル湾沿岸オリッサ州ミサイル試験場より実験されたとのこと。
ニルバイ長距離巡航ミサイルは発射重量1500kgで、地上移動指揮車輛や水上戦闘艦、将来的には航空機からの運用も想定している。弾頭重量は200kgから300kgで現在既に24種類の弾頭が開発されている。ただ、この直前に隣国パキスタンが悪化するアフガン情勢を背景にガズバビ短距離弾道弾試験を実施しており、インド実験の影響については未知数だ。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)