北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】乱れ飛ぶ核ミサイル!米ロ戦略核ミサイル,南北朝鮮弾道弾と印パ核ミサイル開発

2021-11-02 20:00:29 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 最近のミサイル開発状況はまさに乱れ飛ぶ核ミサイルの脅威が2020年代も不変である事を示しているようです、ミサイル防衛重要性の理解の為にも最新の情報を纏めてみました。

 ロシア国防省はRS-28/SS-X-29-30サーマット大陸間弾道弾の試験を本格化させている、今秋には発射試験を期しているという。サーマットは2018年にウラジミールプーチン大統領により開発開始が発表されたもので、クラスノヤルスク機械工場において製造が進められている。計画では2022年に戦略ミサイル部隊への部隊配備を開始したい方針という。

 RS-28/SS-X-29-30サーマット大陸間弾道弾は常温備蓄可能な液体燃料方式を採用し、10tまでのペイロードの搭載能力を保持、10発から15発の多核弾頭方式をとる。弾頭には従来型の水爆弾頭の搭載も可能だが、このほかにも、すでに開発が進められているアバンガルド極超音速滑空体を搭載し、現在運用されているSS-18ミサイルの後継を期している。

 RS-28/SS-X-29-30サーマット大陸間弾道弾の重視している点は、アメリカのミサイル防衛システムを突破できる能力であり、ブースター点火時間を最小限として赤外線放出による探知時間を軽減、またミサイル防衛システムの盲点である南極上空を飛翔する軌道を採用し、モーザルアクティブ防護システムを搭載し迎撃ミサイルを棒が薄る事も可能とされる。
■米トライデント核ミサイル延命
 ロシアが大陸間弾道弾を開発する一方でアメリカは既存ミサイルの延命改修を行います。

 アメリカ海軍はトライデントⅡ潜水艦発射弾道弾延命型のトライデントⅡD5LE発射実験を成功させました。この試験は9月17日、フロリダ州ケープカナメラル沖合にて実施され、オハイオ級戦略ミサイル原潜ワイオミングより発射、トライデントⅡD5LE実験用弾道ミサイルに核弾頭は搭載されていませんが、想定海域へ正確に命中させたとのこと。

 トライデントⅡD5LEはオハイオ級戦略ミサイル原潜及びイギリス海軍のヴァンガード級戦略ミサイル原潜に搭載されたトライデントⅡ改良型で、製造より長期間を経て老朽化した部分を更新したものとなっています。アメリカ海軍の潜水艦発射弾道弾はアメリカ核戦力の七割を占めており、戦略空軍ミニットマン大陸間弾道弾と核抑止双璧を為しています。

 オハイオ級戦略ミサイル原潜は冷戦時代後期におけるアメリカ海軍第二核報復能力の主力であり、大陸間弾道弾が敵の核攻撃により機能喪失した際の第二撃を担っていましたが、緊張緩和による一部艦をトマホーク154発搭載の巡航ミサイル原潜への転換が実施、残る艦も老朽化が進み、後継としてコロンビア級戦略ミサイル原潜の建造が開始されています。
■北朝鮮,列車型ミサイル発射器
 北朝鮮は9月に奇妙な位置からミサイルを発射し山間部からのミサイル運用能力を世界に示しました。

 北朝鮮軍は9月15日、日本海に向け列車型発射装置より二発の弾道ミサイルを発射し我が国EEZ内に落下したた。弾道ミサイルは長時間飛翔し、不規則な軌道を飛翔した為当初は我が国EEZ排他的経済水域外に落下したと見られていただ、防衛省が弾道情報を制裁した結果、我が国EEZ内に落下した事が判明している、我が国周辺の船舶に被害情報はない。

 ミサイルは上昇限度5万m程度と、所謂ロフテッド軌道のような極端な高高度を飛行した訳ではないが、750km以上を飛翔しており、ミサイル防衛を回避する不規則な機動性を持つミサイルである可能性もある。そして北朝鮮は翌16日、ミサイル実験は鉄道からの列車貨車を利用した移動式発射装置より発射した事を発表、その際の映像も公開している。

 鉄道貨車型発射装置は旧ソ連が冷戦時代にICBM大陸間弾道弾の運用に活用したが、ミサイル位置を人工衛星等から捕捉されにくい利点がある。北朝鮮の列車貨車型発射装置は、しかしコールドランチ方式ではなく、通常の弾道弾を発射している為、周辺鉄道施設へのブラスト被害を考慮すれば、現時点ではそれほど長射程のミサイルは運用できないだろう。
■北朝鮮,超音速滑空兵器
 北朝鮮は弾道ミサイル一辺倒の時代を終えて現在複数種類のミサイル開発を進めていますが、これは北朝鮮軍運用と戦略体系の新しい変化を意味するのでしょうか。

 北朝鮮軍は巡航ミサイルと超音速滑空兵器の同時開発を進めているとされる。これは従来の北朝鮮ミサイル開発が核兵器運搬能力を持つ長距離弾道ミサイルを重視したのと比較し、変化の表れといえるのかもしれない。変化とは核兵器を第一撃に投入する刹那的な軍事行動ではなく、アメリカ戦時指揮権返還後の韓国弱体化を見越し武力統一への転換だ。

 9月28日、北朝鮮は日本海へミサイルを発射、当初は弾道ミサイルと視られていたが飛行高度が低く我が国防衛省は判断を保留していた、北朝鮮は29日、このミサイル実験を火星8を改良した新型の極超音速ミサイルと発表した。速力はマッハ5程度とされ、ミサイルは上昇後、弾頭を切り離し誘導機動性と滑空機動性の評価試験を実施、成功したとしている。

 9月12日には巡航ミサイルの発射実験を実施、北朝鮮上空を八の字軌道で2時間6分に渡り巡航飛行し1500km先の目標に命中させたとしている。巡航ミサイルは低速で既存のレーダー管制高射機関砲でも撃墜可能だが、低空を飛行する為に早期警戒機等による低空目標監視を行わねば、地上レーダーでは対応時間が限られている、新しい段階の装備である。
■韓国,ミサイル潜水艦3番艦
 韓国はアメリカ軍からの戦時指揮権返還による米軍自動参戦時代の終了を前にミサイル開発を急いでいます。

 韓国海軍は9月28日、トサンアンチャンホ級潜水艦3番艦シンチャホの進水式を実施した。トサンアンチャンホ級潜水艦はチャンボゴⅢ計画として開発された潜水艦で、チャンボゴⅠがドイツの209型潜水艦ライセンス生産であったのに対し、トサンアンチャンホ級潜水艦は韓国独自設計であり潜水艦発射弾道弾6発を垂直発射装置から運用可能である。

 トサンアンチャンホ級潜水艦の一番艦トサンアンチャンホは9月15日に初の潜水艦発射弾道弾実験を実施、400km先の目標海域へ命中したとしている。トサンアンチャンホ級潜水艦建造計画は3隻で今回が最終艦となるが、2028年までに更に大型化させた3600t級潜水艦3隻を建造する計画があり、北朝鮮の核恫喝へ韓国は潜水艦で対抗しようとしている。
■パキスタン,ガズバビミサイル
 アフガニスタンでタリバーン政権が成立しようとした頃にパキスタンは新型ミサイルを試験していました。

 パキスタンは核弾頭対応のガズバビ短距離弾道弾試験を実施したと発表した。ミサイル実験は八月初旬に実施したとしているが、発射位置や射程等についてパキスタン陸軍戦略軍司令部は発表していない。ただ、アフガニスタンでのタリバーン攻勢と同時期に核弾頭運搬用の弾道弾発射実験を行った事は、結果的に、タリバーンへの牽制とも受け取れよう。

 ガズバビ短距離弾道弾は全長9.64mで発射重量は5256kg、射程は500km前後、ミサイルの形状や安定翼の配置から中国のCSS-7,東風11型ミサイルの影響が考えられている。パキスタンは隣国インドによるアグニ弾道ミサイル発射を受けガウリ弾道ミサイルの開発を進めているが、この開発には北朝鮮のノドン開発要員による秘密技術協力が指摘されていた。
■インド,ニルバイ巡航ミサイル
 インドは隣国で核対立の続くパキスタンでのミサイル実験と同時期に独自のミサイル実験を行っている。

 インド軍用に開発されるニルバイ長距離巡航ミサイルが発射実験に成功した、DRDOインド防衛研究開発機構が発表した。ミサイルはインド軍が開発を進めている1000km級の新型巡航ミサイルで、GPS誘導とINS慣性誘導装置を併用し目標に接近、海上目標等を狙う。試験は八月中旬にベンガル湾沿岸オリッサ州ミサイル試験場より実験されたとのこと。

 ニルバイ長距離巡航ミサイルは発射重量1500kgで、地上移動指揮車輛や水上戦闘艦、将来的には航空機からの運用も想定している。弾頭重量は200kgから300kgで現在既に24種類の弾頭が開発されている。ただ、この直前に隣国パキスタンが悪化するアフガン情勢を背景にガズバビ短距離弾道弾試験を実施しており、インド実験の影響については未知数だ。

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【防衛情報】英国DSEI国際危機管理展:迫撃砲システムMWS81,50mm砲型CV-90-D装甲車

2021-11-01 20:10:25 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 イギリスで行われましたDSEI国際危機管理展に関する話題をお届けしましょう。自衛隊の装備体系にも参考となる部分は多い。

 イギリスのBAEシステムズ社はDSEI国際危機管理展に50mm砲搭載型のCV-90装甲戦闘車を発表しました。この50mm砲塔型はCV-90-Dシリーズとされており、単に40mm機関砲に50mm砲を搭載するにとどまらず、砲塔システムを再設計しアクティヴ防御装置や周辺監視装置等を追加搭載する事で戦闘効率等を大幅に強化し防御力も向上しています。

 CV-90-Dシリーズは戦車と同等の火器管制装置を搭載すると共にスパイクLR対戦車ミサイル運用能力を標準装備とし、装甲戦闘車ながら50mm機関砲と併せ主力戦車に十分対抗すると共に部分的に置換える能力を有しており、戦車との協同を超えた水準の運用も想定、これは欧州各国が冷戦後、主力戦車を排し装甲戦闘車を強化した施策に対応するものです。

 BAE社によれは、このCV-90-Dシリーズはオランダ軍が進めるCV9035NL装甲戦闘車改修計画に関しての5億ドル規模の改修や、チェコ陸軍へ提案されるCV-90-MkⅣにも適応し得るとしており、また車体情報管理システム等は既に1200両以上が運用されている各国CV-90運用状況を反映させたものとなっており、更なる各国への提案を進めるとの事です。
■FNハースタルの武装ヘリ
 FNハースタル社といえばFNC小銃等を思い浮かべますが。

 ベルギーのFNハースタル社はヘリコプター武装キットFNエアボーンエクステンデットデジタルスイートを発表します。これは2021年9月14日に開催されるロンドンDSEI危機管理展に先立ち新しい装備システムを提案するもので、既存の汎用ヘリコプターへの武装ヘリコプター化プログラムとして2018年より開発が進められていた最新の装備という。

 FNエアボーンエクステンデットデジタルスイートはFN社製機銃Dポッドデジタル照準射撃ポッド、サフランEuroflir410EO/IR超長距離複合光学照準装置、FN社製ヘッドアップディスプレイ、タレス社製FZ231レーザー誘導ロケット弾ポッドシステムを統合したもので、FN社はモデルにUH-60多用途ヘリコプターをイメージ画像として採用していました。
■電動軍用車Vizsla
 バッテリー技術が発展するならば不整地を500km踏破する電動オートバイの可能でしょう。

 イギリスのスパキャット社はエコチャージャー社と共同開発した世界初の実用電動軍用車VizslaをDSEI国際危機管理展で初公開しました。スパキャット社は六輪式全地形車両などを各国に納入している不整地車輛開発の先駆者ですが、今回新たにリチウムイオン電池を搭載したクワッドオフロードバギー方式である四輪式の全地形車両を開発しています。

 Vizslaは二人乗り、最高速度は65km/hで航続距離は150kmとなっています。軍用四輪駆動車としては余りに航続距離が低く、特にこの種の車両が投入される山間部や森林地帯などの不整地での性能は未知数ですが、軍用無線機等と電力を融通する事が可能であり、可搬式太陽電池と一体運用することで燃料補給を必要としない独立戦闘が可能となります。
■ハンファディフェンス出展
 ハンファディフェンス社の今回のDSEIでの動きです。

 韓国のハンファディフェンス社はDSEI国際危機管理展にK-9自走榴弾砲、レッドバック装甲戦闘車等を展示する。これらは韓国軍などで採用されている。K-9自走榴弾砲はM-109自走榴弾砲の設計を元に大型化させ52口径155mm榴弾砲を搭載したもので、この種の自走榴弾砲としては非常に安価に纏められており、NATO諸国での採用も進んでいる。

 レッドバック装甲戦闘車は韓国軍に採用されたK-21装甲戦闘車の改良型で、現在はドイツのリンクス装甲戦闘車と共にオーストラリア軍将来装甲戦闘車選定において評価試験中だ。K-9自走榴弾砲は改良型のK-9A2がイギリス陸軍AS-90自走榴弾砲後継候補に挙がっており、またウォリアー装甲戦闘車の老朽化が進んでおり、韓国から売り込みが考えられよう。
■ボクサーMWS81搭載型
 ボクサー装輪装甲車は様々な派生型を想定していますが自走迫撃砲型もその一つ。

 ドイツのラインメタル社はボクサー装輪装甲車自走迫撃砲型をDSEI国際危機管理展へ展示しました。自走迫撃砲にはボクサー装輪装甲車へラインメタル社が開発したMWS81/81mm迫撃砲システムを搭載しており、ボクサー装輪装甲車後部に搭載、モジュール設計を応用したもの、半自動装填にてHE弾薬や照明弾等を投射可能となっています。

 ボクサー装輪装甲車はドイツ連邦軍へ広範に配備されると共にMIVイギリス機械化装甲車として採用されていて、RBSLラインメタルBAEシステムズランド社により製造されています。ドイツとオランダ及びオーストラリアとリトアニア等に1200両が採用されているボクサー装輪装甲車は高価ですが、汎用性と防御力の高さで高く評価される装輪装甲車です。

 MIVイギリス機械化装甲車は旧式化したFV-432装甲車を筆頭に複数の車両を一つの基本車輛と派生型により置換える計画ですが、1995年にスイス製ピラーニャ装甲車の採用が発表されたものの、景気後退などで実に20年以上延期をくりかえされ、漸くボクサー装輪装甲車が決定、現在イギリス国内での合弁企業によるライセンス生産の準備が進んでいます。
■無人戦闘車Type-XRCV
 RWS遠隔操作銃搭の技術開発に関して我が国は遅れていますが後発でも追いかける重要性はこうした部分に在るのかもしれない。

 ノルウェーのコングスベルグディフェンスアンドエアロスペースは50mm砲搭載の新型無人戦闘車Type-XRCVを発表しました。これはロンドンDSEI危機管理展にパネル展示されたもので、自動車両新興企業であるミルレムロボティクスと共に協同開発したものです。車体は装軌式で旋回式砲塔を搭載、既存の装甲戦闘車と同等の車体戦闘能力を有します。

 ロボットウイングマンと称されるType-XRCVは文字通り有人戦闘車両を支援する用途にあてられ、特に30mm機関砲まで既に開発され採用される、遠隔操作銃搭RWSの性能に定評あるコングスベルグ社の技術は元々RWS操作要員を車内に配置するか更に離れた位置に配置するかの違いだけで元々無人戦闘車両向きの技術を開発していたといえるでしょう。

 Type-XRCVには50mm機関砲に加え車体後部に小型無人機搭載区画も配置されており、装甲偵察車として用いる倍、従来は徒歩の斥候兵が担っていた車外の情報収集も併せて無人機が担う事となります。ただ、システムが高性能化すると共にAI人工知能が担う部分は多少あるにしろ、一定の操作要員は必要であり、その為の通信技術等の開発は関心事です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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