一昨日だったかWheelerホーイラーの死が報じられていた。96歳だったという。
この頃の若い物理学者はWheelerといえば、通称「電話帳」といわれる部厚い、一般相対論と重力の本Gravitation を思うだろう。しかし、核分裂の理論をつくったのは彼とBohrであった。
また彼はアメリカの生んだ天才的物理学者Feynman の先生でもあった。Feynmanは誰に指導を受けたとしても結局はその天才を発揮しただろうが,その天才をもっと大きく育てた人としても有名である。
ちょうどオランダの天才物理学者't Hooft を育てた、Veltmanのような存在だったのだ。もっともVeltmanはその業績が認められて't Hooft と同時にノーベル賞を受賞した。
Heisenbergの先生だったBornは、Heisenbergがノーベル賞を単独受賞したときに自分の業績が認められなかったことに悩んだという。だが幸いなことに20数年後だったかにBorn自身もノーベル賞を受賞したので、ある意味では救われた。
その点で気の毒なのは量子電気力学の建設者の一人Dyson であろう。朝永、Schwinger, Feynmanの3人が1965年にノーベル賞を受賞したときに彼一人が共同受賞できなかったから。
また昨日は気象学者Lorenzの死が報じられた。Lorenz は90歳で亡くなった。彼は現在ではカオスと言われる現象の発見者の一人とみなされている。数年前には京都賞か日本賞を受賞している。
カオスとは因果的法則が、確率的なランダムな現象を引き起こすものをいう。数十年の昔、京都大学の山口先生の集中講義でカオスという現象を知った。山口さんの話はMayの数理生態学の話でであり、これは一番簡単な2次写像のカオスである。
Lorenz のことを知ったのはかなり後で、その後有名な物理学者となった蔵本氏の論文とかでLorenz の論文が引用されているのを見た。
「中国で蝶がはばたくとその影響がブラジルに伝わる」とかいう風に表現される。普通にはそんなことが起こるはずがないが、カオスの神髄をうまく表現しているかもしれない。