何てこと書いたら、すぐに数学ファンのみなさんから「おい、おい」「君は対数関数と指数関数が互いに逆関数だってことを知らないのか」と言われそうだ。
ここでの対数と指数は、「対数関数と指数関数」のことではない。まずはじめに断っておく。英語で言えば、logarithmic functionとexponential functionのことではない。
対数logarithmと指数exponentのことである。実はこの二つは同じものである。もっともまったく同じかといえば、ちょっと観点の違いもある。だから、数学を学ぶ初歩の方にはこれが同じとか言って迷わせたくないと思うのだろうか。
最近出版された武藤徹・三浦基弘編著『数える・はかる・単位の辞典』(東京堂出版)には対数の説明は詳しくあるのに指数の項目がなかった。多分、もし指数の項目を入れれば、対数と指数とが同じとかいうことを言わなくなければならなくなって、困るのではないかと思われたのではなかろうか。
一昨日、上記の書を武藤先生から送っていただいた。それで、一昨日の夜むさぼり読んだのだが、ちょっとこのことが気になった。それで、このことを軽く触れたメールを本を頂いたお礼に送ったら、すぐに返事を頂いた。指数と対数とが同じものだということは先刻よくご承知だのにこれが対数関数と指数関数との理解の障害になってはいけないとの考慮からであろうか。
なかなか専門家というのは配慮が深いものである。私にしてもその点は理解できる。もっとも指数と対数とが同じだと言っても対数の方の記号が難しい感じがするので、指数のほうがわからないという学生はほとんどいないのに、log xなどと出てくるとわからないという学生が大学生でもいるのだ。
立体角でも平面角の弧度法での測り方の拡張であるのに、そのことを一言断れば、理解できる人が増えると思うのにそのことに言及しないのはやはり不親切だと私は思っている。
サーキュラー「数学・物理通信」でこういう用語の説明をすべきだと思いはじめた。