Ca depend とは「場合による」とか訳せるフランス語である。この語を聞いたのはもう50年以上の前の大学の3年生だった。
当時、H大学のフランス語の講義に出席をしていたが、そのころ大学院のマスターコースをつくるために、大学のほうでも努力をしているから、文部省でもマスターコースを設置してほしいとの運動をくり広げており、その一環としてフランス人の先生方が土曜日の午後をフランス語の会話教室を開いていた。これはたいてい神戸とか京都とかから来られていた。
それで、まだ初級のフランス語文法を学んでいる途中なのに、教養部のフランス語のN教授に勧められて、その会話の教室に参加するようになっていた。そこで上級生の人がフランス人の先生に聞かれて答えたのが、このCa dependであった。発音をカナでまずくだが、記すとサ・デパンである。英語風に発音すれば、depend はディペンドであろうが、サ・デパンと発音する。
大体、英語でもフランス語でも質問があったときには、答えはまずはyesかnoかである。フランス語でいえば、ouiかnonか、さもなくば、siと答える(注)。
ところが、ものによってはこういうouiでもnonでもsiでもない答えがした場合も状況によっては生じる。そういうときにCa dependという。
英語でいえば、it dependsであろうか。場合によってはyesであるかもしれないし、またnoであるかもしれない。そういうときにいう、便利なことばである。残念ながら、実際の会話でこのCa dependを使ったことはまだない。
いわゆる、私にとっては耳学問の知識に留まっている。
(注) 疑問文には2種類ある。一つは「何を」とか「誰を」とかいう、4w1hの「疑問代名詞が文の先頭についた疑問文=補足疑問文」とyesかnoで答える「決定疑問文」である。Ca dependは「決定疑問文」の答えに使える。