「江沢洋博士の著作目録」の一環として私のもっている江沢洋さんが関係した著作を仕事場にもって来て、少しづつ「著作目録」の編集を始めている。
その一環として『理科が危ない』と『理科を歩む』を持ってきた。そのときに『理科が危ない』の一部を読んで関心をもったので、全部をはじめて読んでみた。
『理科が危ない』は江沢洋さんが2001年6月30日に新曜社から出版した本の1冊である。
この本はずいぶん以前から持っていたのだが、以前には一部を読んだだけで、全部を読んだことはなかった。
ここでは「教育論の七つの誤り」から知ったことを以下に書く。
江沢さんは理科、特に、学校における物理の履修者が1994年には13.3%となっているということを示している。1970年には93.8%であったにもかかわらずである。
その間にもちろん週休2日制が一般になっているとかもあるが、1990年には34.3%であったのに。これでは江沢さんでなくても心配するのは当然であろう。
日本ではこの30年ほどを「日本の空白の30年」とか言うが、これは日本の経済がだんだんしりすぼみになっていることで如実に示されている。
あからさまには江沢さんは述べていないが、総合理科のようなあいまいな科目がこのような経済の不活発を起こしているといってもいいのではなかろうか。
日本の経済政策とか政治の政策を根本から考えなおす政治家や官僚がでて来ない限り、日本は救われないのだ。これは根本的には教育政策に深くかかわっている。
日本の政治家の罪はとても深いということを再度申しておく。
付記すると江沢洋さんが述べているような科学雑誌「自然」ほどの影響力はまったくないが、私はメールで無料配布のある種の雑誌「数学・物理通信」を発行している。またこれは名古屋大学の谷村省吾先生によって彼のインターネットのサイトにすべてのバックナンバーをそこに見ることができる。
これはあまりいい言葉ではないが、ゲリラ的な方法である。もっと正規軍のようなきちんとした雑誌の発行が必要なことはいうまでもない。
「窮理」という小冊子風の雑誌を発行している、伊崎さんという方もおられるが、まだなかなか一般に知られているとは思えない。
それとこれは編集者(伊崎)の意図とは大きく離れているのかもしれないが、なかなか往時の雑誌「自然」ほどにはインパクトを今のところ持ちえていないようにも思われる。しかし、将来的にはこの雑誌が大変貌を遂げる望みがないわけではない。