球面線形補間の導き方をきちんと書いた本があまりないような気がする。これをきちんと数通りの方法で導いたのが小著『四元数の発見』(海鳴社)での自慢の一つなのだが。
私の本自身は松岡学『数の世界』(講談社ブルーバックス)とか結城浩『複素数の秘密』(ソフトバンク・クリエイティブ)で引用されたからある程度は評価されたとは思うが、これらの本には球面線形補間のことはまったく触れられていない。
球面線形補間は『3Dグラフィックスのための数学入門』(森北出版)に導出されてあるが、この導出は不十分であると思う。この本の著者には申し訳ないが、そういう感想をもつ。もっともこの本のその他の部分がわるいというつもりはない。
さらに、ずっと昔に参照した金谷(kanaya)さんの本もそうだった。その後、金谷さんはこの本の改訂版をだしているはずだが、そちらは見ていない。
比較的きちんと説明をしてある本としては、『ゲーム3D数学』(オライリー・ジャパン)がある。これが今までの述べた本のうちではまだいい方だが、私などはこれを理解できたのは他の方法で理解した後だった。
インターネットでの質問欄にこの本での球面線形補間の導き方がわからないとの質問が出ていたので、わからなかったのは私だけではないのだなと思ったものだ。だが、この本の記述は端折ってはあるが、ごまかしではない。
さすがにインターネットにはきちんとした説明があったのだが、これもなかなかわからなかった覚えがある。これを平面幾何が得意な義弟が自分が理解したことをまとめて私信で送ってくれたので、はじめて了解した気がしたものだ。
その後、3つか4つの方法での球面線形補間の式の導出を『四元数の発見』で説明している。理解するためだけなら、一つの方法で十分だろうが、私はそれでは気がすまない因果な性質である。
(2024.1.8付記)「球面線形補間の導出」と題するエッセイを小著『四元数の発見』(海鳴社)以外にも書いている。これも「数学・物理通信」に掲載してあるので、インターネットで「数学・物理通信」で検索してみてください。または直接「球面線形補間の導出」でもインターネットで検索できるかもしれない。
これは私が以前には理解できなかった金谷(かなや)さんの導出法の説明である。金谷さんの導出法は発想としては間違っていなかったのだが、説明は不十分だったと思う。もっとも彼の本の改訂版でその内容が改訂されているかどうかを私は知らない。
金谷の導出法は面倒であり、単に「球面線形補間の導出」ということなら、このエッセイの中に紹介した、Sさんの導出法が簡明である。他ではこの簡明な導出法を見たことがない。