出版社と著者とは言っても一般論を展開するつもりはない。勁草書房と物理学者、武谷三男とか、みすず書房と物理学者、朝永振一郎との関係について個人的な感想を述べるだけである。
勁草書房は武谷三男の著作をかなりたくさん出版してきたが、2000年に武谷が亡くなり、その後は出版の方向を変換したらしく、私の感じではぱっとしない出版社になってしまった感じがぬぐえない。
もっともこれはまったく勝手な私の個人的な私見であり、勁草書房の責任ではない。
みすず書房は勁草書房ほどは感じないが、それでも朝永振一郎さんが亡くなって久しいので物理関係の方々との縁が薄れているのだろうか。以前ほど魅力のある出版社と思えなくなっている。これは私が理系の物理系の研究者であったことも関係しているためかもしれない。
それでも、みすず書房は物理出身の山本義隆さんの著書をたくさん出したりしているから、勁草書房ほどは編集方針が大きく変わったということはないだろう。だが、朝永振一郎さんという魅力的な著者が亡くなってしまってはどうしようもない。
それに、私が若かったころは素粒子物理学とか原子核物理学が花形の分野であったが、この分野はいまではそれほど胸のときめく分野ではなくなっているのではないかと思う。
それで、これらの分野で興味深い書物を発行していた、みすず書房も以前ほど輝いて見えないのはしかたがないのかもしれない。
私のやっている雑談会でも物理研究者だった連中が最近だが、数名集まったが、現在の時点で私たちが若くて研究を始めるなら、分子生物学関係の研究をしたいと思うのではないかという意見があり、賛成する者も多かった。