根気、年季、暗記(コンキ、ネンキ、アンキ)は私がはじめてNHKのラジオ講座でドイツ語を学び始めたころ(1961年ごろ)にその講師だった藤田五郎先生が言われていたことである。
外国語を学ぶにはこの三つのキが必要であると折に触れて言われていた。この三つのキでネンキだけは積んだのだが、他のキはなかなか積めない。だからドイツ語でもいつまでもカタコトしか話せない。
もっとも最近ではカタコトでも話せば素晴らしいではないかと居直るくらいだから始末がますますわるいだろうか。
藤田五郎先生にドイツ語の文の枠構造(SatzrahmenbauとかSatzklammerという)のことを学び、ドイツ語は英語とは違う語順で話される言語だと知った。これが私には決定的なことであったと思う。
ところが現在一緒にzoomでのドイツ語のクラスを受けている方々に聞いてみてもこの文の枠構造がそれほど特異なことだとの印象がないらしいと知って私の方がびっくりしてしまった。
だが、かなり以前のことだが、ある日本人のゲルマニストにドイツ語は分からなかったと言ったら、君は「英語が得意だったんですね」と言われて、それほど英語が得意だったわけではないが、英語の影響が大きかったことは認めてもいいのではないかと思った。
私は、母親が若いときに女学校の入学前に学んだことのある老先生、武田先生(白星堂塾主宰)からいい初歩の英語の手ほどきを受けた。先生は旧制中学校しか出てはいない方だったが、当時は愛媛県には中学校はなく岡山の中学校まで学びに行った方であり、中学校でイギリス人の先生に英語を学んだという方であった(注)。
外国語を全く知らなかった小学生から中学生になってすぐにいい英語の手ほどき受けた私は幸せであったことを今になって思うのである。
(注)そのころ、中学校で学んだということは今で言えば、大学で学ぶくらいかそれ以上の価値のあることだったと思う。