「異説 遠山啓伝」がおもしろかった。これは中公文庫の遠山啓『数学と人間』の巻末に再掲された数学者・森毅による「遠山啓伝」である。
前にどこかで読んでいたとは思うが、なかなか遠山さんの本当の姿をとらえているのではなかろうか。ある時期まで数学のテクストをつくることに専心していたのが楽しい授業とか教育関係の市民運動家になったとかいうのは最近知った側面だが、私はあくまで学ぶためのテクストをつくりたいという気が強い方だ。
そういう意味では遠山さんとはちょっと違った側面をもった人間である。森毅は大学を定年になって元気をなくす人と元気なる人とがあるという。遠山さんも私も大学を定年になって元気づいたという点では似通っているかもしれない。
『数学と人間』は税込みだと1000円を超えるが、もし好奇心ある方は読んで見られたらいいと思う。
(2023.7.17付記) もっとも私は人づきあいがあまり好きではない。遠山さんは人づきあいが好きだったかどうかはわからないが、それでも人づき合いをそれほど苦にしない人だったのだろうと思う。
水道方式とかをつぶしにかかってきた文部省関係の人との対決をおそれはしない。それほどは苦にしなかったのだろうが、私などだったら耐えられないであろう。
生き方として板倉聖宣があまり目立たないように努力して生きたということをどこかで読んでいるのでそういう生き方をしたいと思う方である。
仮設実験授業で有名だった板倉だが、ひょっとして遠山の様子をみてそこから学んだ知恵だったのか知れないなどと想像していたりする自分がいる。