【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

労働基準法第14条改正法案はいったん廃案にし、政府が出し直す公算、神津氏「残業代ゼロ高プロ」法成立を容認のもよう

2017年07月12日 13時38分41秒 | 第194回臨時国会(国難突破冒頭解散2017年9月)


 正直、あきれました。

 働き方改革実行計画による労働法制改正関連法案のうち、今後の処理が注目されていた

 「労働基準法第14条など改正案」(189閣法69号)は、政府が撤回し、新しい法案を次の第194回国会に出し直すことになりそうです。

 これは、連合の神津会長(基幹労連)が、安倍首相にあって、申し入れるようで各紙が報じて、きょう、平成29年2017年7月12日の朝日新聞は1面トップ(「残業代ゼロ」政府案修正へ 連合の要請を反映)で報じました。

 年間の休日数や、勤務間インターバルの規制をいくつか盛り込むようで、そのかわり、神津会長は法案成立を受け入れるのでしょう。

 当ブログ内の過去記事を見ていて、一つ参考になる面がありました。きょねんの通常国会冒頭の記事(参議院民主党「労働基準法改正案、廃案にしましょう」)中、情報労連組織内議員が「この法案の働き過ぎ防止策は我々も賛同できるんです」と語っていました。私はこれを法案廃案に本気である証拠だととらえ、2016年5月に「

労働基準法改正案いわゆる残業代ゼロ法案は審議入りせず第191回国会以降に先送り

」、きょねん末には「

民進党・共産党の勝利、労働基準法改正案(残業代ゼロ法案)は審議入りしないまま、2度目の年越しへ

 と書きました。

 この間、神津さんは、不可解な言動を繰り返しました。昨年1月には、当時の民主党大会で、「フィリピンを訪問した天皇陛下への平和への思いを共有すべきだ」という趣旨の挨拶をして、太平洋戦争時の皇太子を持ち上げました。民進党が議席倍増を実現した、第24回参院選。直前に、比例代表統一名簿の政治団体設立を岡田克也代表に要請。選挙では、出身産別の基幹労連元職が落選。直後の都知事選での敗北の原因を、なぜか岡田代表に求めた挙句、蓮舫さんをネクスト首相に据えれば政権交代が実現する、と本気で考えたようです。連合史上とびぬけて最低最悪の会長であり、その座を近く追われることになりました。ほんとうに、ひどすぎる。

 労働基準法第14条は、「労働基準法第14条第1号及び第2号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」という省令改正で、すべて定義がかえられます。改正法律案が成立してしまえば、年収要件を半分にしたり、税理士を加えたり、いくらでも変えられます。これを私は、「大学商学部卒で、経理部に5年いたら、高度プロフェッショナルとされ、残業代ゼロになるかもしれない」という例にしています。法律が成立したら、その後、1回の省令改正で、そういう近未来も可能です。

 きのう、たまたま、ハローワークに行きました。10年ぶりでしたが、求職者数は20代男性や中年女性に限られていました。求人票は、フルタイムも、パートも、たっぷりありました。まさに完全雇用が実現している証左です。ただ、パートの求人票は、私の所だと、東京都か埼玉県かすぐにわかります。ほとんどが最低賃金の時給なので、県別最賃で、どちらの県かすぐにわかります。もちろん、広告デザインで時給1200円、という仕事も出ていますから、アベノミクスと団塊退職の成果が出ていることは間違いない事実。改悪労働者派遣法施行から1年10カ月ということもあるのでしょうが、同じ会社のフルタイムとパートで、職務の違いが不明確な場合も。パートの方に、英語力を求めておきながら、フルタイムの給料(平均月給で表現)、パートの給料(時給で表現)の違いが不明確で、やはり、改悪労働者派遣法で、パートをフルタイムに置き換える、常用代替が実現していることは確実。アベノミクスの恩恵に浴しながらも、給料は安い、という労働市場が浮かび上がりました。

 「骨太の方針2017」にも労働基準法改正案の成立による、高度プロフェッショナルの充実は含まれましたから、(

【高プロ】自民党は高プロをあきらめない、労働基準法14条改正法案は、第193回通常国会で廃案も骨太の方針2017で「高度プロフェッショナル法案成立」を書き加え【追記有】

)、自民党が衆参単独過半数の秋の臨時国会で、強行してくることは間違いなさそうです。

 そこで、連合が名を捨て実をとったのでしょうが、一連の法案が秋の臨時国会で長時間審議のうえ、最終的には成立する公算が極めて高くなりました。

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自民党憲法改正案を、第194回臨時国会に提出へ 産経新聞社の講演で、安倍首相(自民党総裁)が明言

2017年06月24日 18時35分58秒 | 第194回臨時国会(国難突破冒頭解散2017年9月)

 報道によると、安倍晋三首相(自民党総裁)は、平成29年2017年6月24日(土)、兵庫県内で、産経新聞社が運営する「神戸正論懇話会」で講演し、

 「来るべき臨時国会が終わる前に、衆参両院の憲法審査会に自民党の案を提出したい」

 と語り、第194回臨時国会中に、憲法改正案を国会に提出する日程感を示しました。

 同時に、平成29年2017年の秋の臨時国会が開かれることが確定的になりました。改憲案を今年中に提出し、来年の通常国会で、両院の発議につなげた場合、国民投票は60日ないし180日。このため、例えば、「国民投票→総裁選→総選挙」のように、これまで想定していなかった、2018年の3つの選挙の日程の組み合わせが自由自在になることも意味しています。

 安倍さんは、「自衛隊を憲法にしっかりと位置付け、『合憲か違憲か』という議論は終わりにしなければならない」、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」とも語りました。

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第194回臨時国会召集要求書を提出 民進党、共産党など野党幹事長

2017年06月22日 19時42分16秒 | 第194回臨時国会(国難突破冒頭解散2017年9月)

[写真]川端達夫・衆議院副議長(右)に、臨時国会召集要求書を提出する野党幹事長ら、2017年6月22日、国会内、筆者・宮崎信行撮影。

 民進党、共産党など野党代表らは、平成29年2017年6月22日(木)、「臨時国会召集要求書」を、川端達夫・衆議院副議長、郡司彰・参議院副議長に提出しました。

 要求書は、臨時国会を召集する権限がある、安倍晋三首相(自民党総裁)宛で、(衆では)「安住淳ほか119名」が要請する内容となっています。

 野党幹事長らは、「先の通常国会において安倍政権は、森友学園・加計学園疑惑に関する説明責任を全く果たそうと」しなかったとし、「疑惑の真相解明に取り組むことが不可欠である」としました。

 野田佳彦・民進党幹事長はこれに先立つ幹事長・書記局長会談で、「来週に、官邸に赴いて安倍首相に直接要請する」としました。官邸に乗り込むとなると、異例の展開になります。

第194回臨時国会召集要求書を提出、野党4党幹事長会談 20170622 宮崎信行撮影

 ただ、野党内の、東京留守番ベテラン秘書らは、召集要求書を出しても内閣の返答の期限が無く、森友・加計問題の疑惑追及は衆参予算委員会の閉会中審査を1回ずつ開いて終わりではないか、との見立てを示しました。また、9月頃に、この要求書のもとづき、臨時国会を開き、冒頭解散というパターンは確率は極めて低いけれども、ゼロではありません。いずれにせよ、あす告示の都議選では、演説の材料に使えるので、良い動きではないか、との冷静な受け止め方が支配的でした。

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「商法ひらがな化法案」と「人事訴訟法改正案」は第193回国会の審議は無く、第194回国会に継続

2017年06月16日 09時08分58秒 | 第194回臨時国会(国難突破冒頭解散2017年9月)

 衆議院法務委員会は、第193回通常国会の実質会期末となった平成29年2017年6月16日(金)

 「商法を改正して、ひらがな化し、国際海上物品輸送規定などを追加する法案」(192閣法16号)

 と

 「人事訴訟法改正案」(190閣法33号)を第194回秋の臨時国会に継続審査(閉会中審査)とすることを、全会一致で決めました。

 人事訴訟法改正案は、きょねん2月に、商法改正案は、きょねん10月に国会に提出されましたが、審議入りせず、先送りすることになりました。

 また、同委員会では、例年通り、「裁判所の物的人的充実を求める請願」が採択されました。

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「ギャンブル等依存症対策基本法案」自民党が第193回国会に提出、秋の第194回国会で審議

2017年06月13日 16時41分25秒 | 第194回臨時国会(国難突破冒頭解散2017年9月)

(2017年7月18日に投稿、しばらくした後、6月13日付にバックデート)

[写真]参議院本会議場のひな壇(閣僚席)、2017年5月、筆者・宮崎信行撮影=写真と本文は関係ありません=。
 
 自民党は「ギャンブル等依存症対策基本法案」(193衆法24号)を、平成29年2017年6月13日(火)、衆議院に提出しました。第193回通常国会では内閣委員会で閉会中審査を決めて、いったん議長に戻りました。秋の第194回臨時国会で、政府提出の「IRカジノ施設実施法案」(194閣法 号)と一体的に審議されるとみられます。

 依存症対策基本法案は、教育、医療、相談体制、社会復帰など政府の法制上の措置などについて、義務規定を置きました。

 私が法案で注目したのは、第2条「この法律において「ギャンブル等依存症」とは、ギャンブル等(法律の定めるところにより行われる公営競技、ぱちんこ屋に係る遊技その他の射幸行為をいう。七において同じ。)にのめり込むことにより日常生活又は社会生活に支障が生じている状態をいうこと」。

 定義規定の「ギャンブル等」に「ぱちんこ屋(パチンコ屋に係る遊戯)」がに含まれました。パチンコ、パチスロが「ギャンブル等」に定義されたといえます。

 いっしゅん、これは好ましいことに思えます。パチンコは「遊戯」の定義でした。逆に考えると、IR実施法により、パチンコ・パチスロが「ギャンブル等」に定義され、現金を景品に出せるようになるのではないかともみられます。うがちすぎかもしれませんが、秋の臨時国会では関心を持ちたいところです。

 法律の施行日は公布日と書き込まれ、5年後の見直し規定が入りました。これも、再改正によって、統合リゾートではない、単体のパチンコ店が、合法ギャンブル(刑法の特例としてのギャンブル)になるかもしれないので、注意したいところです。

 一方我が国のギャンブル(中央競馬、地方競馬、競艇、競輪、オートレース、パチンコ・パチスロ)について、

 「ギャンブル等依存症が、多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の問題に密接に関連する」

 「アルコール、薬物等に対する依存に関する施策との有機的な連携が必要」

 との認識が法文上に書き込まれました。

 海外のギャンブル(カジノ、バカラ、スロットなど)は富裕層がするもの、我が国のギャンブル(中央・地方競馬、競艇、競輪、オートレース)は貧困層がするもの、という違いが、法文からも透けて見えます。

 対をなす、IR実施法案ですが、現行のIRカジノ施設法の立てつけでは、12月前後の提出でもいいことから、秋の臨時国会の冒頭には提出されない公算もあります。また、今回のギャンブル等依存症対策基本法案は、与野党の修正協議で、一本化した別の法案がでるかもしれません。

 秋の臨時国会は、9月の召集が予想されています。

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労働基準法36条改正法案の、第194回臨時国会提出を強調か 労政審も上限規制 6月5日に決定へ

2017年06月05日 23時59分08秒 | 第194回臨時国会(国難突破冒頭解散2017年9月)

(6月1日投稿で、5日付にフォワードデート)

 「労働基準法第36条改正案」について、労政審は「厚生労働省において、スピード感を持って、労働基準法の改正をはじめ所要の措置を講ずることが適当である」としました。

 労働政策審議会労働条件分科会は、その第135回会合を、平成29年2017年5月30日(火)に開き、「時間外労働の上限規制等について(報告)」の案をまとめました。6月5日(月)に決定。


 官邸におかれている、働き方改革実現会議がまとめた、「働き方改革実行計画」を受けて、検討をしてきました。

 主導権を完全に官邸に奪われた、厚労省ですが、報告案では、労基法第36条裁量労働制の時間外労働時間の上限として、

(1)「休日労働を含め、2か月ないし6か月平均で80時間以内」
(2)「休日労働を含み単月で100時間未満」
(3)「原則である月45時間の時間外労働を上回る回数は年6回まで」

 の3要件を提示しました。
 この違反には「罰則を課すことが適当である」としました。ただ、労働法は民法の特別法であり、刑事法ではないため、労基法の罰則規定(第13章の第117条から第120条)は、36条については「使用者」が対象となるため、個人が逮捕されることにはならず、効果は限定的です。

 上記内容は働き方改革実行計画と大きな違いはありませんが、労政審は「自動者の運転業務」「建設事業」「新技術・新商品等の研究開発の業務」「厚生労働省労働基準局長が指定する業務」「医師」の5業務について、各々の、検討課題を提示しました。

 報告案は、このほか、退勤から出勤までの勤務間インターバル規制について、「努力義務」としました。

 医師による面接指導は「省令改正」、労働時間の客観的な把握は「通達」で対応するというものにとどまりました。

 全体的には迫力不足。官邸の実行会議も、法案提出の日程感が、どんどん遅れています。労政審のメンバーは秋の臨時国会に提出させろ、との意思があるようです。受動喫煙禁止法案などどうでもよくて、労基法改正案を速やかに国会に提出すべし。

三六協定(さぶろくきょうてい)は労働基準法36条の改正案が必要、上限規制で、厚労省検討会がとりまとめ、今後は官邸の働き方改革実現会議が主導の見通し

2017年01月24日 06時19分26秒 | 第193回通常国会(2017年1月から)


同一労働同一賃金法案の提出が、2017年後半以降にずれこみそう加藤働き方改革相NHK日曜討論【追記有】

2016年08月28日 10時48分36秒 | 第193回通常国会(2017年1月から)


パートタイム労働法・労働契約法・労働者派遣法・労働基準法の改正案、2017年秋以降提出へ 働き方改革実行計画

2017年03月28日 19時22分46秒 | 第194回2017年秋以降


厚生労働省ホームページから全文引用はじめ]

時間外労働の上限規制等について(報告案)

時間外労働の上限規制等については、「働き方改革実行計画」(平成 29 年3月 28 日働き方
改革実現会議決定)を踏まえ、労働政策審議会労働条件分科会において、同年4月7日以降
●回にわたり検討を行い、精力的に議論を深めてきたところである。
人口減少社会を迎えた我が国において、経済の再生、「成長と分配の好循環」を実現する
ためには、投資やイノベーションの促進を通じた付加価値生産性の向上と併せ、労働参加率
の向上を図る必要があり、そのためには、誰もが生きがいを持って、その能力を最大限発揮
できる一億総活躍社会を実現することが必要である。
ところが、我が国の労働時間の状況をみると、この 20 年間で、一般労働者の年間総実労
働時間が 2000 時間を上回る水準で推移し、雇用者のうち週労働時間 60 時間以上の者の割合
は低下傾向にあるものの 7.7%と平成 32 年時点の政労使目標である5%を上回っており、
特に 30 歳代男性では 14.7%となっている。また、平成 27 年度の脳・心臓疾患による労災
支給決定件数は 251 件(うち死亡の決定件数は 96 件)、精神障害による労災支給決定件数は
472 件(うち未遂を含む自殺の決定件数は 93 件)となっている。
長時間労働は、健康の確保だけでなく、仕事と家庭生活との両立を困難にし、少子化の原
因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因になっている。「過労死
等ゼロ」を実現するとともに、マンアワー当たりの生産性を上げつつ、ワーク・ライフ・バ
ランスを改善し、女性や高齢者が働きやすい社会に変えていくため、長時間労働の是正は喫
緊の課題である。
このような考え方に基づき、当分科会において検討を行った結果は、下記のとおりである。
この報告を受けて、厚生労働省において、スピード感を持って、労働基準法等の改正をは
じめ所要の措置を講ずることが適当である。
なお、働き方改革の実現に向けては、改革の基本的な考え方と進め方を示し、そのモメン
タムを絶やすことなく、長期的かつ継続的に取組を進めていくことが必要である。このため、
「働き方改革実行計画」を踏まえ、改革全般にわたり、法制面も含め、その目的達成のため
の政策手段について、引き続き検討を行っていくことが求められる。

1 時間外労働の上限規制
資料 No.1
時間外労働の上限規制については、以下の法制度の整備を行うことが適当である。
(1) 上限規制の基本的枠組み
現行の時間外限度基準告示を法律に格上げし、罰則による強制力を持たせるととも
に、従来、上限無く時間外労働が可能となっていた臨時的な特別の事情がある場合と
して労使が合意した場合であっても、上回ることのできない上限を設定することが適
当である。
・ 時間外労働の上限規制は、現行の時間外限度基準告示のとおり、労働基準法に規
定する法定労働時間を超える時間に対して適用されるものとし、上限は原則として
月 45 時間、かつ、年 360 時間とすることが適当である。かつ、この上限に対する違
反には、以下の特例の場合を除いて罰則を課すことが適当である。また、一年単位
の変形労働時間制(3か月を超える期間を対象期間として定める場合に限る。以下
同じ。)にあっては、あらかじめ業務の繁閑を見込んで労働時間を配分することによ
り、突発的なものを除き恒常的な時間外労働はないことを前提とした制度の趣旨に
鑑み、上限は原則として月 42 時間、かつ、年 320 時間とすることが適当である。
・ 上記を原則としつつ、特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使
が合意して労使協定を結ぶ場合においても上回ることができない時間外労働時間を
年 720 時間と規定することが適当である。
かつ、年 720 時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低
限、上回ることのできない上限として、
① 休日労働を含み、2か月ないし6か月平均で 80 時間以内
② 休日労働を含み、単月で 100 時間未満
③ 原則である月 45 時間(一年単位の変形労働時間制の場合は 42 時間)の時間外
労働を上回る回数は、年6回まで
とすることが適当である。なお、原則である月 45 時間の上限には休日労働を含まな
いことから、①及び②については、特例を活用しない月においても適用されるもの
とすることが適当である。
・ 現行の 36 協定は、省令により「1日」及び「1日を超える一定の期間」について
の延長時間が必要的記載事項とされ、「1日を超える一定の期間」は時間外限度基準
告示で「1日を超え3か月以内の期間及び1年間」としなければならないと定めら
れている。今回、月 45 時間(一年単位の変形労働時間制の場合は 42 時間)、かつ、
年 360 時間(一年単位の変形労働時間制の場合は 320 時間)の原則的上限を法定す
る趣旨を踏まえ、「1日を超える一定の期間」は「1か月及び1年間」に限ることと
し、その旨省令に規定することが適当である。併せて、省令で定める協定の様式に
おいて1年間の上限を適用する期間の起算点を明確化することが適当である。
(2) 現行の適用除外等の取扱い
現行の時間外限度基準告示では、①自動車の運転の業務、②工作物の建設等の事業、

③新技術、新商品等の研究開発の業務、④季節的要因等により事業活動若しくは業務
量の変動が著しい事業若しくは業務又は公益上の必要により集中的な作業が必要とさ
れる業務として厚生労働省労働基準局長が指定するもの、が適用除外とされている。
これらの事業・業務については、働く人の視点に立って働き方改革を進める方向性を
共有したうえで、実態を踏まえて、以下のとおりの取扱いとすることが適当である。
① 自動車の運転業務
・ 自動車の運転業務については、罰則付きの時間外労働規制の適用除外とせず、改
正法の一般則の施行期日の5年後に、年 960 時間以内の規制を適用することとし、
かつ、将来的には一般則の適用を目指す旨の規定を設けることが適当である。また、
5年後の施行に向けて、荷主を含めた関係者で構成する協議会で労働時間の短縮策
を検討するなど、長時間労働を是正するための環境整備を強力に推進することが適
当である。
・ この場合でも、時間外労働の上限は原則として月 45 時間、かつ、年 360 時間であ
ることに鑑み、これに近づける努力が重要である。
② 建設事業
・ 建設事業については、罰則付きの時間外労働規制の適用除外とせず、改正法の一
般則の施行期日の5年後に、罰則付き上限規制の一般則を適用することが適当であ
る。ただし、復旧・復興の場合については、単月で 100 時間未満、2か月ないし6
か月の平均で 80 時間以内の条件は適用しないが、併せて、将来的には一般則の適用
を目指す旨の規定を設けることが適当である。また、5年後の施行に向けて、発注
者を含めた関係者で構成する協議会を設置するなど、必要な環境整備を進めるとと
もに、労働時間の段階的な短縮に向けた取組を強力に推進することが適当である。
・ この場合でも、時間外労働の上限は原則として月 45 時間、かつ、年 360 時間であ
ることに鑑み、これに近づける努力が重要である。
③ 新技術、新商品等の研究開発の業務
・ 新技術、新商品等の研究開発の業務については、専門的、科学的な知識、技術を
有する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務の特殊性が存在する。この
ため、現行制度で対象となっている範囲を超えた職種に拡大することのないよう、
その対象を明確化した上で適用除外とすることが適当である。
・ その際、当該業務に従事する労働者の健康確保措置として、1週間当たり 40 時間
を超えて労働させた場合のその超えた時間が1か月当たり 100 時間を超えた者に対
し、医師による面接指導の実施を労働安全衛生法上義務づけることが適当である。
この面接指導の確実な履行を確保する観点から、上記の義務違反に対しては罰則を
課すことが適当である。
また、上記の面接指導の結果を踏まえた健康を保持するために必要な事後措置の

実施を労働安全衛生法上義務づけるとともに、当該事後措置の内容に代替休暇の付
与を位置づけることが適当である。
④ 厚生労働省労働基準局長が指定する業務
・ 季節的要因等により事業活動若しくは業務量の変動が著しい事業若しくは業務又
は公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務として厚生労働省労働基準
局長が指定するものについては、原則として罰則付き上限規制の一般則を適用する
ことが適当であるが、業務の特殊性から直ちに適用することが難しいものについて
は、その猶予について更に検討することが適当である。
⑤ 医師
・ 医師については、時間外労働規制の対象とするが、医師法第 19 条第1項に基づく
応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要である。具体的には、改正法の施行期日
の5年後を目途に規制を適用することとし、医療界の参加の下で検討の場を設け、
質の高い新たな医療と医療現場の新たな働き方の実現を目指し、2年後を目途に規
制の具体的な在り方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得ることが適当
である。
(3) 労働基準法に基づく新たな指針
・ 可能な限り労働時間の延長を短くするため、新たに労働基準法に指針を定める規
定を設け、行政官庁は、当該指針に関し、使用者及び労働組合等に対し、必要な助
言・指導を行えるようにすることが適当である。
・ 当該指針には、特例による労働時間の延長をできる限り短くするよう努めなけれ
ばならない旨を規定するとともに、併せて、休日労働も可能な限り抑制するよう努
めなければならない旨を規定することが適当である。
・ また、36 協定の必要的記載事項として、原則の上限を超えて労働した労働者に講
ずる健康確保措置を定めなければならないことを省令に位置づけたうえで、当該健
康確保措置として望ましい内容を指針に規定することが適当である。その内容は、
企画業務型裁量労働制対象者に講ずる健康確保措置として労働基準法第 38 条の4
の規定に基づく指針に列挙された内容(代償休日又は特別な休暇の付与、健康診断
の実施、連続した年次有給休暇の取得促進、心とからだの相談窓口の設置、配置転
換、産業医の助言指導に基づく保健指導)を基本として、長時間労働を行った場合
の面接指導、深夜業の回数の制限、勤務間インターバル等を追加することが適当で
ある。
・ さらに、現行の時間外限度基準告示には、①限度時間を超える時間の労働に係る
割増賃金率を定めるに当たっては、法定の割増率を超える率とするように努めなけ
ればならないこと、②労働時間を延長する必要のある業務区分を細分化することが
規定されており、これらは指針に改めて規定することが適当である。

2 勤務間インターバル
勤務間インターバルについては、労働者が十分な生活時間や睡眠時間を確保し、ワー
ク・ライフ・バランスを保ちながら働き続けることを可能にする制度であり、その普及促
進を図る必要がある。
このため、労働時間等設定改善法第2条(事業主等の責務)を改正し、事業者は、前日
の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない旨の
努力義務を課すとともに、その周知徹底を図ることが適当である。その上で、平成 27 年
2月 13 日の当分科会報告にあるように、同法に基づく指針に、労働者の健康確保の観点
から、新たに「終業時刻及び始業時刻」の項目を設け、「前日の終業時刻と翌日の始業時
刻の間に一定時間の休息時間を確保すること(勤務間インターバル)は、労働者の健康確
保に資するものであることから、労使で導入に向けた具体的な方策を検討すること」等を
追加することが適当である。
3 長時間労働に対する健康確保措置
過重な労働により脳・心臓疾患等の発症のリスクが高い状況にある労働者を見逃さない
ため、労働者の健康管理を強化することが適当である。
(1) 医師による面接指導
・ このため、長時間労働に対する健康確保措置として、労働安全衛生法第 66 条の8
の面接指導について、現行では、1週間当たり 40 時間を超えて労働させた場合のそ
の超えた時間が1か月当たり 100 時間を超えた者から申出があった場合に義務とな
っているが、この時間数を定めている省令を改正し、1か月当たり 80 時間超とする
ことが適当である。
(2) 労働時間の客観的な把握
・ また、上記の面接指導(1(2)③の面接指導を含む。)の適切な実施を図るため、
平成 27 年2月 13 日の当分科会報告にあるように、管理監督者を含む、すべての労
働者を対象として、労働時間の把握について、客観的な方法その他適切な方法によ
らなければならない旨を省令に規定することが適当である。その際、客観的な方法
その他適切な方法の具体的内容については、「労働時間の適正な把握のために使用者
が講ずべき措置に関するガイドライン」を参考に、通達において明確化することが
適当である。
4 その他
(1) 法施行までの準備期間の確保
・ 中小企業を含め、急激な変化による弊害を避けるため、十分な法施行までの準備
時間を確保することが必要である。その上で、施行期日については、事業運営や労
6
務管理が年度単位で行われることが一般的であることを考慮し、年度の初日からと
することが適当であり、この点を踏まえ、具体的な期日を検討すべきである。
(2) 上限規制の履行確保の徹底
罰則付きの時間外労働の上限規制を導入するに当たっては、その実効性を一層確保
する観点から、履行確保のための以下の事項についても、併せて措置することが適当
である。
① 過半数代表者
・ 過半数代表者の選出をめぐる課題を踏まえ、平成 27 年2月 13 日の当分科会報告
にあるように、「使用者の意向による選出」は手続違反に当たるなど通達の内容を
労働基準法施行規則に規定することが適当である。また、監督指導等により通達の
内容に沿った運用を徹底することが適当である。
・ 同分科会報告にあるように、使用者は、過半数代表者がその業務を円滑に遂行で
きるよう必要な配慮を行わなければならない旨を、規則に規定する方向で検討する
ことが適当である。
・ 労働基準関係法令が十分周知されていないことに伴う法令違反が依然として多数
みられることから、時間外・休日労働には36協定の締結及び届出が必要であること
や、協定の締結当事者である過半数代表者は法令等に基づき適正に選出される必要
があること等について、一層の周知徹底に取り組むことが適当である。また、使用
者は、36協定等を労働者に周知させなければならないとしている法の規定を踏まえ
対応するよう、徹底を図ることが適当である。
② 労働基準監督機関の体制整備
・ 時間外労働の上限規制の導入の前提として、36 協定の締結及び届出を行うことな
く時間外・休日労働を行わせている使用者に対する監督指導の徹底が強く求められ
る。このため、企業単位での監督指導の強化、地方運輸機関等の関係機関との連携
強化等を図りつつ、労働基準監督官の定員確保に努めることが適当である。
③ 電子申請の促進
・ 36協定の届出をはじめとする行政手続の簡素化・効率化を進めるためにも、電子
申請利用率を向上させる必要がある。このため、電子申請を行う場合にはすべから
く事業主の電子署名を必要としている現行の取組のうち、社会保険労務士の電子署
名による代理申請に際しては、事業主の電子署名については委任状の添付等により
省略できることについて、省令の改正を行う方向で検討を継続することが適当であ
る。
以 上

[全文引用おわり]
 


解雇の金銭解決を「労働契約解消金(仮称)」と定義づけるも、法改正には否定的 透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」報告書(案)

2017年05月30日 09時48分21秒 | 第194回臨時国会(国難突破冒頭解散2017年9月)

 厚生労働省労働基準局内に設けられた「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」

 は、2017年5月30日(月)の会議で最終とりまとめ案を提示し、次回の会合で最終決定することにしました。

 「労働契約解消金(仮称)」について、定義づけが多くのページを割いてなされました。

 この労働契約解消金という言葉は、私は聞いたことが無く、定番である「菅野和夫著 労働法」にも出てこないようです。解雇の金銭解決を、労働契約解消金と呼ぶことにしたようです。ただ、とりまとめ案を読むと、裁判で、解雇の無効などの地位確認とあわせて実現すべきだとの声が労使とも多い「解雇の事後の金銭解決」と、安倍自民党官邸で、企業経営者が提唱した「解雇の事前の金銭解決」が混在しているように感じます。とりまとめは、この「労働契約解消金」について、その必要性は認めながらも、一定の計算基準を設けるのは難しい、改正民法債権編(来月公布)の施行状況を見極めるべきだとの声が出ており、法改正には慎重、先送りの方向性となりそうです。

 上記とりまとめ案から、該当部分を以下に引用します。長文になります。

透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会の、最終報告案から抜粋引用はじめ]

(イ)労働者が金銭の支払を請求する権利

a 権利の発生要件
労働者が金銭(それが支払われることによって労働契約が終了する効果を伴
うもの。以下「労働契約解消金」(仮称)という。)の支払を請求できる権利(以
下「金銭救済請求権」という。)の発生要件については、後述の権利の法的性
質にもよるが、例えば、①解雇がなされていること、②当該解雇が客観的合理
的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないこと(解雇権濫用法理)
(※)、③労働者から使用者に対し、労働契約解消金の支払を求めていること
といったことが考えられる。
※ 労働契約法第 16 条の要件に加えて、禁止解雇を対象とする場合については、例えば
「労働基準法等の法律によって禁止されている解雇と認められること」という要件も含
むよう設定することが考えられる。
b 権利の法的性質
(a)金銭救済請求権の法的性質については、労働契約解消金の支払請求後の取
り下げができない仕組みと位置付けること(形成権的構成)が考えられるほ
か、取り下げができる仕組みと位置付けること(請求権的構成)も考えられ
る。
※ 一度提起した訴えを取りやめることを民事訴訟上「取り下げ」というが、ここでは、
労働者が労働契約解消金を請求した後、何らかの理由で翻意した場合等にその請求を
取りやめることをいう。
(b)これについては、
・ 解雇を不当と考えた労働者が、地位確認等の選択肢を考えることなく使
用者に対して金銭を請求した場合であっても、取り下げができないまま、
金銭が支払われたときに労働契約が終了することとなり、労働者保護に欠
けることから、取り下げができる仕組みとするべきという意見があったが、
・ これに対しては、そうした仕組みとした場合、
➢ 「現に継続して労働者が一定額の金銭の支払を求めていること」を要
件とすると、金銭の支払を求めている間は権利があるが、その後求める
意向がなくなっている期間があればその間は権利が喪失するというよ
うに、権利関係が不安定になり
➢ 「金銭の支払を求めたこと」を要件とすると、取り下げを認めない仕
組みとした場合と同様の課題が生じ得る
17
➢ 労働者が十分な情報を得て熟慮したうえで金銭救済請求権を行使す
る必要がある
等の意見があり、権利関係の早期安定の観点からは、支払請求後の取り下げ
ができない仕組みとすることが考えられる。なお、この点については、様々
な選択肢について更に検討すべきとの意見もあった。
(c)その上で、そうした仕組みとした場合の課題については、
・ 労働者による慎重な権利行使を求める観点から、裁判上でのみ権利行使
できるものとして設計すべきであり、権利行使を裁判上に限れば労働審判
制度への影響も少ない
・ 広く国民に利用してもらうという今回の制度趣旨に鑑みると、裁判上の
請求に限ることは望ましくなく、また、裁判外の請求は、当該解雇が客観
的合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないこと(解雇
権濫用法理)との要件があるためそもそも事実上それほど行使されない可
能性があることも踏まえると、裁判上の請求に限る必要性も高くはない
・ 労働審判は当事者間の権利関係を確認して行うものであり、この金銭請
求の権利の行使を裁判上の請求に限ると、労働審判では行使できなくなる
ことから、裁判上に限るのは適当でなく、書面により請求することに限る
ような方策を考えるべき
等の意見があった。
(d)労働契約解消金の支払請求後の取り下げができない仕組みとした場合の課
題への対応については、権利行使を裁判上での請求や書面など一定の形式に
よる請求に限ることから、権利行使についての周知広報によって対応するこ
とまで、様々な選択肢が考え得るが、労働者保護を図る観点から、どのよう
な対応が望ましいか、引き続き、議論を深めることが考えられる。
※ このほか、例えば、労働者が金銭救済請求を行ったときに、解雇した使用者が、解
雇の意思表示が無効であって労働者が労働契約上の地位を有することを自ら認めた
上で、労働者に対し労務提供を求めた場合において、
・ 労働者は使用者に引き続き金銭救済を求めることができるのか
・ 使用者が金銭支払を拒否して労働者に労務提供を求め、労働者が労務提供を拒
んだ場合、使用者は、労働者の労務提供拒否(債務不履行)を理由に再度解雇を
行うことが可能か
等の指摘もあった。
(ウ)使用者による金銭の支払及び労働契約の終了
a 金銭の性質
(a)労働契約解消金の構成
イ 労働契約解消金については、①職場復帰せずに労働契約を終了する代わり
18
に受け取る「解消対応部分」(+その他慰謝料的な「損害賠償的部分」)及び
②「バックペイ分」(解雇が無効な場合に民法(明治 29 年法律第 89 号)第
536 条第2項の規定に基づき発生する未払い賃金債権に相当するもの)とい
う要素が考えられる。
ロ 労働契約解消金は、このうち、解消対応部分(+損害賠償的部分)が基本
となるものと考えられる。
ハ バックペイ分については、
A 労働契約解消金には含めず、これまでと同様に民法第 536 条第2項に基
づき発生する未払い賃金債権として位置付ける
B 労働契約解消金に含める
という2つの構成の仕方が考えられる。
ニ このうち、Aについては、
・ 簡素でわかりやすい仕組みとすることを考えると、B案は非常に複雑な
設計になるため、A案のようにバックペイは従前どおりの扱いとする考え
方もあるのではないか
・ バックペイを含めない場合には、労働者がバックペイの支払を受けた後
に労働契約解消金を請求するという行動を取り、紛争が長期化するといっ
た懸念がある
・ バックペイを含めないこととした場合には、労働契約解消金請求訴訟と
は別にバックペイ請求訴訟を提起することが可能であり、紛争の一回的解
決の観点からは裁判所の審理上の工夫として弁論を併合するといったこ
とが考えられる
等の意見があった。
ホ 一方、Bについては、
・ 現状では、解雇無効を争う場合には、一般的に和解でもバックペイを考
慮しており、例3の仕組みによる金銭救済制度でも労働契約解消金にバッ
クペイを含めて考えるのは当然
・ バックペイは裁判が長引くほど積み上がっていく性質のものであり、金
銭水準の予見可能性の観点から問題がある
・ バックペイを含めるとすると、労働者の再就職に対するインセンティブ
が阻害され、不適当
等の意見があった。
ヘ また、Aについてはバックペイ分が含まれず、別途未払賃金が請求される
ため、労働契約解消金に係る判決確定後に訴訟が蒸し返され紛争が長期化す
る可能性があり、Bであってもバックペイ分のうち「相当額」が含まれるに
留まる、又は「全額」を含めて上限を設定する場合には、別途、残余のバッ
クペイに係る請求が行われる可能性があって、いずれも紛争の迅速な解決の
観点からは問題があることから、Bのうちバックペイ分を全額含める構成と
19
することが適当との意見もあった。
ト これとは別に、欧州諸国においては、バックペイを考慮せずに解決金額を
算定している国もあり、裁判の長期化や申立の遅れ等によりバックペイ額が
膨らむ可能性があることも考慮すると、予見可能性の観点からも、解雇時に
労働契約が終了することと整理した上で、労働契約解消金は解消対応部分
(+損害賠償的部分)のみによって構成されることとし、バックペイを考え
るべき事案であれば考慮要素として勘案すべきといった意見もあった。
チ こうした意見を踏まえ、労働者の保護を図りつつ、紛争の迅速な解決に資
する観点から、どのような整理とすることが適当か、引き続き、議論を深め
ることが考えられる。
(b)バックペイの発生期間
イ バックペイについては、使用者による解雇が解雇権濫用等により無効であ
る場合、民法第 536 条第 2 項の規定に基づき、使用者の責に帰すべき事由に
よって労働することができなかった期間に係る未払い賃金債権が発生する
こととなるが、使用者の責に帰すべき事由によって労働することができない
と認められるには、労働者が就労の意思を有していることが必要と考えられ
る。
ロ 例3の仕組みによる金銭救済制度において、この就労の意思が認められ、
バックペイが発生する期間をどのように考えるかについては、
・ 労働契約解消金の支払時点まで労働者は就労の意思を有しており、解雇
時点から労働契約解消金の支払によって労働契約が終了するまでの間バ
ックペイが発生するとする考え方と、
・ 金銭救済請求権を行使した後は基本的には就労の意思が失われており、
解雇時点から労働契約解消金の支払を請求するまでの間バックペイが発
生するとする考え方
という複数の考え方があり得る。
ハ これについては、バックペイは、民法第 536 条第2項に基づき支払われる
ものであることを基本としつつ、例3の仕組みによる金銭救済制度における
労働契約解消金の中にバックペイをどのように位置付けるか、労働契約の終
了との関係等によってその発生期間が定まってくるものであることから、労
働契約解消金の性質等を踏まえ、引き続き、議論を深めることが考えられる。
ニ なお、これについては、
・ 労働者の救済の観点からは、金銭が支払われて初めて労働契約は終了
し、労働者の就労の意思もなくなったとするべきであり、解雇から金銭
支払い時までは未払いの賃金が認められてしかるべき
・ バックペイについては、「解雇から判決時」または「解雇から金銭支払
時」まで認めるとなると、裁判が長引くほど解決金額が増大することが
懸念されるが、迅速に解決する制度とすることが労使双方にとってメリ
20
ットがあるため、バックペイの発生期間については、「解雇から金銭請求
時」までとすることが適当
等の意見があった。
b 労働契約の終了
(a)労働契約解消金の支払により労働契約が終了する根拠は、合意等による労
働契約の終了とは異なり、実定法に新たな契約の終了事由が規定されること
によるものと考えられる。
(b)例3の仕組みによる金銭救済制度において解雇権濫用法理と同様の要件や、
当該解雇が法律で禁止されていること等解雇等が無効となる要件を課すの
であれば、労働契約解消金請求訴訟においてもそれらの要件該当性が問題と
なり、要件該当性が認められた場合には、客観的には解雇が無効である場合
と同様の状況にあることが確認されるため、解雇後も労働契約が存続してい
ると解される。
(c)このため、例3の仕組みによる金銭救済制度において、労働契約が終了す
る時点をどのように考えるかについては、
・ 労働審判や和解においては、解雇時点に遡って契約が終了するとするの
が一般的との意見もあったが、
・ これに対しては、
➢ 労働契約の終了時点が解雇時点まで遡るとすれば、それは限りなく事
前型に近くなる
➢ 労働者保護の観点からは、金銭が支払われた時点で労働契約が終了す
るとすることが穏当
等の意見があった。
(d)こうした意見を踏まえ、労働者保護を図るとともに、原職復帰に代えて使
用者からの金銭の支払を求めるという金銭救済制度の趣旨に鑑みれば、使用
者から労働者に対して労働契約解消金が支払われた場合に、労働契約が終了
することとすることが考えられる。
※ 分割払い等により労働契約解消金の一部しか支払われなかった場合には、契約は終
了していないと考えられる。
(エ)労働契約解消金請求訴訟と他の訴訟との関係
a 労働契約解消金請求訴訟と他の解雇に関係する訴訟(地位確認訴訟や解雇を
不法行為とする損害賠償請求訴訟等)との関係については、労働契約解消金の
性質にもよるが、訴訟物が異なると整理できる場合には、二重起訴には該当し
ない(却下されることなく、内容審理が行われる)と解されることとなり、併
合して訴訟を提起することも可能になり得ると考えられる。
b なお、この点については、
・ 労働契約解消金請求権と地位確認請求権の訴訟物が異なると整理した上で、
21
訴訟が錯綜する制度になってしまうという点をどのように考えたらいいの

・ 地位確認訴訟の途中で労働契約解消金請求権を行使することや、労働契約
解消金請求権で裁判を提起したけれども、途中から地位確認訴訟を追加的に
訴えることができるのかといった問題について、どのように考えるか
・ 金銭支払の判決が出た後に使用者側が金銭を支払わないと、労働者は地位
確認請求に乗り換えることも想定されるが、撤回が問題になるということは、
一度労働契約解消金請求を行った場合、改めて地位確認請求はできないので
はないか
といった懸念点が示された。
(オ)金銭的予見可能性を高める方策
a 金銭的予見可能性を高める方策の在り方
(a)労働契約解消金の予見可能性については、
・ 解雇の事案は多様であり、現在の実務では個別事案に応じて金額が決め
られていることから一概にルール化することは難しい
・ 労働者側には必ずしも金銭的予見可能性を高めてほしいというニーズは
ない。そうしたニーズは、いくら支払えば解雇できるのか、ということを
知りたい使用者側にあるのではないか
・ 金銭救済制度は判決によって解決金の金額が決まるものであるが、金銭
の考慮要素は多様であるから、上下限をはめることは不可能であり、労使
合意によって決めざるを得ないのではないか
等の意見があったが、これに対しては、
・ 紛争当事者である労働者や使用者にわかりやすい形で金銭的予見可能性
を高めるためにも何らかの枠が必要
・ 労働審判制度が事実上の金銭解決制度として有効に機能し始めているこ
とは事実だが、金銭解決の水準に大きなばらつきがあること、どの程度の
金銭解決になるかということが知られていないという意味で、当事者にと
っては予見可能性が低いという問題点があり、その意味で、金銭水準につ
いて何らかの基準を作るべき。透明、公正で迅速な解決が可能な仕組みと
なるためには、ある程度予測可能なルールの形成が必要
等の意見があった。このほか、問題は、金銭的予見可能性を高めるために、
何を犠牲にしなければならなくなるかということであり、この点の如何によ
り、導入が可能な規律の限界が定まることになるとの意見もあった。
(b)また、金銭的予見可能性を高める手法については、
・ 透明で公正な運営をしていくためにも上限、下限、ガイドラインなどの
設定が必要であり、ガイドラインには、勤続年数、年功賃金の程度、退職
金制度の状況なども考慮に入れる必要がある
22
・ 非常に低い金額で泣き寝入りしているような労働者を救うためには下限
額が必要
・ 現状、労働審判においても解決金額には幅があり、労働部がある裁判所
ばかりではないことからすれば、上下限がなければ裁判所も判断ができな
いと考えられるので、混乱を回避するためにも考慮要素に加えて上下限を
設定することが必要
・ 労働審判の解決金額に幅があるのは事案が多様であることに鑑みれば当
然であり、裁判所の判断が難しいからこそ、労使の審判員がいる
・ 労働契約解消金の金額の予見可能性という点では、類型的な考慮要素を
定めておくことは、権利の性質を明らかにするという意味でも必要だが、
金額に上限及び下限を定める方策については、場合によっては、本来考慮
すべき要素を切り捨てることにつながり得るものであり、「紛争の迅速な
解決を図る」ことに資することは事実としても、それだけでそうした規律
を正当化できるかについては、慎重な検討が必要
・ 下限については、労働者保護の最低限度を示すという説明が可能と思わ
れるが、上限については、本来認められるべき超過額部分を切り捨てる機
能を持ち得るのだとすれば、かかる権利の縮減を正当化するに足りる十分
に合理的な説明が要求される。上限については、原則は一定の上限が課せ
られるものとした上で、例えば、「前項に定める金額を超えないものとす
ることが、当事者間の衡平を著しく害することとなる特別の事情があると
きは、この限りでない」といった例外規定を設けることも1つの選択肢
・ 限度額を定めるとしても、上限を設けることは、金銭救済制度の利用を
抑制するため不適切
・ また、上限を定めると、使用者側としては解雇してもその程度の金銭を
支払えばよいのかというモチベーションが生じ、不当な解雇を誘発する可
能性もある
・ 解雇不当であることを認められた後に退職を希望した場合に、金銭で解
決するということであれば、希望退職制度において支払われる、会社都合
退職金+αというのが妥当であるため、希望退職制度類似の基準を設けれ
ば足りるものであり、それに上限、下限をつけるというのは少しおかしい
・ 金銭水準の算定根拠を明確にすることは賛同するが、解雇に至った背景、
労使の責任の度合い、企業の支払能力など個々の事情もあり、企業横断的
に一律に定めるのは難しいのではないか
との意見があった。
(c)紛争の迅速な解決を図るとともに、裁判等における金銭の算定について予
見可能性を高めることが重要であり、そのため、解消対応部分(+その他慰
謝料的な「損害賠償的部分」)については、上記の金銭の性質を踏まえ、一
定の考慮要素を含め、具体的な金銭水準の基準(上限、下限等)を設定する
23
ことが適当であると考えられる。この点については、今後の議論において、
事案は多様であり上限、下限等を含め金銭水準の基準を設定すべきではない
との意見や、上限設定は不当な解雇を誘発しかねないとの意見、本来考慮す
べき要素を切り捨てることにつながり得るとの意見があったことを斟酌す
ることが適当である。
(d)この場合、解消対応部分(+その他慰謝料的な「損害賠償的部分」)の考
慮要素としては、労働契約解消金の性質を踏まえ、年齢、勤続年数、解雇の
不当性の程度、精神的損害、再就職に要する期間等が考えられるが、その具
体的な内容やどこまで考慮要素を明示化するか等については、引き続き、議
論を深めることが考えられる。
(e)また、具体的な限度額については、
・ 現行の都道府県労働局におけるあっせん、労働審判及び民事訴訟におけ
る和解の解雇事案の金銭水準や、早期退職優遇制度及び希望退職制度にお
ける割増額の水準等を考慮して設定すべき
・ 下限の水準については、現行の労働紛争解決システムにおいて、解雇有
効の可能性が高い場合であっても、1~3か月という数字が出ていたので、
今後議論する際の目安になるのではないか
・ 今回の金銭救済制度は、解雇無効の場合のことを考えているので、その
金銭水準等を考える場合は、解雇有効と思われる場合での3か月は遥かに
超えるのではないか
・ 今回の金銭救済制度における労働契約解消金のうち解消対応部分は、解
雇無効という労働者に帰責性がない状況で労働契約を解消することの代
償であるから、早期退職優遇制度の割増額が参考となり、その平均値が
15.7 か月分であることから、例えば下限を6か月、上限を 24 か月とする
ような考え方があり得る
・ 労働契約解消金が高額になり過ぎると、中小企業で支払が難しくなり、
折角の制度が機能しなくなるおそれがあるため、中小企業の負担や雇用に
係るコストにも十分配慮したものとすべき
・ 金銭補償額は、賃金の半年分から1年半分の範囲内とし、裁判になった
場合は、裁判所が事案に応じて判断することとすべき
等の意見があったが、その具体的な内容については、引き続き、議論を深め
ることが考えられる。
(f)バックペイ分に限度額を設定するかについては、
・ 未払い賃金が支払われるのは当然であり、そこに上限を設けることは適
当でない
・ バックペイに限度額を入れると、長期化によるリスクが減少し、使用者
側が徹底的に争うため、審理が長期化するおそれが大きい
・ バックペイに限度額を設けない場合は、審理の長期化を招くことになり、
24
金銭的予見可能性という点からも問題があり、弊害が大きい
等の意見があり、労働者保護の観点からも限度額を設定しないこととするこ
とも考えられるが、引き続き、議論を深めることが考えられる。
b 労使合意等の取扱い
(a)法律等で考慮要素等を定めた場合でも、別途、労使合意等によって労働契
約解消金の水準に関するルールが定められた場合の取扱いをどのように考
えるかについては、
・ 法定の金銭水準はデフォルトとして、労使が集団的に合意した場合に、
それが裁判所を拘束するという考え方もある
・ 一律の限度額(上限・下限)を設けるとしても、労使合意により一定の
金銭水準を定めることができる余地を残すことで、柔軟性を持たせること
ができるのではないか。なお、その場合であっても下限を下回る水準は設
定できないこととすべき
・ 労働組合がない場合に労働者の代表が適切に選任されるのでなければ、
そのような仕組みは難しい
・ 労使協定または労働協約で労使があらかじめ労働契約解消金の水準を決
めておくということは現実的ではないと考える
・ 労働契約解消金について労使合意により定めるイメージが沸かないのは、
現時点でそのような制度がないから当然であり、仮に制度があれば、その
ような労働契約解消金の水準に関する団体交渉が行われるのではないか
等の意見があった。
(b)法律等で考慮要素等を定めた場合でも、企業の実情等に応じた柔軟な対応
を可能とするためには、別途、労使合意等によって別段の定めを置くことが
できることとすることも考えられるが、その場合、労使合意等の範囲をどう
考えるか、法定の水準との関係をどう考えるかといった課題があるため、引
き続き、議論を深めることが考えられる。
(カ)時間的予見可能性を高める方策
a 時間的予見可能性を高めるとともに、権利関係を早期に安定化させ、紛争の
迅速な解決を可能とするため、労働契約解消金の支払を請求することができる
権利に関する消滅時効の在り方について検討することが適当であると考えら
れる。なお、この点については、労働者の権利を制限する出訴期間制限のみを
議論するのでは、諸外国において使用者に対する様々な解雇制限があるのに比
して、バランスを欠くのではないかという意見があった。
b その具体的な期間については、
・ 迅速性という制度趣旨に鑑みれば、賃金債権の消滅時効の期間(現行2年)
に合わせることが考えられる
・ 民法の改正も踏まえると、一般債権の原則である「権利者が権利を行使す
25
ることができることを知った時から5年」より短くすることはあり得ない
・ 解雇の有効・無効の立証の観点からも、5年という期間設定は人的・物的
な立証上の問題から困難。解雇に関する重要な書類の保存期間も、現在は3
年とされている(労働基準法第 109 条)
等の意見があったが、消滅時効の期間の統一化等を内容とする民法改正の動向
を踏まえつつ、労働者の権利保護を図り、迅速な紛争の解決に資する観点から
どのような期間が適当か、引き続き、議論を深めることが考えられる。
(キ)他の労働紛争解決システムへの影響
a 金銭救済制度の制度設計の仕方によって、都道府県労働局のあっせんや労働
審判制度など、既存の労働紛争解決システムに影響を与える可能性については、
・ 金銭救済制度が創設され金銭の水準が定められた場合、都道府県労働局の
あっせんなど ADR における解決金額の水準も底上げされるのではないか
・ 裁判における金銭補償の水準が明確になることにより、行政のあっせんや
労働審判もより上手く機能するのではないか
・ 仮に金銭救済制度が労働審判より著しく有利なものとして設計された場合、
これまで労働審判で解決されていた事案まで裁判に流れてしまう
・ バックペイは使用者が和解を決断するインセンティブとなっており、バッ
クペイに上限を入れると、現状の調停や和解に大きな影響を与え得る
・ 金銭解決制度という新たな選択肢を設けることになれば、結果として労働
審判制度が上手く機能している現状からすると、既存の紛争解決システムへ
の影響が大きいのではないか
・ 新たに金銭救済制度を導入することにより制度的に労働審判制度が使えな
くなるといった影響がある訳ではなく、もし影響があるとすれば、金銭水準
の有利不利による影響のみではないか
・ 審判や訴訟の進め方への影響については、解消金の考慮要素・算定基準が
どの程度のものかによる。従来の解雇紛争において問題とされていた要素と
それほど異ならないのであれば、紛争の解決に係る期間が従来と大きく変わ
るということはないのではないか
・ 個別労働関係紛争が発生したとき、何でも裁判に持ち込まれることになら
ないよう、金銭救済制度を設けるのであれば、都道府県労働局において迅速
かつ的確に解決される措置等も同時にとるべき
・ 金銭救済制度が創設された際に、裁判所が対応できないような件数の申立
がされて混乱が生じることは避ける必要がある。金銭水準等の設計について
は、その観点から考慮する必要がある
等の意見があった。
b また、金銭救済請求権の行使を裁判上に限った場合や、裁判外でもできるこ
ととした場合の影響については、
26
・ 労働審判は裁判外・裁判上のどちらに入るのかという問題を考える必要が
あるが、非訟事件であるから、裁判外の解決と見るべきではないか
・ 裁判上の請求に限った場合には、双方の合意に基づき個々の事案に応じて
柔軟に解決できる労働審判と、裁判所が一定の枠の中で解決金額を決定する
金銭救済制度と棲み分けができ、当事者本人のニーズに応じて選択すること
ができる
・ 裁判上の請求に限った場合、労働審判への影響はないとは言えないが、現
在、労使ともに迅速な紛争解決を以前にも増して求めていることからも、簡
易・迅速な仕組みである労働審判から流れてくるとは限らず、心配するほど
の影響はないのではないか
・ 裁判上の請求に限った場合でも、裁判外で合意により金銭解決するという
こともあり得、その際、仮に訴訟に行った場合にどうなるかということを勘
案することとなることから、当然事実上の影響を受ける。その意味で、金銭
救済請求権の行使を裁判上に限るか裁判外でもできることとするかは、本質
的な違いはないのではないか
・ 裁判外での請求を認める場合には、法定の下限よりも低い額での金銭解決
を図ることが脱法行為に該当しないかについても論点として検討する必要
がある
等の意見があった。
c 仮に金銭救済制度を創設する場合であっても、既存の紛争解決システムが引
き続きその趣旨・目的に沿った形で有効に機能するよう制度設計を検討すると
ともに、仮に金銭救済制度を創設した場合の他の労働紛争解決システムへの影
響については、迅速な紛争の解決を図る観点からは、可能な限り、引き続き都
道府県労働局におけるあっせんや労働審判制度が有効に機能するよう、金銭救
済制度を前提とした都道府県労働局におけるあっせんのルール等を構築する
などの方策について、引き続き、議論を深めることが考えられる。
(ク)その他(就労請求権)
上記のほか、解雇無効時の金銭救済制度の検討に当たっては、「解雇は結局
は金銭問題」という規範にならないよう、解雇が無効で労働者が復職を望んで
いるときには使用者が拒んだ場合でも就労を継続させる仕組みとして、就労請
求権を考えるべきではないかという意見もあった。

[透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会の、最終報告案から抜粋引用おわり]

このエントリーの本文記事は以上です。

(C)2017年、宮崎信行。

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Miyazaki Nobuyuki 


安倍晋三・自民党総裁、憲法改正原案の作成を保岡興治・自民党憲法改正推進本部長に指示、自公で先行、2018年通常国会にもとりまとめへ

2017年05月12日 23時59分30秒 | 第194回臨時国会(国難突破冒頭解散2017年9月)

(13日午前11時半投稿で、12日付にバックデート)

[写真]自民党本部、2015年11月、筆者・宮崎信行撮影。

 報道によると、平成29年2017年5月12日(金)、自民党本部内で、安倍晋三さんが、保岡興治さんに、憲法改正原案(改憲発議原案)を作成するよう指示しました。自民党ホームページによると、憲法改正推進本部は総裁・幹事長部局で、政務調査会とは別系統。

 先週、2017年5月3日の憲法記念日に、安倍さんが読売新聞と日本会議で、突如「2020年施行で憲法9条第3項を新設」というメッセージを発信。報道によると、12日の同本部幹部会で、首相補佐官の柴山昌彦さんが「自公が先行して調整してほしい」との首相の意向を伝達。これを聞いた保岡さんが、高村正彦副総裁に「首相とアポがとれない」と話したところ、その場から、首相に電話。当日、党本部で都議選のビデオメッセージ撮影を予定していた安倍さんが、党本部内で保岡さんに会いました。また、当日夜には、下村博文幹事長代行がテレビ番組で「2018年通常国会発議」のスケジュール感を示唆しました。

 衆議院憲法審査会は、民進党の蓮舫代表・野田佳彦幹事長の派閥「花斉会」の幹部、武正公一さんが意図的に審議を遅らせていることから、安倍首相らが業をにやして、2014年7月1日の解釈改憲「国の存立を全うし切れ目のない安保法制のための憲法解釈の再整理」の事前調整にあたった、自公協議会の高村正彦座長、北側一雄座長代行のコンビに活路を見出したものと思われます。

 ただ、改憲には、衆参、各々の発議が必要。参議院憲法審査会は参議院自民党もあまり積極的でない姿勢をかもしだしています。参に限れば、自公だけでなく、維新と、数人の無所属議員の協力が本会議で必要になるので、自公協議のあと、維新と参自の賛同と、数人の参議院議員の切り崩しが必要となりそうです。

 自民党内では「3分の2があるうちの発議」を求める声が半数を超えつつありますが、この場合は、解散が遅れることも考えられます。仮に、「3分の2にこだわったために追い込まれ解散となり政権を失う」という事例になると、日本の政治史では初めてのシチュエーションとなります。

このエントリー記事の本文は以上です。


安倍首相(自民党総裁)やはり憲法改正にあまり興味が無いのか 2020年施行で、憲法第9条に第3項追加案を提示

2017年05月03日 15時30分29秒 | 第194回臨時国会(国難突破冒頭解散2017年9月)

憲法改正は20年施行目標、9条に自衛隊…首相) 

 安倍首相(自民党総裁)が、読売新聞に対して、平成29年2017年4月26日(水)に語った独占インタビューが、同5月3日付の読売新聞で報じられました。

 首相は憲法改正の日程感について、
「発議のタイミングは、衆参の憲法審査会での審議の結果として決まるものだ。自民党総裁として、この方向で、と言って私が決められるものではないが、私はかねがね、半世紀ぶりに日本で五輪が開催される2020年を、未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだと申し上げてきた」

 「2020年も、今、日本人にとって共通の目標の年だ」「新しい日本を作っていくこの年に、新たな憲法の施行をめざすのはふさわしい」

 と語りました。

 私は昨夏、第24回参院選で改憲勢力が衆参各院で3分の2を超えながら、憲法審査会(とくに参側)がほとんど動かないことに疑問を持ってきました。私はきょうのインタビューを読んで、やはり安倍首相(自民党総裁)は、たいして憲法改正に意欲は無いのだなと感じました。

 日本国憲法第96条は、憲法改正について国民投票の承認をえたら、天皇は国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちに公布する、第100条は(1946年改正は)公布の日から起算して6か月を経過した日から施行する、とあります。

 憲法改正手続き国民投票法(平成19年法律51号)は、その2条で、国民投票は、国会(衆参各々)が憲法改正を発議した日から、起算して60日以後180日以内に行う、としています。

 なので、安倍晋三さんの発言を勘案すると、2019年秋ごろに発議し、2020年国民投票し、公布、施行する、というようなスケジュール感だと思います。これは、自民党総裁の任期は(来年秋に再選すれば)2021年9月まで、その間の国政選挙は、参院の半数改選(第25回)と、第48回衆院選ですから、仮に3分の2を維持できれば、発議すればいい、レガシーになるというくらいの感覚ではないでしょうか。


 このインタビューでは、自民党憲法改正草案について「党の目指すべき改正はあの通りだが、政治は現実であり、結果を出していくことが求められる。改正草案にこだわるべきではない」、との発言をおそらく初めてして、大幅な軌道修正をしました。

 具体的な改憲項目について、第1章天皇には否定的、第7章辺りに教育無償化を書き込むことは肯定的、第7条などの衆議院解散権には言及を避け、緊急事態条項には前向きな姿勢ながら国会に委ねるとしました。第4章の参議院についても、参議院に議論を任せるとしました。

 第9条については、「例えば、第1項、第2項をそのままの残し、そのうえで自衛隊の記述を書き加える」と語りました。これは、2014年7月1日の集団的自衛権解禁の閣議決定により、首相はすでに9条改正に興味がなく、その「なかば犯罪行為のカモフラージュ」のために、9条1項と2項を残したまま、3項を書き加えることで、集団的自衛官の上書をしたい、との真相の心理のあらわれでしょう。

 解釈改憲による、平和安保法制の改正自衛隊法の第90条や、第90条の2あたりでは、米艦防護ができることになっています。いったん話がかわりますが、一連の規定で、「警護」と「防護」という言葉の定義が整理されていないように感じられます。「米艦防護」は日米ガイドラインなどの二国間協議の言葉で、それを、自衛隊法に落とし込みたいのが、平和安保法制のねらいだったことの裏打ちのようにも感じられます。

 同日の読売新聞は、米国の補給艦に対して、ヘリ空母護衛艦「いづも」だけでなく、護衛艦「さざなみ」(艦番号113)も米艦防護すると報じられました。「さざなみ」は哨戒ヘリを飛ばすことができ、艦対艦ミサイルも搭載していますので、仮に北朝鮮の潜水艦などに追尾される事態が生じたときは、日米一体化して武力行使ができることになるでしょう。こういうことができるのですから、首相は改憲にはあまり興味が無く、レガシーにできれば恩の字というところでしょう。

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Miyazaki Nobuyuki  


第4次産業革命のための競争力強化法案、2017年通常国会以降に提出へ IT業界大幅再編か

2016年06月02日 20時40分23秒 | 第194回臨時国会(国難突破冒頭解散2017年9月)

 第4次産業革命を後押しするための、IT業界の企業再編・合併を促進する法案が、平成29年2017年1月召集の通常国会に提出する方針となりました。

 第3次安倍内閣が、6月2日(木)の臨時閣議で決定した「日本再興戦略2016」の中に、「② スピード感あるビジネスの新陳代謝の促進」 が盛り込まれ、「本年中を目途に結論を出し、次期通常国会を含め、早期の関連法案の提出も視野に、必要な措置を講ずる」と明記されました。

 イギリスの蒸気機関の発明により、ピーター・パンを除くすべての大人が、時計台ビッグベン(修理中)がにらみつける街で、大資本と時間の奴隷になった第1次産業革命、アメリカのエジソンさんが先願主義で得た特許のうち電子投票機を除く多くの特許が製品化された第2次産業革命、ビル・ゲイツさんらのIT、ドットコムバブルの第3次産業革命に次ぐ。

 日本再興戦略2016は「今後の生産性革命を主導する最大の鍵は、IoT(Internet of Things)、ビッグデータ、人工知能、ロボット・センサーの技術的ブレークスルーを活用する「第4次産業革命」である」と設定。

 そのうえで、

(1)スピード感あるビジネスの新陳代謝の促進
 「第4次産業革命を見据えた新陳代謝の促進・事業再編の円滑化等・ビジネスモデルの移り変わりのスピードが劇的に拡大する中、イノベーションを生み出す研究開発、グローバル競争で勝つための有形・無形資産等への戦略的な投資、経営戦略に基づく先を見据えたスピード感のある事業再編等を加速するために必要な施策について検討を進め、制度的対応の必要性を含め、本年中を目途に結論を出し、次期通常国会を含め、早期の関連法案の提出も視野に、必要な措置を講ずる」。

(2)第4次産業革命等を勝ち抜く知財・標準化戦略の推進
 「情報の集積・加工・発信の容易化・低コスト化、著作物を含む情報の利用の一層の多様化、人工知能による創作事例の出現等、著作権をはじめとした知的財産(以下「知財」という。)の保護の在り方をめぐって制度上の新たな課題が顕在化してきている。こうした課題を分析した上で、第4次産業革命に対応した次世代知財システムの在り方に関し、著作権法における柔軟性のある権利制限規定等について、次期通常国会を含めた早期の法改正に向けて、その効果と影響を含め具体的検討を進めるとともに、必要な措置を講じる」。

 このうち(2)の動きについて、当ブログはすでに先月10日に、(

AI、3Dプリンター、ビッグデータの著作権の制限と保護、法案検討へ 知的財産推進計画2016

) 

 として報じました。

 (1)の事業再編ですが、これは、2013年秋の臨時国会で成立した産業競争力強化法(関連エントリー

第185臨時国会提出の産業競争力強化法案、企業合併で「新陳代謝」 大いに支持したい【追記あり】

) 

 と同じ立てつけの法案になるとみられます。

 すなわち、産業競争力強化法のように三菱電機と日立の火力発電機製造部門の統合会社の設立や、サントリーによる外資のジンビームの1・6兆円買収などの第2弾として、IoT、ビッグデータ、人工知能の業界で統合、合併、買収を促し、政策減税で底上げすることで、1人当たりの生産性を高めるのが狙いだと考えられます。

 ぜひ、実現してほしいものです。

 このエントリー記事の本文は以上です。 


AI、3Dプリンター、ビッグデータの著作権の制限と保護、法案検討へ 知的財産推進計画2016

2016年05月10日 23時59分59秒 | 第194回臨時国会(国難突破冒頭解散2017年9月)

(投稿は11日で、それから、10日付にバックデートしました)

 政府の知的財産戦略本部は、平成28年2016年5月10日(火)、政策パッケージ「知的財産推進計画2016」をまとめました。

 全文は7万文字で、このブログ(2万文字まで)では紹介できません。

 ただ、法改正の検討が必要と思しきメニューは一部で、

 (1)人工知能AIがつくる創作物が、人間がつくった創作物と似ている場合の、著作権の保護や、逆に二次利用のしやすさなどの著作権制限。

 (2)3Dプリンターなどのデータの保護。

 (3)ビッグデータなどの情報財の保護。

 に関して、現行法と現実との検討がなされることになりました。

 「民法の特別法」のうち、知的財産権に関する法律には次のようなものがあります。

 著作権法(昭和45年法律48号)

 商標法(昭和34年法律127号)

 特許法(昭和34年法律121号)

 不正競争防止法(平成5年法律47号) 

 「知的財産推進計画2016」を受けて、改正法案は、平成29年2017年以降の国会に提出することになりそうです。

 このほか、利活用の面から、文部科学省、文化庁、農林水産省、経済産業省、特許庁、公正取引委員会などでの検討作業が活発化しそうです。

 このエントリーの本文記事は以上です。 


「同一労働同一賃金推進法案」を2017年提出と安倍首相、長妻昭「言質を取る」と抱きつき返す

2016年02月23日 23時59分59秒 | 第194回臨時国会(国難突破冒頭解散2017年9月)

(このエントリーの初投稿日時は2016年2月25日午後4時で、それから23日付にバックデートしました)

 安倍晋三首相(自民党総裁)は、第47期衆議院の、平成28年2016年2月23日(火)、一億総活躍国民会議で、

 同一労働同一賃金法案の作成を政府に指示しました。

 法案提出は、平成29年2017年の通常国会になる見通し。

 最大野党・民主党などは、その3年前、平成26年2014年、「同一労働同一賃金法案」(187衆法7号)法案全文=を提出しました。

 抱きつき戦術は自民党の常とう手段。昔、自民党機関紙での対談で、宮澤元首相(総裁)が「自民党は最大野党の良い政策を3年後に取り込んできた。仮に小選挙区制だったら、立党から38年間に、3回くらい下野していた」という趣旨の発言をし、渡辺元副総理も賛同しました。

 これと同じく、民主党の法案から3年後の国会に同じタイトルの法案が出るようで、まさに抱きつき戦術です。

 最大野党の長妻昭元厚生労働大臣は、「安倍首相からどんどん言質を取って逃げられないようにする」(25日の代表代行定例記者会見)と語り、政府の作成作業に、「抱きつき返す」意向を示しました。

 安倍首相は23日の会議で次のように語りました。

 「多様で柔軟な働き方の選択を広げるためには、非正規雇用で働く方の待遇改善は待ったなしの重要課題であります。(略)躊躇なく法改正の準備を進めます。あわせて、どのような賃金差が正当でないと認められるかについては、政府としても、早期にガイドラインを制定し、事例を示してまいります。このため、法律家などからなる専門的検討の場を立ち上げ、欧州での法律の運用実態の把握等を進めてまいります。厚生労働省と内閣官房で協力して準備を進めていただきたいと思います」

 経団連会長や日商会頭から「日本的雇用環境に配慮せよ」との意見が出たものの、水町東大教授らに欧州の事例を調べてもらい、ガイドラインを策定。それから、法案を提出する考えを示しました。

 さて、同一労働同一賃金を定めた法律はない、という趣旨の説明を官僚がしているようですが、それは間違いだと私は認識します。ILO100号条約(昭和42年9月7日条約第15号)に、「同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬」が盛り込まれています。この男女同一賃金の抜け穴として、非正規雇用に関する法律ができました。

このエントリー記事の本文は以上です。
(C)宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki 
(http://miyazakinobuyuki.net/)

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[お知らせ終わり]


繊維産業の倍増に向けて経産省2016年春とりまとめへ TPPで他国関税撤廃で商機、新法をめざせ!

2015年12月04日 05時43分29秒 | 第194回臨時国会(国難突破冒頭解散2017年9月)

[写真]経済産業省、6階に、製造産業局繊維課、2015年7月、筆者・宮崎信行撮影。

 経済産業省が、日本国内の繊維の生産量を倍増させる方向性の研究会を立ち上げ、平成28年2016年春をめどに報告書をとりまとめることになりました。

 日経新聞などが報道しました。

 TPP条約=12か国が大筋合意=の第4章に「繊維・アパレル章」があります。ここで、他の11か国のほとんどに対して日本産の繊維製品の関税が即時撤廃され、アメリカも段階的に全廃されることになりました。

 このため、他の11か国、とくにベトナムなどから安い繊維製品が入ってくることになりますが、逆に日本製品を、アメリカ、オーストラリア、ベトナムなど11か国に輸出するチャンスになります。

 私が知る限りでは、ベトナムの繊維製品の品質は意外と良くありません。勤勉と言われますが、機織機(はたおりき)の性能が、品物に影響するようです。

 女工哀史は昔の話。機織り工場での企業内保育所は、すでに明治時代からあり、カネボウもありました。平成の時代にもなって、日産自動車の社長が企業内保育所の新設をドヤ顔で新聞コラムに記す無教養をみせたこともありましたが、機織りならば、企業内保育所があって、女性も働きやすい職場になります。農家は、桑や蚕の生産で、現金収入を得やすくなります。

 我が国は、かつて、「繊維」の名が入った法律を4本持っていました。現在はすべて廃止されました。

 当ブログとしては初めてですが、国立国会図書館の「日本法令索引」のデーターベースを使って調べました。

 付加価値の高い衣料製品をどんどんつくって、ベトナム、アメリカ、オーストラリアにどんどん売り込みましょう。

 経済産業省製造産業局繊維課は、新法もつくる意気込みで取り組んでください。

このエントリー記事の本文は以上です。


(C)宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki
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[お知らせおわり]


税理士が大企業にした節税アドバイス、国税庁に報告させる法案、2017年以降の提出へ検討【追記有】

2015年05月26日 08時57分53秒 | 第194回臨時国会(国難突破冒頭解散2017年9月)

【追記 2016年12月28日】

 先週決定した、「平成29年度税制改正大綱」の中には、下に書いた内容は入っていないようです。

【追記終】

 政府は、税理士と経営コンサルタントに対して、経団連に所属する大企業などにアドバイスした節税策を報告する義務を盛り込み、報告を怠ったら処罰する法律案を提出する意向を持っています。平成29年2017年度の実施をもくろんで、平成29年2017年1月召集の通常国会に法案を提出したいかまえ。きょう付日経新聞が報じました。

 私は記事を読んで、「税理士法」という法律を読みましたが、これは、資格試験や認定、税理士会の組織を定めた法律。おそらく国税通則法の改正案や年次税制改正法案、あるいは、新法をつくる方向で、今後調整が続いていくとみられます。法文のボリュームはさほど大きくならないでしょう。

 国の法人税は、利益だけに課税します。ただ、過去の繰り延べ税金資産を控除できるため、1年ごとに、赤字と黒字を繰りかえす企業ならば、ずっと法人税を納めないことも可能になります。

 租税特別措置透明化法は平成22年2010年通常国会で成立し、翌年から施行。

 平成27年2015年の通常国会では、参議院に、野党各党(民維共など)が法人税の納税額を大企業に限って企業名付きで情報公開させる法律案を提出しましたが、未可決。

 このため、政府としては、親会社と子会社のとりひき、年度をまたぐ節税、設備投資と長期リース契約などについて、報告を義務付けたい意向です。

 仮に法律ができれば、国税庁の頻繁な通達よりも、年次税制改正を通じた時代の変化への対応が高まります。

 国庫は、2009年度に法人税収見積もり16兆円が決算で9兆円になるなど、極めて不安定な状況になっており、法人税の安定性は国会存続のうえで最大の課題となっていますが、企業が単年度の経常利益を重視し、国益を損ねる時代が続いており、対策は急務であり、絶対です。

[日経電子版から引用はじめ]

企業の節税策に報告義務 政府検討、税逃れ防止へ罰金も 

2015/5/26 1:30日本経済新聞 電子版

 

 政府は税理士に対し、企業に提供している節税策の報告を2017年度にも義務づける検討に入った。大きな税収減につながる節税を対象にし、報告を拒む場合は罰金も検討する。過度な節税へのけん制効果を見込み、税収減や企業間の不公平を和らげる。企業の租税回避の防止へ国際的な枠組みが整備されつつあることを踏まえ、米欧などと足並みをそろえる。

 与党の税制改正の議論を経て、早ければ17年の通常国会で関連法を改正する。節税策を作る税理士やコンサルティング会社に加え、節税策の提供を受ける企業も報告義務づけの対象になる可能性がある。税理士には顧客企業のリストの提出を求めることも検討する。

 米英や韓国などはすでに当局への報告を義務づけている。日米欧などが加盟する経済協力開発機構(OECD)は今年9月にまとめる企業の節税への対抗策のなかで、日本などにも義務づけを呼びかける見通しだ。主要7カ国(G7)が27日から独ドレスデンで開く財務相・中央銀行総裁会議でも、企業の租税回避をどう防ぐかが主要な論点になる。

 政府は今後、どんな節税策を報告の対象にするかを詰める。節税策で代表的なのがグループ会社から損失を移したり、航空機のリース費用を複数の会社で分けたりして利益を意図的に減らす損失取引という手法だ。

 1年間で億円単位の損失を意図的に作り出すような節税策が報告の対象になりそうだ。節税策を提供する税理士に企業が割高な報酬を支払っていたり、企業が提供を受けた節税策を他社に伝えないよう守秘義務を負っていたりする場合にも報告を求める見通しだ。

 1984年に各国に先駆けて報告義務を入れた米国では、年間1千万ドル(約12億円)以上の損失を出す取引などを対象にしている。カナダでは資産を取得してから4年間で実費以上の損失を出した取引などが対象だ。英国では1千万ポンド(約19億円)以上の価値の工場や機械を使ったリース取引などを対象にしている。

 税理士が企業から25万ドル(約3千万円)を超える報酬を得た場合を報告対象にする米国のように、税理士の契約内容に着目する方法もある。日本政府は先行する国々を参考に義務づけの金額基準などを設ける見通しだ。

 罰金も海外を参考にする。報告しなかった場合、米国は5万ドル、英国は最大100万ポンドを科している。

 米スターバックスの英国法人によるスイスやオランダの関連会社を使った節税のように、手の込んだ節税策が世界的に増えている。日本でも国税庁が関知しない節税策を使う企業が増えつつあるとみられ、報告を求めて把握できるようにする。

 節税策は違法ではないが法制度をかいくぐる脱法的な手法が多く、政府は報告を受けた節税策の情報をもとに法制度を手直しする。法制度の不備が解消されれば、手の込んだ節税策を防止する効果も見込める。

[引用おわり]