flow Trip -archive-

「漂い紀行 振り返り版」…私の過去の踏査ノートから… 言い伝えに秘められた歴史を訪ねて

大口 余野

2008-05-16 00:00:05 | ほとけのいおり
(愛知県丹羽郡大口町)
 私は初めて訪れる地だが、父は知人のいる地のようだった。
最寄り駅は名鉄犬山線柏森駅である。ここは隣町扶桑町であり、大口町域には駅が無いのである。そして駅から東へ暫く歩くと、大口町余野(よの)地区に差し掛かる。

 小口地区へ向かう途中には、二つの寺院が隣接しているところがある。臨済宗の大龍山徳林寺と福新山全徳寺である。徳林寺は『尾張志』に、「昔、当村ノ住士小池与八郎が妻山姥にて福富氏に射殺されし菩提のために建し寺なれは、俗に山姥寺といふ」と記している。また、同寺伝には、永仁元年(1293)に真言宗として開基し、空母山徳蓮寺と称したという。その後荒廃、文明元年(1469)小口城主織田広近が再建し、改宗、寺号も改められている。そして、天正十二年(1584)小牧の戦いの際に兵火で焼失し、その後再建されている。
(徳林寺) 
 全徳寺は、永仁二年(1294)山姥を退治した福富新蔵によって「全徳坊」として創建し、文明七年(1476)徳林寺住職によって「全徳庵」と改められ、同寺の末寺となっている。そして、徳林寺と同様に兵火に遭い焼失、慶長三年(1598)に再建された。その後、明治34年(1901)には徳林寺から分離して現在に至っている。
 (全徳寺)
 徳林寺には、町指定文化財となっている山門と中門がある。その歴史のある黒い門が、春の彩りをより引き立てていた。
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