旅の宿
今回の旅で楽しみしていたことの一つに木曽路の旅籠(?)に宿泊することがありました。今回私は4泊したのですが、期待通り四者四様の旅籠風宿を楽しみました。
今回私は木曽路の奈良井宿、木曽福島宿、須原宿、妻籠宿の四つの元宿場町に宿泊しました。これらの元宿場町にある宿泊施設は全てが民宿という形態です。(木曽福島宿で宿泊したところは旅館と称していましたが)
それぞれに特徴があって、楽しむことができました。一つ一つの宿を振り返ってみることにします。
※ 奈良井宿の「民宿 ながい」さんの外観です。
奈良井宿の「民宿 ながい」は、ほんとうに家庭的な温かさを感じさせてくれる宿でした。
「民宿 ながい」は奈良井宿の街並みのほぼ中心に位置していましたが、規模は小さくおばあさんが一人で切り盛りしている宿でした。(昔職人だった主人は健在でしたが、宿の運営はおばあさんが一人で担っているようでした)宿泊客は私ともう一人だけ。部屋は昔風の和室です。
印象深かったのは、おばあさんの手料理でした。けっして豪華ではありませんが、おばあさんの心の籠った料理がいっぱいに並べられたのを見て、同宿の人と二人で感激していました。
二人とも歩いて旅していると知って、翌朝おにぎりを作ってくれて「お腹が空いたときに食べてください」と差し出してくれました。
※ 「民宿 ながい」さんの手作り感いっぱいの夕食です。
※ 木曽福島宿の「旅館 さらしなや」さんの外観です。
木曽福島宿の「旅館 さらしなや」は、木曽路を旅する人だけを対象とするというよりは、さまざまな用途で宿泊する人を対象とする宿のようでした。従業員も使い、ややビジネスライク的なところも感じられましたが、何といっても私が忘れた水筒を私を追って届けてくれたこと(お礼を申し出たが丁重に断られました)で私の好感度は一気に上昇しました。
※ 「旅館 さらしなや」さんの夕食です。品数は他と比べて少ないかも?
※ 須原宿の「民宿 いとせ」の外観です。
須原宿の「民宿 いとせ」は木曽路沿いからも離れ、私のように木曽路を旅する者が宿泊するのはそれほど多くはない宿のようでした。事実、宿泊した日も6人ほど宿泊していましたが、旅する者は私一人だけだったようです。
旅の途中でも報告しましたが、この宿は全く普通のちょっとだけ大きな民家といった造りでした。中に入ってもその印象は変わらず、私に与えられた部屋は隣とふすま一枚隔てただけでした。ところが隣が二人組のために話し声もテレビの音声も筒抜けです。これではたまらんと、宿に交渉して空いている部屋に移動させてもらいました。
あのままではおそらく話し声が気になって、翌日睡眠不足に陥っていたことでしょう。
そして、この宿で閉口したのはボッタントイレだったことです。いまどきいくら民宿とはいえ、トイレや風呂はどこも現代風に改装してあるのが普通だと思っていましたが、これには参りました。
悪いことばかりではありません。この宿の風呂の入り口で洗濯機を目にしました。使用を申し出ると、洗剤も快く提供してくれて、それまで手洗いでやっていた洗濯を快適に終わらせることができました。
※ おばあさん二人で用意してくれた「民宿 いとせ」の夕食です。
※ 通りから少し入った「下嵯峨屋」の外観です。
最後の妻籠宿の「下嵯峨屋」は妻籠宿の街並みのほぼ中心にある小さな民宿でした。この宿についても途中でレポートしましたが宿泊客が私以外の7人の宿泊客が全て外国からの旅行者だったのには驚きました。
小さいながらも今回宿泊した四つの宿の中では最も清潔な宿だったように思います。
ただ人気の妻籠宿の宿で、多くの旅人を宿泊させているせいでしょうか、主人と何度か言葉を交わしてのですが、どこかもう一歩踏み込んだ会話ができない雰囲気を感じてしまったのが残念でした。
※ 連泊だった外人さんたちと内容が少し違いますと言って出された「下嵯峨屋」の夕食です。
以上、ざあっと宿泊した四つの宿を振り返ってきましたが、こうした民宿や小さな旅館を利用する旅では、実際に行って利用してみるまでどのような施設で、どのようなサービスが受けられるのか、まったく分からないというスリリングさがあります。そこが民宿を利用する面白さだと私は思っています。
これがホテルであればある程度の水準が保たれていることを事前から予想することができます。(もちろん料金にもよりますが)
私は今回の宿を選定する基準は小規模な宿を中心に選定し予約しました。それは家庭的なサービスが期待できるのでは、との思いからでした。そしてその思いはある程度達せられたと思っています。
四つの宿ともまだまだ素朴さが残っており、私が宿に着いたのはいずれも午後3時前後でしたが、始業前(チェックイン前)にもかかわらずどの宿も快く迎えてくれました。また、宿の主人たちとも親しく会話をすることができましたし、出された料理もそれぞれが心の籠った手作りの料理が中心でした。
いずれもが思い出に残る四つの宿でした。
惜しむらくは、宿において旅人同士の出会いや会話を期待していたのですが、奈良井宿の宿以外はそれが叶いませんでした。それというのも私のような旅の形態をとって旅している人に宿で出会えなかったからです。おそらく旅のシーズンとしてはローシーズンだったということなのかもしれません。