原作は云わずと知れた推理小説の大家である松本清張の出世作「点と線」である。当時、分単位の僅かな時間差を利用して謎解きを図った推理小説として話題を呼び、大ベストセラーとなった作品の映画化だった。
「シネマの風景フェスティバル」の最後に観た映画は「点と線」だった。
映画は原作の発表と同じ年の1958(昭和33)年に映画化されたもので、犯人がアリバイづくりのために札幌まで出張したときの、昭和33年ごろの札幌の駅や街の様子が活写されていて興味深かった。
ストーリーは完全犯罪を狙った犯人が東京駅のホームの13番プラットホームから15番プラットホームが見通せるのが一日のうちで僅か4分間しかないという時間を巧みに使ってアリバイ工作をしようとしたことを捜査陣が突き崩すというところが原作発表当時おおいに話題の呼んだのだった。
映画もその謎解きの部分を中心に、原作の力に頼った映画だったと私は見た。
50年以上の前の映画だから、捜査官役の南廣、犯人役の山形勲、高峰三枝子などみんな若かった。
そして札幌の駅も先々代の古い駅舎であり、街もまだまだ戦後復興したばかりで木造家屋が並んでいる街並みだったがとても活気を感じさせるシーンだった。
※ 主演の南廣。主に1950年代後半から80年代にかけて東映映画で活躍した俳優です。
「点と線」…、それは犯人が福岡で殺人を犯し、札幌に飛んでアリバイを作り、東京駅でアリバイ工作をするというように、それぞれの点で行われたことが捜査によって線で繋がったという意味から著書名となったのだろう。
しかし私には、当時の札幌の活気ある街並みと、現在のような近代的な札幌の街を見るとき、そこにも「点と線」を感ずるのだった…。