良くも悪くも高倉健さんの映画だった…。寡黙な男が妻への愛を背中で語る…。御年81歳! その若さに驚かされるが、健さんにも忍び寄る“老い”はやはり隠せなかったのも事実だ…。
高倉健さんの6年ぶりの映画である。特別の健さんファンというわけではないが、惹かれるものがあって映画館に足を運んだ。
惹かれるものとは…、いくらスーパーマンといっても81歳という年齢は十分すぎるほど高齢者である。あるいは高倉健さんにとっては最後の主演映画になるのではないかとの思いがあって「映画を観てみよう」と思ったのだ。
映画は、北陸の刑務所で指導技官として勤務する倉島英二(高倉健)のところに、亡くなった妻・洋子(田中裕子)が生前にしたためた1通の手紙が届く。そこには故郷の海に散骨してほしいと書かれており、妻の願いを叶えるため車で彼女の故郷・九州へと向かうというストーリーである。
健さんは刑務所を定年退職した後に委嘱によって勤務を続けている61~2歳の設定である。実年齢とは20歳の差があるのだが、キャップにバラクーダ(いわゆるメーカー品のジャンバー)、カーゴパンツという若々しい装いでスクッと立つ姿はまだまだ若々しい。
しかし、ちょっとした仕草に、アップしたときの顔の表情に…、“老い”が忍び寄っていたことも事実だ。
映画は北陸・富山から長崎・平戸まで1,200Kmを、手作りキャンピングカーを駆って、その途中でのさまざまな出会いを挟みながら、そして妻との回想シーンも織り交ぜながら平戸を目ざすというものだった。
映像は十分に美しいものだった。特に竹田城址が山霧に包まれたシーンはハッとするほどの美しさがあった。
※ 山霧に包まれた竹田城址のシーンです。
平戸の海に無事散骨を終えるというストーリーに、もう一つ隠されたストーリーがあった。それはここでは明かすまい。
観終えたとき、高倉健さんが穏やかに実直に演ずる姿に共感し、静かな感動が私の中を貫いた。
しかし、健さんの代表作となるかと問われると“?”かなと思う。健さんの代表作はすでに世の中に出ているのではと思う…。