講座を受講する際、その趣旨が伝わってこないもどかしさを感ずることがある。その原因の多くは受講する私の側にあるとは思うのだが…。せっかくの貴重な報告が果たして活かされたのか?そんな思いを抱いた今回の講座だった。
無料で学びの機会を与えていただきながら、その趣旨に疑問を呈するなんて、失礼千万とは思うのだが、しょうもないオヤジの繰り言と思い許していただきたい。
12月14日(日)午後、北翔大学のサテライト的施設である「北方圏学術情報センター ポルト」で「地域資源を考える」という講座が開催され、参加した。
私は講座名を見て「あゝ、面白いかも」と思い、参加を申し込んだ。
後で入手した講座の趣旨は次のようになっていた。
「道内外における建造物などの具体的な活用や活動を通じての工夫や地域的な特色について紹介していきます。とくに、まちづくり活動や観光的活用の視点を重視しながら、地域資源(建造物など)を、どのように発掘・発見し、それらを効果的に活かそうとしているか、浮き彫りにしていきます。」
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※ 二つのレポートを発表したN43赤煉瓦塾の石垣事務局長です。
そして講座の構成は、
~第一部 北海道の地域資源 地域資源を結びつける観光活用のあり方~
◇貴重講義 「洞爺湖有珠山ジオパークの観光に関する課題」 北翔大短期学部 菊地達夫教授
◇事例報告1「北国の風物詩サイロ『江別のサイロ事情』」 N43赤煉瓦塾 石垣秀人事務局長
◇事例報告2「札幌における軟石建造物の経年推移」 札幌建築観賞会 杉浦正人代表
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※ 札幌軟石を追い求める札幌建築観賞会の杉浦代表です。
~第二部 日本の地域資源 煉瓦建築における地域研究~
◇事例報告1「世界遺産・富岡製糸場の今日」 N43赤煉瓦塾 石垣秀人事務局長
◇事例報告2「オランダ系とフランス系の煉瓦建築」 北翔大 水野信太郎教授
貴重講義の鈴木教授の提言はその主張がよく理解できた。
それは、ヨーロッパにおいてジオパークは世界遺産と同等の価値があるとされているという。その世界ジオパークに指定された「洞爺湖有珠山ジオパーク」が必ずしも観光資源として有効活用されているとは言い難い現状を明らかにされた。
鈴木氏は洞爺湖有珠山ジオパークの現状をレポートし、それを観光面に活かす場合の問題点として周知徹底の弱さを指摘した。
このことについて、地元がどう受け止めるかは別にしても、一つの提言として受け止めることができた。
ところが、それ以降のレポートが私にはいま一つピンとこなかった。
石垣、杉浦の両氏はそれぞれの分野で非常に熱心に実践に取り組んでおられることをレポートされた。しかし、両氏のレポートは自らの実践について詳細なレポートをしたものの、そこから何かを提言するということはなかった。それは両氏がいわば市井の実践者であるという分をわきまえた発表と取ることもできる。
それでは水野教授の発表はどうであったというと、結論を述べれば先の両氏の発表と本質的な違いはなかったと私は感じた。
日本国内に存在する(あるいは存在した)オランダから技術移入した煉瓦建築とフランスから技術移入したそれを羅列的に並べて見せたというだけに私には映った。
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※ 世界遺産の富岡製糸場はフランス式の煉瓦建築技術が導入された建造物だそうです。
いやいや、こうした私の姿勢は講座を受講する立場としては褒められるものではないかもしれない。
石垣氏からは、江別には非常に多くの煉瓦建築が市内に散在していることを教えてもらったし、杉浦氏からは札幌市内の軟石建造物が徐々に姿を消しつつあることを認識させられるなど、多くのことを学んだのも事実である。
ただ私の思いは、こうしたリレー式の講座においては、できれば講座のコンセプトがどの発表者においても通ずるものがあればさらに良かったのでは、と思ったのだった…。