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田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

大学の歴史から見た学問の自由

2015-08-04 21:55:43 | 大学公開講座
 講座名から、最近何かと話題に上る「大学の自治」について、その現状を大学人から生の声で聴けるのでは、と期待したのだが…。私の期待は肩透かしを食ったようだ…。 

          
          ※ 中世ヨーロッパ最古の大学の一つとされるパリ大学の正面です。

 北大公開講座「表現の自由と秩序」の第2回講座が7月30日(木)夜にあった。この日のテーマはタイトルのように「大学の歴史から見た学問の自由」と題して、法学研究科の田口正樹教授が講義を務めた。

 田口教授は冒頭、元朝日新聞記者の植村隆氏と北星学園大学の問題に触れて、学問の自由とか、大学の自治の在り方についてクエッションを投げかけたので、「この講座では具体的事例から学問の自由や大学の自治について語られるのでは」と期待したのだった。
 しかし、その後語られたことは、中世ヨーロッパにおける大学の誕生の背景とその変遷についてであった。

 田口教授の講義の概要は次のとおりだった。
 中世ヨーロッパにおける大学の起源は12世紀末にイタリアのボローニャ(法学)とフランスのパリ(神学)がその始まりとされている。当時、学びの場の多くは地方や辺鄙な修道院などが主であったが、大学という体裁を取るに従い、大学は都市に置かれるようになった。すると、都市住民と学生・教師との対立が生まれたが、教師と学生は同業組合的にまとまりこれに対応したのが大学の始まりとされる、と田口教授は語った。
 また、当時の大学は代表の選出、内部自治、権利と自由、裁判権など全てが大学内において定められてもいたようである。

                 
                 ※ ギリシアの哲学者アリストテレスです。

 もう一つのエピソードがアリストテレスの哲学思想とキリスト教神学の対立があった。中世ヨーロッパにおいてはキリスト教神学が圧倒的な影響力をもっていたが、そこへ科学的な価値観も併せ持ったアリストテレスの考え方がパリ大学の教師、ひいては学生たちから受け入れられた。そのことにより大学とキリスト教との間に対立が生まれたが、教師や学生の粘り強い闘いの結果、アリストテレスの哲学システムをも受け入れ(二重真理説)キリスト教神学の『神学大全』として結実したそうだ。

 かなり荒っぽいまとめであるが、田口教授がこの講義で伝えたかったことは、大学が誕生した背景には、権威にも犯されない独自の存在価値があって、それが現在の大学にも脈打っている、ということを伝えたかったのではないか。
 田口教授は最後に、「大学の原像(特異性)を確認する」として、複数の教師の存在する、教師間に指揮命令の関係はない、議論が可能である、とした。
 つまり田口教授は、直截的には言及しなかったが、現在の大学がおかれている立場に対して婉曲的に危機感を言い表したのでは、と私は推測したのだが…。