田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 223 手紙

2018-12-03 16:17:16 | 映画観賞・感想

 映画を観終えたとき、良い映画を観たと思った。原作は今をときめくミステリー作家の東野圭吾である。しかし、この「手紙」はミステリーではなく、ヒューマンドラマと言っていいだろう。兄弟であるがゆえの愛と哀しみ、弟を襲った過酷な運命とは…。

 

                

 

 11月28日(水)午前、札幌生涯学習センター(通称:ちえりあ)のちえりあホールにて「ちえりあ映画会」が開催された。そこで今回取り上げられたフィルムが「手紙」(2006年制作)である。

 

 リード文でも触れたように、この映画「手紙」の原作は東野圭吾である。東野はこれまでのミステリーとは一味も二味も違った発想と構成力で多くのミステリーファンを惹きつけている作家である。私も彼の作品にはまって一時期むさぼるように彼の作品を読み漁ったものである。その中の一冊に「手紙」もあった。

 

        

 

 映画は両親を失った兄の剛志(玉山鉄二)と弟の直樹(山田孝之)の物語である。

 

 剛志は直樹の進学のために懸命に働いていたが、腰痛などの事情もあり思うように働くことが出来ない中、強盗に入ってしまうが、そこで誤って殺人を犯してしまう。

 

 服役した剛志は弟のことが気がかりで絶えず手紙を送り続ける。弟も兄を励まそうと返事を書いて刑務所の兄に送り続けた。

 

 しかし直樹は強盗殺人の弟ということで、進学、就職、結婚等人生のイベントの度に不当な差別を受けてしまうことになる。

 

 職場を転々とする中、直樹は家電量販店の倉庫番として働いていた時に、量販店の社長(杉浦直樹)から励ましを受ける。「差別のない場所を探すんじゃない。君はここで生きていくんだ。こつこつと少しづつ君と社会のつながりを増やしていくんだ」と…。社長の言葉は直樹の胸に深く刻まれる。

 

  映画の中で最も感動的だったのはラストシーンである。直樹はかつてお笑いコンビを組んで活躍していたが、それも兄のために夢を捨ててしまっていた。そんな彼が以前の相方と、兄が服役する刑務所に慰問に行って漫才をするシーンが涙を誘う。「金曜日になると兄貴のことを思い出すんですよ。粗大ゴミ出す日だからしようがないんですよ。兄貴とは血が繋がっていますから、アスベストみたいなもんだから勝手に捨てることができないし、もうしょうがないから、ずっと兄貴ですから…」

 

  兄を拒否しようとしながら、唯一無二の肉親である兄を拒否できない弟。直接伝えられない自分の思いを漫才のネタに変えて、兄への思いを舞台から届けた直樹だった…。

 

 原作ではミュージシャン志望の弟という設定だったが、夢破れたお笑い芸人の弟と変えたところに脚本の巧さが光った。

 

             

 

 映画はとても重いテーマを私たちに突きつけたようにも思われた。私が直樹の立場に立たされたら…。とても簡単に答えが見出せそうにないテーマの映画だった…。