「北海道・北東北の縄文遺跡群」は世界遺産(文化遺産)の登録を目ざしている。門外漢にはいま一つその価値が理解できないでいるのだが、登録に向けて活動する関係者のお一人からお話を聞いた。
※ 北海道・北東北縄文遺産群を代表する遺跡「三内丸山遺跡」です。
12月12日(水)午後、かでる2・7において「ほっかいどう学」かでる講座の第10回講座が開催された。(今年度の最終講座である)最終回の今回は、「北海道・北東北の縄文遺跡群~世界遺産登録をめざして~」と題して北海道埋蔵物文化財センターの理事長で、札幌国際大学教授である越田賢一郎氏が講師を務められた。
※ 講師を務められた越田賢一郎札幌国際大学教授です。
「北海道・北東北の縄文遺跡群」は北海道・青森県・岩手県・秋田県の1道3県の縄文遺跡群で構成され、関係道県の関係者らによって早くから世界遺産登録(文化遺産)をめざしていた。ところが、これまで国内での暫定リストには掲載されてはいるものの、5年連続してユネスコへの推薦を見送られてきている。今年度も審議の対象にはなったものの、自然遺産候補だった奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島に先を越されてしまったことは記憶に新しいところである。
※ 北海道・北東北縄文遺産群の構成遺産(青色)を示す図です。
越田氏が「北海道・北東北の縄文遺跡群」の最も大きな価値として強調したのは歴史的におよそ10,000年前からの遺跡を対象としている点を強調された。というのも、現在世界登録されている1,092件のほとんどが紀元前、あるいは紀元後の2~3,000年前後のものがほとんどである(文化遺産を指す)のに対して、そのずーっと以前からの人間の営みを対象としていることに意義があるとされた。
北海道・北東北においては、氷河期から温暖期に移行したことに伴い、人類の居住が可能となったことからおよそ10,000年前ごろから住み着いたとされる遺跡が次々と発見されたことによって、北の地においても縄文文化が花開いたことに意義を見出そうとしているということのようだ。
※ 構成遺産の一つ函館市の大船遺跡です。
講義はその後、「北海道・北東北の縄文遺跡群」を構成している一つ一つの遺跡について説明をいただいた。それらはきっと考古学に関係する研究者、または考古学ファンにとってはたまらないものだと思われるが、私のような門外漢にはいま一つその重要性が理解できないままお聞きしていたことも事実だった。
※ 構成遺産の一つ伊達市の北黄金貝塚です。
さて、「北海道・北東北の縄文遺跡群」がなぜ関係者の熱意にもかかわらず6年も続けて推薦が見送られてきたのだろうか?それは国内の審査において、日本国内には縄文遺跡が約9万個所もある中から、「なぜ4道県のみの縄文遺跡が対象となるのか」についての十分な理解が得られていないところが大きな理由の一つのようである。そのような疑問に対して、関係者からは当然説明もされているであろうが、なお一層の理解を求める努力が必要ということのようだ。
さらに高いハードルとなるのが、前記したように現在登録されている世界遺産が1,092件と、世界的に飽和状態になっていることがある。そのため、ユネスコでは各国の推薦数を年間一つに制限することになり、登録にも慎重になってきたことがあるようだ。
「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界遺産登録のためには高いハードルが待ち受けているが、ぜひそのハードルを乗り越えて登録される日が一日も早いことを祈りたい。