メディアでは観測史上もっとも温かい12月などと、気候の不順を伝えている。今や地球温暖化は既定の事実の様相さえ呈している。そんな中、北海道内関係者が集いさまざまな角度から地球温暖化への適応策を探るセミナーに参加した。
11月30日(金)午後、札幌アスティ45の16階大研修室において、環境省北海道事務所が主催する「気候変動の影響への適応に関するセミナー ~変化する気候と北海道のこれから~」と題するセミナーに参加した。受講対象は研究者や関係する企業の方々で、私のような一般参加者は少数のようであった。
セミナーのラインナップは次のとおりだった。
◇講演 Ⅰ「氷河減少を追うドキュメンタリー制作の現場から」
(株)北海道テレビ放送 報道部プロデューサー 濱中貴満 氏
◇講演 Ⅱ「気候変動下における季節ごとの適応策~地理空間情報等の利用~」
横浜市立大学 データサイエンス学部 教授 大西暁生 氏
◇講演 Ⅲ「気候変動の日本酒製造への影響」
(株)高砂酒造 執行役員・企画部部長 廣野 徹 氏
◇講演 Ⅳ「味の素グループの気候変動への取り組み・緩和策と適応策」
(株)味の素 広報部シニアマネージャー 太田史生 氏
その他に短い2本の報告があった。
講演Ⅰは、主として映像を用いてのお話だったが、スイス、アイスランド、パタゴニアにおける氷河が激しく溶解する様子を写し出すものだったが、私はその映像を既視感を抱きながら見つめた。既視感とは…、映画「不都合な真実 2」や「地球が壊れる前に」で映し出された映像と何ら変わるところがなかったからである。
こうした映像を何度も見せられても経済至上主義の人たちはまだフェイクニュースだと言い張るのだろうか?
講演Ⅱは、気候変動は単に地球温暖化にとどまらず、都市温暖化をもたらしていると講師は説いた。このメカニズムについても多くの人の知るところである。地球温暖化によって気温が上昇すると、ビルが林立する都市においては熱の逃げ場がなく、ヒートアイランド現象を引き起こし、加速度的な気温上昇を招いているとした。
そして大西氏は対応策として、夏季のおける植物の機能に注目すべきとした。(グリーンインフラストラクチャー)行政・学術・民間がタッグを組んで、都市の緑地を増やすことにより、気候変動からの影響を少しでも和らげることができるとしたが、聞いていた私は「どれだけ有効なの?」とも思ったのだが、確かに鹿児島市なとは電車軌道内を芝生化している例も聴いているが…。
氏が最後に言った「気候変動(環境変化)による影響を事前に把握し、対応することで影響を和らげることができる」ということには大いに納得できた。
講演Ⅲの高砂酒造は、「雪中貯蔵」とか、「氷雪囲い熟成」など雪氷を活用した酒造りで有名な酒蔵である。しかし、近年の温暖化によってそうした手法による酒造りが困難になったと報告された。
そこで現在は、比較的温暖化の影響を受けにくい鍾乳洞の中で貯蔵する試みに挑んでいるそうだ。名付けて「当麻鍾乳洞貯蔵」と称して「龍乃泉」という商品名で販売を開始したという。また、自然ではなく氷温庫を使用して「氷温貯蔵」にも取り組み始めてそうだ。
これらは適応策というよりは回避策のように聞こえてしまったが、温暖化を前にしたとき企業としては仕方のない選択ということだろう。
講演Ⅳの味の素は、食品製造企業として誰もが知る世界的企業である。業態が食品とあって、地球温暖化という問題にはセンシティブな対応が求められるであろう。講演を伺うと同社では多彩に温暖化に対応しているようである。
聞いていただけではその詳細の全てを把握できなかったが紹介された同社のサイトを伺うと、◇持続可能な原料調達、◇フードロスの半減、◇カーボンニュートラル、◇持続可能な水利用、◇資源化と3R、等々に取り組んでいるということだ。
さて、本セミナーの大命題でもある「~変化する気候と北海道のこれから~」についてであるが、現実として気温が徐々に上昇傾向にあることはいまや疑うべくもない現実である。このことに対して企業も、地方公共団体も、そして個人としても、その元凶とされているCO2の削減に努力することが求められていると思う。
と同時に、横浜市立大の大西氏が説いた「気候変動による影響を事前に把握し、それに対応する施策を講ずる」ことが現時点で考えられるベストの選択では、と考えた今回のセミナーだった。