お恥ずかしながら今日から母を詠んだ「短歌」を紹介していきます。
前から言っていますように、およそ短歌らしくはなく、ただ五七五七七という形式をとっているというだけであり、かつうまい下手は全く関係なく(どちらかといえば、下手としか言いようがありませんが)、そういう次元の問題ではない、うまい下手を超越したものと言った方がいいのでしょうか、くどいようですが、短歌としての出き不出来ということは一切無視して欲しいと思いますのでよろしく。
【平成12年(西暦2000年)】
① 1月1日;
いつもなら言われなくても用意して孫に渡すはずお年玉なし
平成12年のお正月です。母は満82歳。いつもならきわめて少ない年金収入ですが、そこから内孫である私の二人の子どもに、多い少ないは別として、きちんとお年玉を用意して渡していました。
でも、この年からお年玉を渡すことはなくなりました。
② 2月8日;
○×ちゃんがベッドの下に寝ていると寒いだろうと一緒に寝てる (○×は県外にいる娘(私の姉)のこと)
母は、1階の6畳の間にあるベッドで寝起きしていました。このときは、母の部屋を覗いたところベッドではなく、ベッドの下の畳に寝ていたので、どうしてそんなところで寝ているのかと聞いたところ、返ってきたのが「娘が寝ていて寒いだろうから一緒に寝ているのだ」ということばでした。
これは幻視以外のなにものでもありません。幻視や幻覚はこれから一杯現れてきます。
③ 3月1日;
今日より弥生三月春間近痴呆進む母徘徊もまた
このときは母は元気でしたから、いわゆる徘徊をはじめました。うちのなかでもいっときもじっとしているということはなかったのです。
この時期は、まだコタツをしていたはずで、コタツに入ってお茶でも飲んで、テレビを見てゆったりしていてくれと思うのだが、母は落ち着かずに、出たり入ったり、何しろ動き回るのです。
本当にこっちはいらいらさせられました。ストレスがたまる一方でした。
④ 3月4日;
怒鳴り合いまた繰り返す実の母何故か分からぬ年(歳)を経たのに
③のように全くじっとしていることがないので、こっちはいらいらし、ついつい大声を出してしまいます。大声を出したからといって、分かってくれるということは全くありません。
息子から怒鳴られたら母だって面白くない、当然大きな声で文句を言ってくる、反抗してくる。
お互いいい年(歳)をしているのに、母と息子が怒鳴りあう、本当に空しいものです。なんで、こんなことをし合わなければならないのか、落ち込んでしまいます。
⑤ 3月19日;
高速道飛ばして南下白石市パッと広がる真白き蔵王
これは、東北自動車道を走って県南の白石市に行ったときのものです。白石市は、母の実家です。このときは、母の兄夫婦がまだ健在でした。
少しでも親孝行をしておこうと、母を実の兄貴のところに連れて行きました。二人の話を聞いているとおもしろいものがありました。
この時の母は、およそ痴呆とは関係ないような状態で、兄とゆっくりと取り留めのないことを話します。
白石市が近付くと、右側(西側)に雪で真っ白くなった蔵王連峰が見えてきます。空気が澄んでいるときには本当にきれいに、神々しくさえ見えます。
母が子どものときに見たであろう、そういう蔵王連峰の雪景色を見せれば、何か心に感じるものがあるのではないか、もしかしてそれがいい方向に作用してはくれないものかなんて甘い考えをもったりもしました。
写真は、広瀬川の標識(その5)です。記事とは全く関係がありません。