『戦争の克服』
阿部浩己・鵜飼哲・森巣博、2006、『戦争の克服』、集英社新書
本書は、オーストラリア在住の賭博師こと森巣博を中心に、国際法学者の阿部浩己と哲学者の鵜飼哲の三人が911事件以後の世界の政治状況を踏まえ、国際法誕生の歴史と戦争の意味の変容について、現在の日本政界へのさまざまな疑問符をあわせて語られる。対談、鼎談は2003年から2004年にかけて行われていて、イラクにおける日本人三人の人質事件などホットな話題が語られているにもかかわらず、なぜ、今年6月になって出版されたのか。せめて、2004年末に出版されたほうが、インパクトがあったのではないか?本書で触れられる日本のジャーナリズムのふがいなさの一端がこの出版遅延の理由でもあるのかとかんぐりたくなる。しかし、おそらく、これは下司のかんぐりで、著者らの多忙によるものであろうが・・・。
本書のキモは、殺人と戦争、死刑を同一の視点で捉えようとすることか。森巣は、最後に谷川俊太郎の詩の一部「暗殺は一人が一人を殺すこと、戦争とは万人が万人を殺すこと、死刑は万人が一人を殺すこと」を引いて本書を結ぶ。殺人や戦争を忌み避けることは、それは、死刑をも忌み避けることでなければならないと言うのである。人が人を殺すことを社会規範に反するとして罰することは、いかなる理由の戦争を避け戦争に加担するものを罰しなければならないが、かといって、最高刑として死刑をよしとすることは、戦争を許容し、殺人をも許容することになるはずである。
本書は、オーストラリア在住の賭博師こと森巣博を中心に、国際法学者の阿部浩己と哲学者の鵜飼哲の三人が911事件以後の世界の政治状況を踏まえ、国際法誕生の歴史と戦争の意味の変容について、現在の日本政界へのさまざまな疑問符をあわせて語られる。対談、鼎談は2003年から2004年にかけて行われていて、イラクにおける日本人三人の人質事件などホットな話題が語られているにもかかわらず、なぜ、今年6月になって出版されたのか。せめて、2004年末に出版されたほうが、インパクトがあったのではないか?本書で触れられる日本のジャーナリズムのふがいなさの一端がこの出版遅延の理由でもあるのかとかんぐりたくなる。しかし、おそらく、これは下司のかんぐりで、著者らの多忙によるものであろうが・・・。
本書のキモは、殺人と戦争、死刑を同一の視点で捉えようとすることか。森巣は、最後に谷川俊太郎の詩の一部「暗殺は一人が一人を殺すこと、戦争とは万人が万人を殺すこと、死刑は万人が一人を殺すこと」を引いて本書を結ぶ。殺人や戦争を忌み避けることは、それは、死刑をも忌み避けることでなければならないと言うのである。人が人を殺すことを社会規範に反するとして罰することは、いかなる理由の戦争を避け戦争に加担するものを罰しなければならないが、かといって、最高刑として死刑をよしとすることは、戦争を許容し、殺人をも許容することになるはずである。
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