『夜中に犬に起こった奇妙な事件 新装版』
マーク・ハッドン、2007、『夜中に犬に起こった奇妙な事件 新装版』、早川書房
養護学校に通うクリストファーは、家族との関係も決まりきった手順なしにはつきあっていくことができない。かれは、他者の行動を読み取ることができないので不安パニックを引き起こさないためにも、決まりきった手順は絶対に必要だ。だから、彼の周りにいる人が、彼のことを理解し、あわせてくれることも大切だから初対面の人とは付き合っていくことはできない。
本書は、クリストファーが書いたミステリーという体裁をとっている。書き進められる各章の番号は素数、本書の各所にはかれの持つ特別な数学能力を示す数学の問題も書かれている。彼は、サヴァンなのだ。定理によって構成され、解は一つ(解がないというのも解)である数学にくらべて、日常生活はカオスそのものだ。数学的なカオスは明快な方程式によって示すことができるが、日常生活はそうすることができない。彼の日常は他人の存在によって常にかき乱されてしまう。
そうした彼のもとに、ただでさえ彼にとってはカオスそのものなのに、さらに彼の日常生活をかき乱す出来事が様々起こってくる。
(1)ママが心臓麻痺で死んだ(と、パパはいう):本当は家をでてロンドンで暮らしている
(2)お向かいの家のプードル犬のウェリントンが殺された:犯人探しの過程を記録するために本書を書いた
(3)パパが真相を話した(ネタバレなので、伏せておく)ので、クリストファーは家出をして、ロンドンに向かう
(4)家出の一件の後の混乱、その中で、苦しみながらも上級数学試験を受験し、すべてAをとる
(5)本書を書き上げ、そして、大人になったら科学者になると心に決める
彼のパニック症候群は治ることはないが、それとつきあって、乗り越えようとする意思が生まれる過程が、本書のなかで一人称で描かれていくのだが、この淡々と詳細を記述するスタイルが、心を打つ。
クリストファーは病ではない。同情や哀れみも必要はないだろう。われわれは、人間理解の幅を広く持つこと、つまりは、クリストファーのような人も同じ空気を吸っていきていると理解することが、むしろ大切なのだ。心して読むべし。
ウィキペディア:サヴァン症候群:http://ja.wikipedia.org/wiki/サヴァン症候群
そういえば、ずいぶん前に読んだけれど、どういう具合にここで書いたものかと思いほうっているうちにわすれていた。ここで、類書として『もし、みんながブッシュマンだったら』をあげておきたい。こちらもあわせてどうぞ。
養護学校に通うクリストファーは、家族との関係も決まりきった手順なしにはつきあっていくことができない。かれは、他者の行動を読み取ることができないので不安パニックを引き起こさないためにも、決まりきった手順は絶対に必要だ。だから、彼の周りにいる人が、彼のことを理解し、あわせてくれることも大切だから初対面の人とは付き合っていくことはできない。
本書は、クリストファーが書いたミステリーという体裁をとっている。書き進められる各章の番号は素数、本書の各所にはかれの持つ特別な数学能力を示す数学の問題も書かれている。彼は、サヴァンなのだ。定理によって構成され、解は一つ(解がないというのも解)である数学にくらべて、日常生活はカオスそのものだ。数学的なカオスは明快な方程式によって示すことができるが、日常生活はそうすることができない。彼の日常は他人の存在によって常にかき乱されてしまう。
そうした彼のもとに、ただでさえ彼にとってはカオスそのものなのに、さらに彼の日常生活をかき乱す出来事が様々起こってくる。
(1)ママが心臓麻痺で死んだ(と、パパはいう):本当は家をでてロンドンで暮らしている
(2)お向かいの家のプードル犬のウェリントンが殺された:犯人探しの過程を記録するために本書を書いた
(3)パパが真相を話した(ネタバレなので、伏せておく)ので、クリストファーは家出をして、ロンドンに向かう
(4)家出の一件の後の混乱、その中で、苦しみながらも上級数学試験を受験し、すべてAをとる
(5)本書を書き上げ、そして、大人になったら科学者になると心に決める
彼のパニック症候群は治ることはないが、それとつきあって、乗り越えようとする意思が生まれる過程が、本書のなかで一人称で描かれていくのだが、この淡々と詳細を記述するスタイルが、心を打つ。
クリストファーは病ではない。同情や哀れみも必要はないだろう。われわれは、人間理解の幅を広く持つこと、つまりは、クリストファーのような人も同じ空気を吸っていきていると理解することが、むしろ大切なのだ。心して読むべし。
ウィキペディア:サヴァン症候群:http://ja.wikipedia.org/wiki/サヴァン症候群
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そういえば、ずいぶん前に読んだけれど、どういう具合にここで書いたものかと思いほうっているうちにわすれていた。ここで、類書として『もし、みんながブッシュマンだったら』をあげておきたい。こちらもあわせてどうぞ。
もし、みんながブッシュマンだったら菅原 和孝福音館書店このアイテムの詳細を見る |