ケネス・ブラナーの自伝的作品という、オスカーの脚本賞(2022年)の作品。1960年代の北アイルランド紛争を背景にプロテスタントとカトリックの抗争の中で育ったバディ少年を主人公に描く。懐メロが流れ、モノクロのシーンは美しく懐かしい。
最後近くのシーンで、バディ少年がガールフレンドに別れを告げたとき、不起訴ってくれた父に、「あの子はカトリックだけどいつか結婚できるよね」と問いかけ、父は、「たとえ、ヒンズーであろうと、反キリスト者であろうと、お互い寛容であれば、親戚づきあいできるだろう。告解しなければならないのは、ちょっと問題だな」と冗談交じりにバディにつげる。
ベルファストの街でともに暮らしていたプロテスタントとカトリックに裂け目をもたらし暴力を呼び込んだのはなにか、それについての突っ込みはよわいが、ノスタルジアに溢れた作品だった。そして、ラストシーンのメッセージ、「残った者、去った者、そして失われた者」に捧げられる。