東京里山農業日誌

東京郊外で仕事のかたわら稲作畑作などをしていましたが、2012年4月に故郷の山口県に拠点を移して同活動をしています。

霧雨下、小学生の田んぼ草取り

2007年07月17日 | 農業体験

 台風が過ぎた直後で雲行きが怪しいため、予定通り小学生達が田んぼの草取りできるか心配でした。早朝、少雨でしたが天気が悪くても草取りを実施すると小学校から電話が入りました。
 子供達が到着するころには雨もあがり霧雨となりました。5年生3クラスの生徒,先生,保護者を合わせて総勢約100人で田んぼに来て草取りをしました。最初に2組と3組が列になってやってきました。簡単に挨拶をしたのち、自分達が田植えしたそれぞれのクラスの田んぼに入って草取りを始めました。続いて1組が遅れてやってきました。3クラスが同時に草取りをしたことは初めてのことです。とてもにぎやかで、田んぼを囲む山に子供達の歓声が響きました。

      最初2組の生徒達を誘導、畦を一列になって田んぼに向かう


 2組の次に、3組が畦を伝って自分達が田植えした田んぼに向かいました。時折雨がぱらつく霧雨の中をカッパをきて草取り開始です。田んぼに入ることは初めてではありませんが、水が満ちた田んぼにためらいがちに足を入れます。田植えの時は雨が少なく田んぼには水が少なかったのですが、今日は先日の台風で水がなみなみと満ちていました。

           ためらいがちに田んぼに入る3組の生徒達


 田んぼに入る前に田んぼの草取りの方法を教えました。雑草といっても多くは水草(今年はコナギという雑草が繁茂)ですので、畑や庭の雑草のように引き抜く必要はありません。水面下に生えている雑草を、泥と一緒にかき混ぜるようにして根ごと水面に浮かせます。根ごと浮いた雑草は枯死します。また浮かせないで足を使って泥の中に押し込む方法も教えました。

            稲の株間を歩きながら雑草を取っている子供達


 肌寒い天気のため、子供達は元気がないのではないかと思っていました。しかし、思った以上に元気に田んぼ内を歩き回っていました。そして、草取りと平行して自分達の楽しみを見つけたようです。稲に住むクモを見つけたり、水中を泳ぐおたまじゃくし,タニシなどを見て喜んでいました。また、素足の歩く田んぼの泥の感触を楽しんでいるようでした。白い沢ガ二(アルビノ?)が田んぼの中を走っていましたが、子供達に踏みつぶされないようにあらかじめ捕まえて田んぼ脇の小川に放しました。

             草取りも終盤に入り仲良し組みで田んぼ内を散策


 私が子供の頃、田んぼや川では男子が主にはしゃいで女子はおしとやかでした。しかし、今の子供達は男子も女子も同じようににぎやかのようです。むしろ、女子の歓声のほうが耳に残るほど響きます。

           みんな楽しそうに草取り。草取りというより田んぼ遊びかな。


 草取りを始める前、田んぼの水は透き通っていて水の底が見えていました。しかし、子供達が入るととあっという間に濁ってしまいました。濁ると水面下に生える雑草が見えなくなるので、子供達は探すのに一苦労。水面上に出た大きい雑草だけしか取れなくなります。

     草取りはちゃんとできたかな      田んぼの泥に慣れたかな
 

 草取りも終盤に入ると、田んぼ全体がすっかり濁ってしまいます。水面下の雑草を見つけることが難しくなります。しかし、子供達が大勢で田んぼを練り歩くだけで雑草を踏み荒らすことになり、結果としてそれが除草になります。

          終盤、濁った田んぼ内を練り歩く3組の子供達


 森に近い田んぼでは2組の生徒達が草取りです。ここの田んぼは水深がやや深いので草取りはやや困難です。手をぐっと水面下に入れないと、泥中の雑草に手が届きません。しかし、水深がやや深いメリットとして雑草はあまり生えないことです。

         草取りを始めた2組、水深がやや深く草取りしずらかったかな


 先日の台風で大量の雨水が田んぼに流れ込んでいたので、稲にはちょうどいい水深になっています。水深が常に10cm以上あると雑草は生えにくくなります。2組の田んぼは田植え時に水深が浅かったので少し雑草が生えてしまいました。しかし、この水深が続くならばこれからはあまり雑草は増えないと思います。

          水深がやや深いので、歩きづらい田んぼ


           終盤に近づいた2組の草取り、草は取れたかな


 1組は他のクラスより遅れて田んぼに到着しました。挨拶も早々に草取り開始です。持ってきた荷物をブルーシートに包んでサンダル履きになりました。田んぼの畦を通りますが、他のクラスが何人も通ったため滑りやすくなっています。平均台の上を歩くような要領で恐る恐る畦を歩いて田植えした田んぼに向かいました。

     増水で水没した畦を恐る恐る歩く     みんなの列に並んで一安心
 

 他のクラスと同様に最初草取りの要領を教えました。ここの田んぼは日当たりが良い代わりにたくさんの雑草が生えています。特に多いのでコナギという水草の雑草です。この雑草は大きく育つとホテイアオイに似ていて、可憐な紫の花を咲かせます。しかし、田んぼの二大雑草のひとつです(もう一つの雑草はヒエ)。大きくなると猛烈に育ち稲の栄養を吸い取ります。稲が大きくなる前に除草しないと、お米の収穫が見込めません。

        みんな一列に並んで、自分達が田植えした田んぼの草取り開始

 畑や庭の雑草は引き抜いて除草しますが、田んぼでは草を根ごと水面上に浮かせて除草します。浮いた雑草は枯死して田んぼの栄養になります。雑草は無数に生えていますし濁って見えなくなると一本一本抜いていられません。手で稲の株元を泥ごとかき混ぜるようにして雑草を根ごと水面に浮かせます。浮いた雑草を見ると、緑の葉と同じぐらいの長さの真っ白なひげ根が付いています。

      背をかがめるような姿勢で稲の株元の泥をかきまぜて除草


 昔田んぼの作業の中でも草取りは一番の重労働でした。暑い夏、汗をしたたらせながら背をエビのように曲げての労働はとても辛いものです。広いすべての面の田んぼを残らず草取りするには朝から晩までの長時間労働です。8月に入って稲が成長すると、伸びて尖った葉の先が目に刺さるようになります。
 昔は背をかがめながら歩いていたお年寄りが多くいました。背が曲がった理由の一つに朝夕の辛い草取りがありました。私の祖母も曲がった背をしていました。今日草取りをした子供達には辛い作業には思えず楽しかったかも知れません。しかし、朝から晩まで、灼熱の日も雨の日も毎日続く作業だと知ったらどう思うでしょうか。

    みんな並んで仲良く草取り     疲れたかな?棒で体を支えて草取り
 

 1組の田んぼは雑草が比較的多く生えていました。このため、草取りをすると草が根ごと浮きあがってくるのが良くわかります。このためか、他のクラスよりも草取りが上手にできました。両手をしっかり水の中に入れて、稲の株元を泥ごとかき混ぜるようにして上手に草取りをしていました。

         両手をしっかり水に沈めて、草取りがとても上手にできました


 1組の田んぼもそろそろ草取り完了です。最初は丁寧に背をかがめて草取りしていましたが、田んぼが濁って雑草が見えなくなると稲の株元を歩きながらの除草です。子供が大勢で歩き回ると、雑草は踏まれたり泥中に押し込まれてそれが除草になります。

         背をかがめたり練り歩いたりして草取り、そろそろ草取りも終盤


 どのクラスも、次の授業に間に合うように一時間ほどで草取りは終了です。近くにはシャワーや水道のようなものはありません。泥で汚れた足やひざなどを綺麗に洗うため、草取りが終わると森沿いに流れる小川に向かいます。

         畦を一列になって、森沿いを流れる小川に向かう


 小川は先日の台風で水量が豊富です。流れる落ちる豊富な水で、足やひざに付いた泥はあっという間に洗い落とせました。子供達は遊びの達人です。足を洗い終わると、さっそく小川でキャーキャーと水遊びです。

           小さな滝になっている小川を登り降り


 小さな斜面の滝は子供達のお気に入りです。今日は水量が多いため、1m以上の幅の水が滝のように流れ落ちていました。水が流れる落ちる広幅のすべり台です。男の子も女の子も、水が流れる落ちるすべり台をウォータースライダーです。お尻がぬれてもへっちゃらです。

         男の子も女の子も、お尻を濡らして楽しくウォータースライダー


 草取りが終わって子供達を田んぼから送り出すと、いつもの静かさが田んぼに戻ってきました。草取りを終えた子供達は、帰ってから今日のことを生き生きと家族に伝えたことだと思います。
 何十年後の未来の子供達にも、今日来た子供達と同じ体験や遊びができる場所が残っているといいなと思いました。

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