この古い東芝製トランジスタラジオ 7TL-204Sの修理履歴です。それぞれをクリックしてください。
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中間周波増幅回路の断線していたコンデンサ0.05μFを交換したので、いよいよラジオに電気を繋いでみました。電池4個が電源ですので、定電圧電源装置の電圧を6Vに設定しました。そして、定電圧電源装置のメーターを電流に切り替えました。そして、一瞬ラジオに繋いでみました。これは、たまにラジオ内部でショートしていると熱を発生して煙が出たり、古いコンデンサが破裂することがあるためです。先日修理したカーラジオはまさに古い電解コンデンサがショートしていました。さいわいこのラジオは電流値は数mAしか流れず正常値でした。
定電圧装置からの6Vを、電池BOXに繋ぐ
ところが、6Vの電源を繋いで電源スイッチを入れても全くの無音でした。普通どんなラジオやアンプでも、電源を入れてスピーカーの音に耳をすますと、小さな雑音(ホワイトノイズ)がわずかに聞こえます。その小さな音が全く聞こえてきません。電流は流れているので、少しは電子回路が働いていると思われるので不思議です。そこで、低周波増幅回路をシグナルトレーサーで調べてみました。
すると面白い現象がおきました。低周波増幅回路初段の結合コンデンサに端子を当てると、いきなりその雑音が聞こえるようになることです。どうもその結合コンデンサの容量がゼロになっているようです。たまたま、シグナルトレーサーの端子を当てると、帯電するのかどうかの何らかの理由で電解コンデンサがわずかに生き返るようです。
6Vに設定した定電圧装置 端子を接触するとコンデンサが生き返る
シグナルトレーサーからシグナルインジェクタに切り替えて、低周波増幅回路のいろいろな場所に信号を注入してみました。すると、下図の右の電解コンデンサは容量がほぼ0、中と左の電解コンデンサはかなり容量低下していることが分かりました。特に右の電解コンデンサは取り替えないと音が出ないことが分かりました。
容量低下が認められた三つの電解コンデンサ、特に右は容量がほぼ0
たまたまこの東芝製トランジスタラジオ7TL-204Sの電子回路を知ることができました。不思議なことに、この電子回路ではトランジスタが6石です。同じ東芝製で同じ型名の、今修理しているラジオは7石です。違いは自励式か他励式かの違いです。最初7石他励式だったのが、途中から6石自励式になったのでしょうか。
黄〇は交換した0.05μFで、橙左上〇は容量0,他橙〇は容量低下のコンデンサ
トランジスタ数の違いの理由はこうではないかと思います。私のこのラジオは他励式で、混合と発振にそれぞれ2S27が使われています。ところが、2S27は性能が悪かったのか製造中止となり、のちに帰還容量が12PFから1.7PFに改良された2S28,2S29が開発されたようです。その後2S28はJIS規格で2SA58になりました。
このトランジスタの変遷を見ると、修理しているラジオは初期型の7TL-204Sではないかと思われます。トランジスタの性能が上がったことにより、原価が高い7石他励式から原価低減した6石自励式になったのではないでしょうか。
低周波初段増幅の結合コンデンサ 根本を残して結合コンデンサを外す
さて、低周波初段増幅回路の結合コンデンサが容量抜けしていたため、そのコンデンサを根元を残して取り外しました。そして、正常なコンデンサをストックしたものの中から探しました。同じ耐圧,同じ容量でずいぶんと大きさが違います。基板の裏側から取り付けできないため、残した線端に繋ぐように正常なコンデンサを取り付けました。
取り外したコンデンサは横型で、両端から線が出ていました。しかし、交換した正常なコンデンサは縦型です。取り替えると、何だか無様な感じです。しかし、コンデンサ交換により小さいながらも音が出るようになりました。
交換後の電解コンデンサ、ただ大きさや方向など見かけは無様!!
〇は残した線端に繋ぐように半田付けした個所