すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

拳魂にふれる

2008年12月19日 | 読書
 先月、二十数年ぶりに酒田にある土門拳記念館を訪ねた。

 出来上がった頃に一度行った記憶があったが、その当時は写真にあまり興味がなく、大きな仏像の写真に対しては「なんで、こんなの撮るのかねえ」という感じだったと思う。ただ、妙にメインホールに展示されてある場面だけは印象が強い。
 もしかしたら、それはやはり写真の力なのか、と考えるときもある。

 今回の展示は、風景写真であった。
 ホールいっぱいにその世界が拡がるようで、ああ素晴らしかった。
 自分自身が、素人写真として風景を撮っていることが多いからだと思うが、プロ、それも第一級の作品に触れることの楽しさを感ずることができた。

 売店で買い求めた一冊のハードカバー。 
 『拳魂』(土門拳著 世界文化社)
 内容は、昭和40年代のエッセイ等が中心である。
 写真論も多く、古さを感じさせない。また逆に当時の感覚がしみじみと伝わってくる生活場面が描かれている小文もあった。

 写真家の文章は数えるほどしか読んだことがないが、本質を鋭く語るという点では出色の書のような気がした。たとえば、次の表現はどうだ。私は唸らされた。

 動きがある。そして動きには必ず目標がある。写真は動きの目標を撮ることである。