すぷりんぐぶろぐ

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ハタハタの季節を取り戻した人

2008年12月13日 | 雑記帳
 娘が6年生のときの発表会だった。
 劇中の母親役になり、子ども役に夕飯は何かと尋ねられて答えたセリフが
 「ツケダ、ハタハタ、ダ」。
 会場からの笑いは、親世代以上がみんなそれを食して育ってきたことを物語っている。

 ちょうどその頃、秋田県ではハタハタの自主禁漁3年が終わり、この後どうなるかと行方を見守っていたころではなかったか。(獲れてはいたが、完全に高級魚だった)。
 あれから十余年が過ぎ、今また季節魚として食卓に上るようになった。

 他県の方からは想像できないほど、私たちのハタハタへの愛着は強い。
 獲れなくなったそしてまた獲れるようになったということは、実は様々な背景や尽力があると予想されるが、まさに一つのドラマのだなと、先日の話を聴いて感じた。

 秋田県水産振興センター所長の杉山秀樹氏の講演である。
 ハタハタ研究者として名高い氏は外国での講演経験もあるという。

 ハタハタは「鱩」と「鰰」という二つの書き方をする。この字源、語源も興味深かった。
 「雷」は県民なら承知していることだが、11月下旬からの雷が、ハタハタの押し寄せるサインになっていることと関連している。そもそも「雷」の古語は「ハタハタガミ(ハタタガミ)」であり、カミナリウオとはまさしくそうだろう。
 「神」の方は国字だが、正月前の民衆へ神のもたらす大量の海の恵み、という意味合いらしい。神という字を位置づけられた唯一の魚…いかにハタハタの存在が大きかったかを思い知らされる。

 禁漁を決断した漁師たちを盛んに称賛する氏だったが、おそらく絶えず情報を提供しつづけた氏ら研究関係者の熱意と尽力は見逃せない。
 そして、生物資源を守ると口で言うのは容易いが、継続されていくためには環境問題だけでなく、経済や政治の問題として目配りしなければならないことを今更のように思う。