すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

「考えない」は、よく考えるために

2010年07月18日 | 読書
 『考えない練習』(小池龍之介著 小学館)

 タイトルを見た瞬間に「いったい考えないことが練習できるものか」という疑念が浮かぶが、その惹きつける力はなかなかである。グッドネーミングだと思う。
 本の帯には「休脳のススメ」とあり、巻末にある脳研究者池谷裕二との対談で、「私としては、この帯はいかがなものか、と言うほかありません(笑)」と指摘されていた。それも真なりである。

 さて、考えないことなど出来ないに決まっていると思いながら、最初からページをめくってみたら、単純なものだからすぐ著者の考えに同調してしまう自分がいた。

 大きく方法は二つだろうか。

 一つは、五感を使うこと。つまり、考えることより感じることを優先してみよう…
 もう一つは、考えている自分のことを俯瞰すること。メタ認知などと言ってもいいのかしらん…

 そんなに新しい提言ではないのかもしれないが、実に具体的でそれも穏やかに書かれてあるので、何か引き込まれるように読んでしまった。

 結局、この本は「考えない」ことを売りにしている?が、本当は「よく考える練習」を書いているのだと思う。

 例えば、こんなふうに太字で書かれている箇所がある。

 「ありがとう」と言わずに感謝の気持ちを伝える工夫
 
 たしかに「ありがとう」はいい言葉であるし、それをさらっと言える人はいい習慣が身についているといってもいいかもしれないが、実は、考えもなく言っていないかという見方もできる。

 そんなふうに脳が使われている、一人歩きをしているとしたら、と疑うことができたのは収穫だ。

 言葉選びぐらいは(ぐらいではないだろうが)、しっかりと考えたい。
 そのために、すっきり思考できる習慣づくりが必要だ。
 脳は刺激を求めてあちこちさまようので、歯止めをかけること。

 「思考のノイズ」という言葉がやけに身にしみる。