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待て!転びの浅

2010年07月19日 | 雑記帳
 友人から送られた地域の文芸誌をめくっていたら、町内に住む方のある回顧録が載っていた。

 町議を経験された方が、この「政争の町」の歴史を振り返っているわけだが、小さい町ゆえ色々に見知った方の名前もあって、実に面白い。もっとも苦々しく感ずる部分もあることはあるのだが…。

 ある議員が対立する?グループの議員たちを揶揄して表している部分があった。その中に自分に近い親類筋の名を発見して驚いた。

 「転びの浅」

 ああ、これは「浅」という名前からして間違いない。私の祖母の弟にあたる人だ。どう転んだかは昔のことであり定かではないが、ずいぶんと皮肉られたものだ。
 私にとっての大叔父は、いかにも田舎の政治家であり、豪放磊落に見えて、反面人を信じやすく騙されやすいようにも見えたのだが…。

 父も祖父も小さいときに亡くなった私にとっては、一つ何か重石のような存在でもあっただろう。
 大きな身体で自転車の車輪をつぶしながら、毎日のように隣地区から我が家へやってきていた。
 二十数年前の結納の席で、酔っ払いながら当時流行っていた演歌「さざんかの宿」の歌詞の中味を非難して結婚の正しい意義を?唱えた姿が未だに忘れられない。

 その大叔父も亡くなって二十年近く経つが、今朝久方ぶりに夢の中に登場してきた。

 それは何かの宴会の場面であった。折り詰めの数やら値段のことで揉めていた場面であり、揉め事を作った当人のような気配になっていた。
 結局、何も語らず奥に引っ込んでいこうとするところに、私がかけた一言は
 「待て!転びの浅!」だった。

 いやいや大叔父の配役には失礼してしまったが、ネーミングの持つ強さにほとほと感心してしまった。
 転びの浅か。今さら知ったことを冥土からどんなふうに眺めているだろうか。