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コミュニケーションへの様々な道

2010年07月15日 | 読書
 『間の取れる人 間抜けな人~人づきあいが楽になる』(森田雄三著 祥伝社新書)
 
 題名だけを見ると、ありがちな会話術やコミュニケーション技法などのマニュアル的な内容を予想するだろうが、そうした類の本とは言えない。

 著者は、イッセー尾形の一人芝居の演出家である。30年以上のコンビであることから、もはやもう一人の「イッセー尾形」であると言い切っても間違いではないだろう。

 素人を集めた演劇ワークショップをやっていることは知っていたが、そこで行われていることを書きながら、コミュニケーションとは何か、人づきあいとはどうあるべきかを語っている。

 この本の表記には特に目立つことがある。
 それは尋常ではないほどのカギカッコの多用である。
 私も他の人と比べると、カギカッコを多く使う方だと思っている。その訳は強調であったり、通常の意味と少し距離を置いたり、という用い方と言える。
 だから、その部分は注意して読むべきであり、若干の立ち止まりが必要なわけだが、あまりにも多いとちょっとぎくしゃくするかなというイメージをうける。

 そういう表面上の問題はあるにしろ、一歩書いている中味に立ち入ると実に興味深い。
 第一章の副題はこうある。

 コミュニケーションの極意は「しゃべらないこと」にあり
 
 この逆説的な言い回しがどういう意味か、ワークショップのこと、イッセーの芝居のこと、近代小説家の書いた文章の分析などを折り込みながら、じわりじわりと理解できるようになる。

 総じて言えば著者は、「正」や「動」や「積極性」に対する「負」や「静」や「消極性」のエネルギーに目を向けようと言っているのだと思う。
 みんなが同じ方を向いて、明るく積極的に表現することばかりではいけない、「話し方」を学ぶことがコミュニケーションへ通ずるわけではないという。

 深く心に残ったのは、次のフレーズ。

 人の理解の仕方は、「やるタイプ」と「見るタイプ」に分けられる。
 
 様々な子どもと接してきて、一面的に「理解が遅い」などと決めつけてはいないか。
 ちょっとびくっとした気持ちで読んだ。