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道具を武器と意識する

2011年11月15日 | 読書
 『武器としての決断思考』(瀧本哲史 星海社新書)

 先週の休日、大会応援の隙間時間に立ち寄った書店の新書コーナーでたまたま見つけた。複数の方々がネット上で紹介していたので、さてどんなものやらと買い求めてみた。
 
 「ディベート=意思決定のための具体的方法」ととらえて、詳しく論を進めている。非常に実際的でわかりやすく、一本ぴしっと芯の通っている好著だと思った。ぜひ娘に薦めたい(もう手遅れか、笑)。

 個人的に興味深く読んだのは「情報収集術」の章で、インタビューが取り扱われている箇所である。

 どんな人も「ポジショントーク」しかしない

 インタビューは「ナメられたもん勝ち」


 この小見出しは結構深い。
 ここでは企業での勤務上のことや人生計画などが例にだされているが、私がふっと思ったのはこれは教育研修としても十分使えるなあということ。

 この頃、学校や所属している組織などで講師を迎えて研修をするとき、質疑応答の進行をすることが多い。これは単なる司会ということでなく、講話の内容をさらに突っ込めるような意図で行っているの、やはり事前準備なしにはできない。
 ある程度のリサーチをしながら、予想される展開からいくつかの項目をピックアップしてみる作業をしている。
 どんなふうに尋ねるか、広げるかはその時次第だか、原則的なことがこの著には書かれていると思った。

 結論ではなく「理由(根拠)」を聞く

 一般論ではなく、「例外」を聞く


 誰しもポジションで語ることは避けられないのだとしたら、理由・根拠こそ聞く者にとって共通性を見いだしやすいもの、例外こそその方法等の特徴を見いだしやすいものではないか、そんな発想が浮かぶ。
 遅ればせながら自分もそうした技に磨きをかけたい。

 そう書いてみて、この本の書名にある『武器』という言葉が気にかかってくる。
 比喩には違いないが、それに著者の一番の思想が表れているのではないか。

 道具と武器では道具が上位概念であるから、武器と限定したことに、著者の強い意図がある。
 一つは「はじめに」に記されている。

 自由と解放を求めて自ら戦場に立たなければならない

 つまり、そういう社会認識への背中押しである。

 もう一つは有効な道具を手に入れた者は、その力を使って生きていく、戦っていくという信念である。

 伝える者のエネルギーによって左右されるその教育効果こそ、私たちが意識しなければならないことである。