一時期、「システムとレパートリー」が実践上のキーワードだった。
学級の中にシステムを作ることを当然と思い、それは今も変わってはいない。スムーズに動く仕掛けと言い換えてもいいかもしれない。そのこと自体に疑問はない。
しかしこの「システム」が大きい規模をもつ時、そこに自分がいることの(きっと様々なシステムがめぐらされている)不気味な感覚を味わわせてくれる小説…そんなふうに形容してもいいかもしれない。
『モダンタイムス(上・下)』(伊坂幸太郎 講談社文庫)
チャップリンの名作と同題名であることが、すでにこの話の骨格を見せているような気もする。
機械化文明の発展における人間性の疎外…言葉にしてみると、とても立派で雄弁な?イメージになる。それゆえとも言えるが、その文明を享受している者にとっては実際あまりぴんと来ていないのではないか。
この小説では、具体的にネットの検索というシステムによって翻弄されていく主人公たちの姿が描かれる。
エンターテイメントの要素が強いので、派手な舞台設定をしているが、実は私たちの身近な問題とつながり合っている面は多い。
ネット通販などを利用したときに、その履歴や検索状況によって「おすすめ」メールが頻繁に送られてくるようになっている。これに対して親切、便利なように見えて、少しの怖ろしさも裏打ちされているように感じるのは自分だけだろうか。
これは誘導であり管理ではないのか。
見える形で選択自由と思いこまされている、見えない力ではないのか。
また、私たちも一つの大きな組織、システムの中で仕事を得ているわけであり、次の言葉は冷静に受け止められているだろうか。
主人公を取り巻く奇妙な輩が吐く言葉が、妙に説得力を持つ。
細分化された仕事を任された人間から消えるのは…『良心』
これはもしかしたら、日常の些細な業務にさえ言えるのかもしれない。
そして、そのことに時々気づく自分が、システムが悪い、それを作ったのは誰かなどと少し声を荒げてみても、そんな声は行き場を失っていることは、明らかだ。
岩手に住む老婆は真実をこう語る。
独裁者なんていない。おまえのせいだ!と名指しできる悪人はどこにもいない
結局、この小説の結論も、関連が深いとされる『魔王』と同じく「考えろ、考えろ」ということになるのかもしれない。
ただ、逃げ延びた『ゴールデンスランバー』の主人公も、この『モダンタイムズ』の夫婦も、いつか何かやってくれそうと思わせてくれる。国家や時代と対峙していく小さな熱を持つ存在がいることに勇気づけられる。
学級の中にシステムを作ることを当然と思い、それは今も変わってはいない。スムーズに動く仕掛けと言い換えてもいいかもしれない。そのこと自体に疑問はない。
しかしこの「システム」が大きい規模をもつ時、そこに自分がいることの(きっと様々なシステムがめぐらされている)不気味な感覚を味わわせてくれる小説…そんなふうに形容してもいいかもしれない。
『モダンタイムス(上・下)』(伊坂幸太郎 講談社文庫)
チャップリンの名作と同題名であることが、すでにこの話の骨格を見せているような気もする。
機械化文明の発展における人間性の疎外…言葉にしてみると、とても立派で雄弁な?イメージになる。それゆえとも言えるが、その文明を享受している者にとっては実際あまりぴんと来ていないのではないか。
この小説では、具体的にネットの検索というシステムによって翻弄されていく主人公たちの姿が描かれる。
エンターテイメントの要素が強いので、派手な舞台設定をしているが、実は私たちの身近な問題とつながり合っている面は多い。
ネット通販などを利用したときに、その履歴や検索状況によって「おすすめ」メールが頻繁に送られてくるようになっている。これに対して親切、便利なように見えて、少しの怖ろしさも裏打ちされているように感じるのは自分だけだろうか。
これは誘導であり管理ではないのか。
見える形で選択自由と思いこまされている、見えない力ではないのか。
また、私たちも一つの大きな組織、システムの中で仕事を得ているわけであり、次の言葉は冷静に受け止められているだろうか。
主人公を取り巻く奇妙な輩が吐く言葉が、妙に説得力を持つ。
細分化された仕事を任された人間から消えるのは…『良心』
これはもしかしたら、日常の些細な業務にさえ言えるのかもしれない。
そして、そのことに時々気づく自分が、システムが悪い、それを作ったのは誰かなどと少し声を荒げてみても、そんな声は行き場を失っていることは、明らかだ。
岩手に住む老婆は真実をこう語る。
独裁者なんていない。おまえのせいだ!と名指しできる悪人はどこにもいない
結局、この小説の結論も、関連が深いとされる『魔王』と同じく「考えろ、考えろ」ということになるのかもしれない。
ただ、逃げ延びた『ゴールデンスランバー』の主人公も、この『モダンタイムズ』の夫婦も、いつか何かやってくれそうと思わせてくれる。国家や時代と対峙していく小さな熱を持つ存在がいることに勇気づけられる。