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日用品に向けられる言葉

2013年05月29日 | 読書
 雑誌『ブルータス』の表紙のキャッチコピーには、いつも唸ってしまう。自分の好みとその範囲が似通っているのだろうなあ。

 今回のコピーは、こうだ。

 尊敬できる「日用品」。

 二つの言葉の意味を、念のために確かめる。

 【日用品】日常の生活で使う、こまごまとした品物(広辞苑)
 【尊敬】他人の人格・行為などをとうとびうやまうこと。(広辞苑)


 「日用」と「尊敬」は両立しにくいというイメージが底にあるので、このコピーはひねりが効いている。
 そして、「日用品」といっても、ピンからキリまであることを私達は知っている。
 いわば百円ショップに並ぶ安価な日用品から、どこぞのデパートに陳列ましますブランド製の高級日用品まで…。しかし一般的に考えれば、それほど高価では一般大衆は「日用品」と呼ばない気がする。
 従って線引きはできないが、種類に応じた一定の価格以下の品物というのが妥当なところではないか。

 「尊敬」はどうだ。
 対象が人であれ、物品であれ、尊敬とはいかなる感情か。
 操作性、耐久性、に加えて見た目、つまり美しさも入ってくるだろう。
 そういえば、と思いだす言葉がある。

 用の美

 素晴らしいコピーだなと改めて感じいる。

 扱いやすさ、丈夫さ、そして飽きのこない、いわばシンプルを基調にした美しさ。
 美は、動的な面と静的な面の重なりから紡ぎだされる。

 人間に喩えるなら、常には動いていて、健康で、飾り気のない素朴な輝きを持つ人か。

 尊敬できるモノは、常に同じ魅力を放っている。


 ここまで、つらつら書いてきて、また雑誌を見直してみたら、肝心の特集の一枚目を読み飛ばしているではないか。

 さすがのブルータスで、「尊敬できる『日用品』」を八つの観点から特徴づけている。
 どれも納得だが特にこの二つがいい。

 機能を超えた意思が見える。
 使っている時間が楽しい、心地いい。


 モノに対する時に、そんな感性で接しているか、ということもあろうが、自分の思想を持っているかと問われている気もする。

 しかし、それ以上に、とんでもない言葉が、ページ下欄に書かれていた。
 ウィリアム・モリス(モダンデザインの父と言われるらしい)の言葉である。

 Have nothing in your house that you do not know to be useful,
or believe to be beautiful
 「役に立たない物、美しいと思わないものを、家に置いてはならない」


 圧倒された。