すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

久々に人気作家を読む

2019年11月02日 | 読書
 読書の秋、マイペースでそれなりに楽しんでいる。まとめ買いする時は新書系が多く、小説は少し抑え目が続いている。有名作家の未読本は、取り合えず外れが少ないなので選びやすい。そんなことでこの二冊を読む。「巧い表現だな」「らしいな」と思うが、結局心に残る作品は「情」がポイントで齢相応と納得する。


2019読了98
『素敵な日本人』(東野圭吾  講談社)


 文芸誌に連載された短編集。冒頭の作品「正月の決意」を読み始めたら、結構ふざけたキャラクターが出てきて、なんか奥田秀朗のタッチという感じがした。しかし、仕掛けはさすがの東野ワールドで、短編としてきちんと収めている印象を残す。いずれも気軽に読めるエンタメだ。特に最終話「水晶の数珠」がいい。


 それにしても題名の意図は何なのか。載っている作品名からチョイスしたのではない。どれも日本人が描かれ、それぞれの「素敵さ」がアピールされているということだろうか。小説を書く行為は、そもそも登場する人間を素敵と思うことによって進むから、ごく自然な気持ちか。読者が寄り添えればそう感じられる。



2019読了99
『首折り男のための協奏曲』(伊坂幸太郎 新潮社)



 しばらく遠ざかっていた伊坂作品。エッセイは読んでいたが小説がご無沙汰だったのは、頭が回転せず筋を追えない感じを受けたからだ。この連作短編集も最初は少し目まぐるしかった。しかし、徐々に落ち着いてきたのは、伊坂作品のキーマン「黒澤」が登場し、あまり視点が揺らがなくなったからと思ったのだが…。


 読了してみたら、これらはアンソロジーのための書下ろしやら雑誌掲載やらを、「改めて並べ直して、手を加え」た短編集だとわかる。どおりで既読したと感じた作品もあり、それは読み易かったのだ。「僕の舟」は我が年齢にふさわしい佳品だった。様々な趣向や文体があり、「協奏曲」とはよく名づけたなあと感心した。