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不寛容に不寛容であれ

2019年11月05日 | 雑記帳
 視聴率低下だけが話題になっている大河ドラマ『いだてん』が、今回の放送前に出したテロップは、徳井義実の件で「全編の収録が終了し、撮り直しが困難な状況だが、ドラマの流れを損なわない範囲で対応可能な措置を講じる」というものだった。正直、不快だった。多くの視聴者への配慮というより阿りに感じた。


 もちろんこれはNHKだけの問題ではない。マスコミこぞって右倣えであり、いかに編集して映すかに四苦八苦している。確かに申告漏れの金額には驚いた。そこにどんな事情や意図があったのは知る由もないが、凶悪な事件や犯罪とは質が違うだろう。作家筒井康隆も自らのホームページでこんなふうに語っている。

 「不寛容社会になってきたなあ。不寛容に対してだけ寛容に過ぎる気がするが。」

 まさに言い得て妙。メディアに出る人物の社会的責任うんぬんと声高に叫びたてる者がいる。たかがドラマやバラエティとは言わないが、娯楽とは本来様々な出来事を喜怒哀楽に結びつけて楽しむ類のような気がする。笑えばいいのに…。いじめを続ける者と廊下を走る者の罪を同列に扱ってしまうのは、愚かだろう。


 不寛容な傾向はずいぶん身の周りにも侵蝕している。古い村社会では「村八分」という言い方があった。それは階級的であり固定的であった。しかし現在はそうした格差が緩やかになった分、誰でもが狙われ、足元を掬われるような社会だ。それに対する不安が、逆に周囲に対して厳しい目をとらせ、寛容さを失わせた。

 ※「えほんひらけば」更新