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九州場所、熱狂したい

2019年11月14日 | 読書
 大相撲九州場所が始まった。今場所もいくつか見所があるが、それは終わってから総括したい。ところで、当然とは言え「相撲」と「大相撲」をいっしょにして考えてはいけないことを、この新書で改めて認識を強めた。相撲という格技の面白さと同時に、大相撲の持つ形式の深さや魅力について考えさせられた。


2019読了101
『大相撲の不思議』(内館牧子  潮出版社)



 著者と元横綱朝青龍の確執が話題になってから何年経つだろう。朝青龍が左手で手刀をきり懸賞金をもらう仕草に奮然と抗議したことに、彼女の大相撲愛の典型がある。「右は浄、左は不浄」の概念に基づくが、伝統と作法が結びつくから今に生き残り続けるという信念は揺るがない。朝青龍に向けた一言は重かった。

自分が身を置く伝統社会を舐めている。

 この言葉でふと昨年横綱白鵬が優勝した折の「万歳三唱」が物議を醸しだしたことを思い出した。視聴者の一人としても明らかに違和感を持ったあの万歳。この新書ではその件に直接触れていないが、布石となる「万歳事件」があったことを知る。それは2010年の九州場所で、白鵬の連勝を稀勢の里が阻止した時だ。


 その時、九州場所の観客は、稀勢の里が白鵬を破ったことに熱狂し、「バンザイ」を繰り返し大合唱した。この一件が白鵬の心のあり様を変えるきっかけになったのではないかと記す。以下は全くの私見だが、それが尾を引き、自分に対しても「バンザイ」の声が欲しかった思いがあのような行動をとらせたのではないか。


 ところで、横綱が敗れた場合、座布団が飛ぶのが通常?だが九州場所では出来ない。なぜか。升席の座布団は四枚縫ってつながれている…こんなミニ知識も豊富な一冊だ。著者は座布団投げは肯定的。熱狂を示す行為として容認している。協会と認識が異なる点も独特で読み応えがあった。ともあれ九州場所、熱狂したい。