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百冊目の決意

2019年11月09日 | 読書
 一昨年ドイツに旅行し、湧きおこった一つの問い。それは自分とその周り、そして社会のこれからを考えるうえで、非常に大きな意味を持っている。「老人たちは、なぜあんなふうに幸せな表情をしているのだろうか」…これは、現実にその場へ出向いたからこそ体感でき、帰国してからも深まっていく問いとなった。


2019読了100
『人口減少社会のデザイン』(広井良典  東洋経済)



 FBを通じておススメがあった本。類似した内容の文章を読んだこともあるが、新しい知見も多く、今私たちの置かれている現実を検証、解読し、実に明快な論が組み立てられている。自分の中で散在していた思いや考えを見事につなげてくれる一冊だった。ドイツの街づくりにも触れられていて、大きなヒントを得た。


 一つは「居場所」という点である。自分の目で見たドイツの都市では、街じゅうに多数の高齢者が居た。翻って日本ではどうか。都会はともかく地方では真っ先に挙がるのが病院だろう。休日であっても人が集まる場はかなり限定的だ。地域のコミュニティが盛り上がっている箇所もあるが、将来の見通しは見えにくい。


 当然だが、現状は歴史的営みの結果として生じる。国の政策によって進められたことが何を生んだか。便利になった交通手段、体系は何を物語っているか。今の少子高齢化という事態は、高度成長期に起こった人口移動が「タイムラグをへて別の形で顕在化している」という結果だと把握すれば、政策の見方も変わる。


 頻出する語がいくつかあるが、「持続可能性」はテーマの中心になっている。国の債務残高、借金が1000兆あり、将来へ先送りされている財務状況のなかで、「持続可能な福祉社会」を実現するため提起された方向性の多くに共感できる。少なくとも「拡大・成長を目指す昭和的な発想」には与しないと決めねばならない。


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