よ~すけの「年金プラスアルファ」―経過的加算―
今回は、苦手とされている受験生の方が多い「経過的加算」です。
年金は、改正を重ねるごとに経過措置が多くなっていき、
現在にいたっては文字通り複雑に絡み合っています。
経過的加算は経過措置の典型で、少々分かりづらいですが、
なぜこのような加算が必要なのかをみていきましょう。
経過的加算とは、
65歳まで支給される特別支給の老齢厚生年金の定額部分と、
65歳から支給される老齢基礎年金との差額、
つまり、65歳までの1階部分と65歳以降の1階部分の差額です。
定額部分は厚生年金保険から、
老齢基礎年金は国民年金から支給されるもので、
別の給付です。
経過的加算の大きなポイントは、
経過的加算の額を算出するために比較する期間は
「厚生年金保険の被保険者期間」ということです。
経過的加算の額を求めるための計算式(原則)は以下のようになります。
次の式のAとBの額の差額(=A - B)
A 1,628円 × 改定率 × 給付乗率
× 厚生年金保険の被保険者期間の月数(40年を限度とします)
B 780,900円 × 改定率
× 昭和36年4月1日以後の20歳以上60歳未満の厚生年金保険の
被保険者期間の月数
Bの式について、老齢基礎年金の額の計算式においては、
20歳以上60歳未満の第1号被保険者~第3号被保険者の被保険者期間を
すべて算入しますが、
Bの式は、老齢基礎年金の式の
「保険料納付済・免除期間(学生、若年者除きます)」のうち
「厚生年金保険の被保険者期間」に限定しています。
Aの「厚生年金保険の被保険者期間」では額に反映しますが、
Bの「昭和36年4月1日以後で20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者
期間」では額に反映されない(合算対象期間となる)部分
つまり、両者の差が経過的加算です。
例えば、会社勤めが昭和36年4月1日以降にあって、
23歳から24歳までの1年のみで、
その他の期間は自営業(=厚生年金保険の被保険者期間ではない)である者が、
20歳以上60歳未満の自営業である期間、
第1号被保険者としてすべて保険料納付済期間である場合、
厚生年金保険の被保険者期間は定額部分に額として反映され、
老齢基礎年金の額にも反映され、
合算対象期間となる期間はありません。
このようなとき、経過的加算は加算されません。
では、昭和36年4月1日以降に、
18歳から適用事業所である法人に就職した者が58歳で退職した
というケースでみてみます。
Aの「厚生年金保険の被保険者期間」は40年です。
しかし、18歳から58歳まで厚生年金保険の被保険者ですが、
Bの「昭和36年4月1日以後で20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者
期間」は38年です。
18歳から20歳になるまでの期間は対象外とされているので、
合算対象期間となります。
そのため、老齢基礎年金には38年分が額に反映されます。
退職後2年、第1号被保険者として国民年金保険料を納付すると、
老齢基礎年金の額は満額となります。
特別支給の老齢厚生年金の定額部分は原則として40年分を限度(報酬比例部分
は上限がありません)として計算されます。
この例の場合、定額部分を40年として計算することができます。
そこで、
この40年分の定額部分が38年分の老齢基礎年金に変わると、額が減って
しまいます。
この2年の差額を埋めるものが「経過的加算」であり、老齢厚生年金に加算
されます。
また、昭和36年4月1日前(3月31日まで)の期間は、老齢基礎年金の額の
対象となっていません。そのため、昭和36年4月1日前までの期間のうち、
厚生年金保険の被保険者である期間に対する厚生年金保険料の納付実績が反映
されません。その差の分についても経過的加算として加算されます。
過去に「経過的加算は老齢基礎年金に加算される(H19-2C)」という出題が
ありました。
仕組みばかりに目を奪われて、「経過的加算は老齢厚生年金に加算される」
という基本を見落とさないようにしてくださいね。
いかがでしょうか。
なんだか計算式が長くて、複雑そうに見える経過的加算も、その仕組みさえ
わかってしまえばすっきりすると思います。
これがわかれば、
他のところで経過的加算が登場しても不安になることは少なくなるでしょう。
【お知らせ】
よ~すけの「年金プラスアルファ」を執筆して頂いた山内洋輔氏が
6月14日(日)に、東京都中央区で、
社労士受験生向けの勉強会「年金科目攻略過去問ゼミ」を開催します。
ご興味にある方は、
yamauchi-sr@tees.jp
へ、お問い合わせください。
なお、お問合せに際しては、「年金科目攻略過去問ゼミ」という件名で、
お名前を明記のうえ、お願いします。
今回は、苦手とされている受験生の方が多い「経過的加算」です。
年金は、改正を重ねるごとに経過措置が多くなっていき、
現在にいたっては文字通り複雑に絡み合っています。
経過的加算は経過措置の典型で、少々分かりづらいですが、
なぜこのような加算が必要なのかをみていきましょう。
経過的加算とは、
65歳まで支給される特別支給の老齢厚生年金の定額部分と、
65歳から支給される老齢基礎年金との差額、
つまり、65歳までの1階部分と65歳以降の1階部分の差額です。
定額部分は厚生年金保険から、
老齢基礎年金は国民年金から支給されるもので、
別の給付です。
経過的加算の大きなポイントは、
経過的加算の額を算出するために比較する期間は
「厚生年金保険の被保険者期間」ということです。
経過的加算の額を求めるための計算式(原則)は以下のようになります。
次の式のAとBの額の差額(=A - B)
A 1,628円 × 改定率 × 給付乗率
× 厚生年金保険の被保険者期間の月数(40年を限度とします)
B 780,900円 × 改定率
× 昭和36年4月1日以後の20歳以上60歳未満の厚生年金保険の
被保険者期間の月数
Bの式について、老齢基礎年金の額の計算式においては、
20歳以上60歳未満の第1号被保険者~第3号被保険者の被保険者期間を
すべて算入しますが、
Bの式は、老齢基礎年金の式の
「保険料納付済・免除期間(学生、若年者除きます)」のうち
「厚生年金保険の被保険者期間」に限定しています。
Aの「厚生年金保険の被保険者期間」では額に反映しますが、
Bの「昭和36年4月1日以後で20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者
期間」では額に反映されない(合算対象期間となる)部分
つまり、両者の差が経過的加算です。
例えば、会社勤めが昭和36年4月1日以降にあって、
23歳から24歳までの1年のみで、
その他の期間は自営業(=厚生年金保険の被保険者期間ではない)である者が、
20歳以上60歳未満の自営業である期間、
第1号被保険者としてすべて保険料納付済期間である場合、
厚生年金保険の被保険者期間は定額部分に額として反映され、
老齢基礎年金の額にも反映され、
合算対象期間となる期間はありません。
このようなとき、経過的加算は加算されません。
では、昭和36年4月1日以降に、
18歳から適用事業所である法人に就職した者が58歳で退職した
というケースでみてみます。
Aの「厚生年金保険の被保険者期間」は40年です。
しかし、18歳から58歳まで厚生年金保険の被保険者ですが、
Bの「昭和36年4月1日以後で20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者
期間」は38年です。
18歳から20歳になるまでの期間は対象外とされているので、
合算対象期間となります。
そのため、老齢基礎年金には38年分が額に反映されます。
退職後2年、第1号被保険者として国民年金保険料を納付すると、
老齢基礎年金の額は満額となります。
特別支給の老齢厚生年金の定額部分は原則として40年分を限度(報酬比例部分
は上限がありません)として計算されます。
この例の場合、定額部分を40年として計算することができます。
そこで、
この40年分の定額部分が38年分の老齢基礎年金に変わると、額が減って
しまいます。
この2年の差額を埋めるものが「経過的加算」であり、老齢厚生年金に加算
されます。
また、昭和36年4月1日前(3月31日まで)の期間は、老齢基礎年金の額の
対象となっていません。そのため、昭和36年4月1日前までの期間のうち、
厚生年金保険の被保険者である期間に対する厚生年金保険料の納付実績が反映
されません。その差の分についても経過的加算として加算されます。
過去に「経過的加算は老齢基礎年金に加算される(H19-2C)」という出題が
ありました。
仕組みばかりに目を奪われて、「経過的加算は老齢厚生年金に加算される」
という基本を見落とさないようにしてくださいね。
いかがでしょうか。
なんだか計算式が長くて、複雑そうに見える経過的加算も、その仕組みさえ
わかってしまえばすっきりすると思います。
これがわかれば、
他のところで経過的加算が登場しても不安になることは少なくなるでしょう。
【お知らせ】
よ~すけの「年金プラスアルファ」を執筆して頂いた山内洋輔氏が
6月14日(日)に、東京都中央区で、
社労士受験生向けの勉強会「年金科目攻略過去問ゼミ」を開催します。
ご興味にある方は、
yamauchi-sr@tees.jp
へ、お問い合わせください。
なお、お問合せに際しては、「年金科目攻略過去問ゼミ」という件名で、
お名前を明記のうえ、お願いします。