今回は、令和6年-労基法・問3-C「賠償予定の禁止」です。
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使用者が労働者に対して損害賠償の金額をあらかじめ約定せず、現実に生じた
損害について賠償を請求することは、労働基準法第16条が禁止するところでは
ないから、労働契約の締結に当たり、債務不履行によって使用者が損害を被っ
た場合はその実損害額に応じて賠償を請求する旨の約定をしても、労働基準法
第16条に抵触するものではない。
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「賠償予定の禁止」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 R4-5-C 】
労働基準法第16 条のいわゆる「賠償予定の禁止」については、違約金又は
あらかじめ定めた損害賠償額を現実に徴収したときにはじめて違反が成立
する。
【 H23-2-C 】
使用者は、労働契約の締結において、労働契約の不履行について違約金を
定めることはできないが、労働者が不法行為を犯して使用者に損害を被ら
せる事態に備えて、一定金額の範囲内で損害賠償額の予定を定めることは
できる。
【 H10-2-C 】
運送会社がトラックの運転手を雇い入れる際、「故意又は重大な過失により
会社に損害を与えた場合、損害賠償を行わせることがある」旨の契約を締結
することは、禁止されている。
【 H30-5-B 】
債務不履行によって使用者が損害を被った場合、現実に生じた損害について
賠償を請求する旨を労働契約の締結に当たり約定することは、労働基準法第
16条により禁止されている。
【 H12-2-A 】
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め又は損害賠償額を予定
する契約をしてはならないが、実際に労働者の債務不履行により被った
損害の賠償を請求することは禁止されていない。
【 H5-4-E 】
使用者は、労働契約の不履行について損害賠償を請求することはできない。
【 H20-1-B 】
使用者は、労働契約の不履行について、労働者に対し損害賠償を請求して
はならない。
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「賠償予定の禁止」に関する問題です。
労働基準法16条では、
「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定
する契約をしてはならない」
と規定しています。
ということは、「労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を
予定する契約」を締結すれば、その時点で、同条違反となります。
つまり、損害賠償額を現実に徴収したときに違反となるのではないので、
【 R4-5-C 】は誤りです。
では、その契約内容について、
【 H23-2-C 】の「一定金額の範囲内で損害賠償額の予定を定める」と
いうのは、「損害賠償額を予定する契約」ですから、そのような定めをする
ことはできません。誤りです。
【 H10-2-C 】の場合は、「損害賠償を行わせることがある」旨の契約を
締結することとあります。
【 H30-5-B 】では、「現実に生じた損害について賠償を請求する」旨
を労働契約の締結に当たり約定することとあります。
これらは、いずれも「額」を定めているのではないので、「損害賠償額を予定
する契約」ではありません。
「賠償予定の禁止」の規定では、「金額を予定すること」を禁止するのであっ
て、現実に生じた損害について賠償を請求することを禁止するものではありま
せん。
そのため、これらの事項を労働契約に定めることは禁止されていないので、
いずれも誤りです。
一方、【 R6-3-C 】では、「損害を被った場合はその実損害額に応じて
賠償を請求する旨の約定をしても、労働基準法第16条に抵触するものでは
ない」とあるので、正しいです。
【 H12-2-A 】の「労働者の債務不履行により被った損害の賠償を請求
すること」、これは、「損害賠償額を予定する契約」を締結したのではなく、
損害があったから請求をするというだけですので、禁止されていません。
正しいです。
「損害賠償額を予定する契約」をすると、実損額にかかわらず、その額を賠償
しなければならなくなってしまうので、そのような契約を禁止しています。
一方、現実に生じた損害に対して損害賠償請求をすること、これがダメだと
いうことですと、使用者サイドのほうに大きな負担を強いることになってし
まいかねないので、労働基準法では請求することを禁止していません。
ですので、【 H5-4-E 】と【 H20-1-B 】は、誤りです。
労働契約の不履行について、労働者に対し損害賠償を請求することはできるので。
何ができるのか、何が禁止されているのか、整理しておきましょう。