山の中の大きい池の畔にある、マザー・ツリー何々という作品だった。
小雨模様のウイーク・デイだったから、誰もいなかった。
誰も居ないんじゃ、階段を登らないではいられない。
マザー・ツリーであるはずだけれど、ただ植わっているだけで何という木か分からない、という無駄足を踏ませるのも芸術作用か。
階段の裏に普通の鉄製ドアがあり、鍵が掛かっていなかったので覗いてみたら、単なる倉庫になっていた。
地下に降りる階段が有って欲しかった。
混沌の渦から抜け出そうとしているような、或いは一瞬で固体に封じ込められたような『爪』のレリーフがあった。
一匹または一人の両手爪だとすると、向きが奇妙だ。
半開きの両手のひらを天にささげかざしている形だろうか。
そう思えば、祭壇との関連付けもできそうで、イマジネーションが湧いてくる。