山のアスパラガスと言われているそうな。
草ぼうぼうの、ふだん無人の生家の敷地内に生えているのを数年前に見つけて、刈らずに保護してきた。
名前も知らなかったけれど、百合の一種であることは葉の形でわかるので雑草扱いはしない。
山百合は蜜がたくさんあるので、子どもの頃は山の中に咲いているのを見つけると花をもいで舐めたものだった。
花の時期ではない時には、百合の球根を遊び半分に掘りあげて持ち帰り、庭に埋めたりもした。
そうして庭に咲く百合の花に、いろいろな揚羽蝶が蜜を吸いにやってくるのを網で追いかけ回した。
百合根は美味しいと思わないけれど、珍重されていたし、この辺りの菓子屋が百合ようかんを名産として販売していた。
ただ、この鳴子百合の仲間は、名前通りに鳴子のような小さな花が鈴なりに地味にぶら下がるだけで花としての魅力に乏しい。
私は名前すら数年前に初めて知ったくらいで、滅多に見られないからか、こちらでも知る人は少ない。
今春になって初めて、山菜としての時期に居合わせたので茹でて食べてみると、ほんのり甘くて上品なのだ。
何人かに食べてもらったら、アスパラガスより甘くて美味しいと言う。
前のニイちゃんは、ちゃんと栽培して売り出すべきだなどとさえ褒める。
そうあっては、別格の扱いをしなくてはならない。
秋に黒い実が生るので採って蒔き、一定の範囲を特別区にして栽培すべしだ。