新刊の岡野弘彦詩集「美しく愛しき日本」(角川書店)のなかに
「ミサイルと桜前線」がありました。
初出一覧で確認すると、
「短歌」2009年5月号に掲載された作品。
そうか。
ちょうど、今頃の季節だったのでした。
今年を詠んでいるような錯覚を覚えてしまうのは
詩歌の力でしょうか。それとも
古典としての力でしょうか。
そこから、すこし引用。
ミサイルが空ゆく日なり。うら若き阿修羅の像を われは見にきつ
島のいくさに むごく果てたる友の顔。つね若くして われを責めくる
若き二十の君を忘れず。面澄みて 阿修羅のごとく剛き脛こぶら
われつひに 修羅におちゆく身なれども 桜を見れば 心なごみぬ
ミサイルはまだ放たれず。日本の桜のあはれ 胸にしみくる
空襲のさなかの桜。幹ごとに篝(かがり)のごとく 燃えほろびゆく
幽鬼のごとく 人らほろびし列島の かの夏の日の いまよみがへる
かなしみは人に告げねど 頭を垂りて 桜の道を今はかへらむ
列島をくれなゐ深く北上す。桜前線も ミサイル弾も
暗然と予感に耐へて仰ぐ空。四月五日の朝あけむとす
顔のなき骸(むくろ) つぎつぎ立ちあがり われにせまりて責めやまぬなり
後の世に われをかなしむ人あれな。今生の花 あはれ散りゆく
「ミサイルと桜前線」がありました。
初出一覧で確認すると、
「短歌」2009年5月号に掲載された作品。
そうか。
ちょうど、今頃の季節だったのでした。
今年を詠んでいるような錯覚を覚えてしまうのは
詩歌の力でしょうか。それとも
古典としての力でしょうか。
そこから、すこし引用。
ミサイルが空ゆく日なり。うら若き阿修羅の像を われは見にきつ
島のいくさに むごく果てたる友の顔。つね若くして われを責めくる
若き二十の君を忘れず。面澄みて 阿修羅のごとく剛き脛こぶら
われつひに 修羅におちゆく身なれども 桜を見れば 心なごみぬ
ミサイルはまだ放たれず。日本の桜のあはれ 胸にしみくる
空襲のさなかの桜。幹ごとに篝(かがり)のごとく 燃えほろびゆく
幽鬼のごとく 人らほろびし列島の かの夏の日の いまよみがへる
かなしみは人に告げねど 頭を垂りて 桜の道を今はかへらむ
列島をくれなゐ深く北上す。桜前線も ミサイル弾も
暗然と予感に耐へて仰ぐ空。四月五日の朝あけむとす
顔のなき骸(むくろ) つぎつぎ立ちあがり われにせまりて責めやまぬなり
後の世に われをかなしむ人あれな。今生の花 あはれ散りゆく