和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

意地悪国。

2022-02-23 | 本棚並べ
はい。前回からの続きになります。

『いじわるばあさん』第一巻の
2ページ目の四コマ漫画を引用。

①道路の電柱に、タクシーが衝突。
②運転手がでてきて『だれか水!!』
 ばあさんがコップに水をもってくる。
③運転手が飲み干した後に、驚いて『酒だ!!』
④警察官が、運転手の腕をつかんで、
 『つべこべいうな あきらかに よっぱらい運転だ!』
 事故車の影から、見ている ばあさん。

うん。インパクトがある四コマでした。
ちょうど、この四コマを見たときに思い浮んだのは、
拘束ということでした。
産経新聞2022年2月18日の2面に
「上海で50代邦人拘束 昨年12月スパイ容疑か」
という見出しがあり、記事の真中へんには

『中国でスパイ容疑などで日本人を拘束するケースが
 続いており、2015年以降に少なくとも計16人に達する」

また、この記事の最後には、こうありました。

「日中関係筋は17日、15年に北京で拘束され、
 懲役12年の実刑判決を受けて服役中だった
 70代の日本人男性が今月、搬送先の北京の
 病院で病死したことを明らかにした。
 男性はスパイ罪が適用されたが、
 どのような行為が罪に問われたのか明らかではない。」

はい。中国だけじゃなく、ソビエト・ロシアも引用します。
本棚から「家の神」(淡交社・文は鶴見俊輔)。
はじまりは、『ある帰国』とあります。そこを引用。

「長い戦争が終わってから、さらに8年たった
1953年に、ひとりの男が、シベリアの収容所から
日本にかえりついた。父母がすでに死んでいたので、
故郷の親類の家をたずねた。

第二次世界大戦後のソヴィエト・ロシアは
530,000の日本人を捕虜としてソ連領土にとどめおき、
その中からさらに戦争犯罪人を指定して、形式だけの裁判のあとで、
長年月にわたる重労働を課した。

その戦争犯罪人とは、連合軍による極東軍事裁判とは無関係に
ソ連の国内法にもとづいておこなわれた『かくし戦犯』である。

戦争が終わってから4年目の1949年に、捕虜の中から
約3000人がそのような方法で戦争犯罪人にえらばれた。

この人は、その3000人ほどの1人として25年の刑を言いわたされ、
シベリアの密林地帯で囚人としての労働にたずさわった。」

はい。このようにはじまっている一冊でした。

ここで、『いじわるばあさん』へともどります。
意地悪ばあさんは、そういえば、人が描かれておりますが、
イソップ物語には、どうぶつが、描かれておりました。
うん。最後に、イソップ物語から『びょうきの らいおん』
を引用してみます。ひらがななので、しかも訳は
石井桃子さんなので、全文引用しちゃいましょう。

「らいおんが、だんだん としをとって、
 じぶんで、えものを とりに、でかけられなく なりました。

 そこで、ほらあなの なかに ねて、はあ はあ、
 くるしそうに いきを しながら、びょうきで、あるけないのだ、
 という ふりをしました。

 そのうわさが、もりの なかに つたわると、
 いろいろな けものが、みまいに やってきました。

 そこで、らいおんは、そのけものたちを、
 つぎつぎに とってたべて、たいへん ふとって しまいました。

 

 そのうち、きつねが、らいおんのけいりゃくを みやぶりました。
 そして、あるひのこと、ようすを みに やってくると、
 らいおんの あなから、だいぶ とおいところに たちどまって、

 『びょうきは、いかがですか?』と、ききました。

 『ああ、きつねくんか。どうもぐあいが、よくないのだ。
  どうか、なかに はいって、このあわれな ともだちを、
  なぐさめて くれたまえ。』
 らいおんは、いいました。

 そこで、きつねは、
 『おや、それは、おきのどくさま 
  でも、ぼくは、なかへは はいりませんよ。
  だって、あなたの あなの いりぐちには、
 
  はいっていく あしあとばかりで、
  でてくる あしあとが、ないじゃ ありませんか。

  そうで なかったら、ぼくも、
  おそばへ いっても いいんだすがねえ。』と、こたえました。」


はい。参考文献ということで
『いじわるばあさん』No.1(朝日新聞出版・2013年)
産経新聞令和4(2022)年2月18日「上海で50代邦人拘束」記事
『新版家の神』(淡交社・平成11年)
『いそっぷいそっぷいそっぷ』(実業之日本社・1976年非売品)
最後の本には、石井桃子さんの「あとがき」があります。
せっかくですから、この機会に、そこから一部引用しておきます。

「イソップのお話が、二千何百年という、ながいあいだ、
わたしたちのあいだに伝わってきたのには、それだけの
わけがあると思わなければなりません。

わたしたちは、幼いとき、イソップのお話を聞きます。
そのとき、わたしたちは、多くのばあい、そのおくにかくされた、
もうひとつのいみに、気づきません。でも、お話の表面のおもしろさは、
わかります。幼い子どものためには、それでいいと思います。

そして、そのお話は、たいへんかんたんで、頭にはいりやすいため、
いくつも、いくつも聞きおぼえ、やがて、大きくなって、
何事かにであったとき、はっとして・・・・」



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昭和41年から昭和46年の頃。

2022-02-23 | 本棚並べ
「意地悪ばあさん」の連載期間は、
昭和41年から昭和46年とあります。

『ジャリトラ = じゃりを満載したトラック』が
登場する四コマがあります。
トラック運転手が筋骨隆々で口のまわりにヒゲをはやしてる。

①運転手『きをつけろィ もうろくババァ!!』
 ばあさん『やかましやィ ジャリトラめ!!』

②では、道路で口論。傘を突きつけ構える ばあさん。
③では、運転手が『やめた!』といってトラックに戻る
④で、ジャリトラを運転しながら
 『きょ年 中風で死んだイナカの ばあさまにウリ二つでョ…』

( P8「いじわるばあさん」第四巻 )

酒にまつわる箇所も、昭和40年代のことで
わたしに印象深い。

植木屋さんに庭の手入れを頼んだあとのようです。
庭の木には、ムシロのようなもので幹をまいてある。

①長男『 忙しいなかから たすかったョ!!
       ひや酒だけど、かえりに1パイ 』
 と座布団をすすめながら言っている。
 ばあさんが、お盆にコップをのせてくる。

②『キュ~ッ』職人がそれを飲み干す。
③『ウィ~』『いいこころもちにヨッパラッちゃったァ』
 と道具袋を肩にかけ、職人が帰ってゆく。

④ばあさん『エライ ありゃァ 人物が出来てる』
 長男  『え!! 水道の水のましたの』

( P74「いじあるばあさん」第四巻 )

酒ということで、この箇所を紹介してから、
おもむろに『いじわるばあさん』第一巻の
2ページ目の四コマ漫画を引用してみます。

①道路の電柱に、タクシーが衝突。
②運転手がでてきて『だれか水!!』
 ばあさんがコップに水をもってくる。
③運転手が飲み干す『酒だ!!』
④警察官が、運転手の腕をつかんで、
 『つべこべいうな あきらかに よっぱらい運転だ!』
 事故車の影から、見ている ばあさん。


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身の上相談。

2022-02-23 | 本棚並べ
「いじわるばあさん」の誕生秘話を紹介したので、
これからあとは、好きな箇所を引用してゆきます。

『いじわるばあさん』第二巻(朝日出版社・2013年)の
後の方に、それはありました(p92)。その四コマを紹介。

①他の家の入り口で家族や子ども達に迎えられるおばあさんがいます。
 それを、電柱の影から黙って見ている ばあさん。

②コタツに入って、手紙を書いている ばあさん。
 「  身の上相談
   『人から愛される老人になりたいの
     ですがどうしたらいいでしょうか?』
              匿名の老人より    」

 うん。この②には、どういうわけか畳と襖まで、
      ばあさんの黒い影が描かれています。
    

③ 回答する先生が、机にむかって『解答』を書いている。

④ ばあさんが、新聞受けから新聞をとりだし、
  身の上相談の解答欄をひろげて読んでいる。

 「 『サンデー毎日』の いじわるばあさんの
       ような事をぜったいにしないことです 」


これが二巻目です。『いじわるばあさん』は六巻まであります。
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『意地悪ばあさん』の誕生日

2022-02-23 | 本棚並べ
長谷川洋子著「サザエさんの東京物語」の長谷川家・年表から引用。

1966(昭和41)年~1971(昭和46)年まで
         『意地悪ばあさん』サンデー毎日に連載。

1967(昭和42 )年 『意地悪ばあさん』TVドラマ化(青島幸男氏主演)
          町子、入院、胃がんの手術

ちなみに、意地悪ばあさんや、サザエさんが連載中の
1970(昭和45)年 ノイローゼの学生による長谷川家放火未遂事件
というのがありました。


サザエさんを連載している時のことを、洋子さんが書いてます。

「毎日4時頃、新聞社のオートバイが原稿を取りにみえる。
どんなに気に入らない作品であれ、それまでに1枚は仕上げなくてはならない。

出来が悪いと思った原稿を渡してしまった日はずっと機嫌が悪く、
家に暗雲が立ち込めることになる。たくさんの愛読者に応えるためには、
昨日よりも今日のほうが、今日よりも明日のほうが作品はより面白く
なくてはならないと、半ば強迫観念に似た思いが姉を苦しめていたようだ。
始終、胃が痛いといって枕で胃の辺りを押さえていたし、
病院でもらうお薬も、あまり効き目がなかった。」
     ( p135「サザエさんの東京物語」の「町子姉の大病」 )

こうして、『意地悪ばあさん』が誕生する場面。
それが『サザエさん うちあけ話』の21番にありました。
そこの言葉をひろってみます。

「『いじわる じいさん』という外国マンガが、
 文春のマンガ読本に、レンサイされていました。

 主人公は、おバァさんのほうが
 グッと迫力があるのになァ、と、思いながら見ていました。

 老人ホームで、つかみ合いのケンカをするのは、
 きまっておバァさんと、いう話です。
 感じょう的で、生命力があります。

  ・・・・・

 サザエさんとて、コドモさんにも無害のホームマンガ。

 読まれる方は、無害でも かくほうは、取材はんいが、
 かぎられているから 四苦八苦です。
 ザッシ、エホンもふくめると 七千回以上 かいたのですから。

 ヒューマニズムに、あきていた ところに、
 サンデー毎日 しんねん号8ページを たのまれ、
 『いじわるばあさん』を かきました ・・・・」(p88)

そしてから、一年間の押し問答のすえに
41年1月から連載がはじまりました。


もうすこし、このブログで『いじわるばあさん』に
登場してもらおうと思うと、あらたまって、この誕生の
箇所を紹介しておかないといけないような気がしました。


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自分で決めればよさそうなものだが。

2022-02-23 | 本棚並べ
姉妹社「サザエさん うちあけ話 長谷川町子」の本の背が
もろくも、パカッと半分はがれてしまいました。
背文字の「け話 長谷川町子」の部分がとれる。
うん。古くて茶色に変色した背文字でしたから。
しょうがないか(笑)。

何回でも飽きない『サザエさんうちあけ話』の
面白さは、いったいどこからくるのだろうなあ。

そのヒントになりそうな箇所を引用してみることに。
長谷川洋子著「サザエさんの東京物語」(朝日出版社)
のこんな箇所。

「毎日、午後になると、町子姉が原稿の下書きを
 四、五枚持って二階から下りて来る。

 その中から私に一枚を選べと言うのだが、
 二つも三つも面白いときがあり、これも
 あれも面白いわよ、と言っても納得しなかった。

 厳選して一枚だけ選んでよ、と言い、それなら
 自分で決めればよさそうなものだが、
 長時間、考え続けていると頭が熱くなって
 どれが面白いのかわからなくなるのだそうだ。

 面白いと思う案まで丸めて屑籠行きになるときは
 本当に惜しく残念だった。」(p70)

ここで『いじわるばあさん』第5巻に登場してもらいます。
p81は、息子三人の会合

長男『いま漫画ブームなんだろ、オフクロ
                   ちっとは  あずかってくれよ』

次男『オレんとこも ワイフのオヤジが来てるんでネ』

三男『ダメだよ マンガの仕事って
      スゴくしょーもー するんだ』

こうして、三男の家へゆくことになります。
いじわるばあさんですが、ここでp95の四コマ漫画。

①三男『このマンガおもしろい?』と
    ばあさんに、できた原稿を差し出す。

②三男がニコニコしがなら、
 原稿を見いるばあさんの姿を、眺めている

③無反応な顔で、ばあさんが原稿をもどす。
 三男に見えないようにして自分のお尻へ
 あてた「やっとこ」をギュッと握ってる。

④ばあさんは隣の部屋へもどると腹をかかえて
 『オモシロイ』と笑っている。仕事部屋では
 三男が、その原稿をヤブき、落ち込んだ姿が見える。

( ちなみに、「やっとこ」は閻魔さまが
    舌をぬくときに使っている道具  )

はい。ここで、背が半分はがれてしまった
『サザエさんうちあけ話』をひらくことに。

15話『仕事の波』の活字部分から、ひろってみます。

「今もって わからないのが 案の波です。
 こっ苦べん励したからといってオモシロい
 マンガができる わけじゃありません。
 
 といって、むやみに出歩いてみてもムダ
 べつに けんこうも カンケイない

 ある時、むしんに サイホウ箱のせいりをしたりしている。
 フッと案が、うかびます。

 エンピツで下書きをして妹に みせます。
 この間、三分。
 『ゲラ ゲラ ゲラ』と
 笑ったから ヒットです。
  ・・・・・」(p62)

つぎに、忘れられない箇所がでてきます。

「さァ、案の出ない日と きたら、
 きのうから うなりつづけ
 
 努力すれば するほど
 洋子『どーも ムリがあるわネ 
     考えすぎじゃないの?』

 時間ばかりが ようしゃなく せまってきます。
 町子『しかたない、今日はこれで仕上げるか・・・』

p65につながってゆきます。

 こんどこそ、仕上がり。
 フウトウを とり出す。
 気に入らないほうは、
 四つにに引きさく。

 ハッ!! 
 頭がつめたくなる。
 描きなおしの方をやぶったのです。
 
 町子『バカだョ あたしゃ・・・・』


はい。こんな箇所を、わたしは
笑いながら読んでいるのでした。

この本を本棚へもどして、すっかり忘れた頃に、
また、この箇所を、読み直すことがあったなら、
初めての時のように、また笑っているだろうな。
そんな、リアルなカットが続きます(p62~65)。
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