和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

視点は読む人の数だけ。

2022-02-16 | 本棚並べ
はい。読まない癖して、つい買ってしまう本。そんな一冊に、
「サザエさんの〈昭和〉」(柏書房・2006年)がありました。
すぐ読めるかと思いながら、そのままになっておりました。
うん。それが読み頃をむかえたようです(笑)。

最初は、サザエさんの両親の名前を知ろうと本棚から
だしてきました。それは1ページ目にありました。
草森紳一の文が、はじまりにあります。そこを引用。

「・・・長谷川町子の『サザエさん』は、私たちの心の裏側に、
一つの風景となってはりついている。珍妙なヘアースタイルの
サザエさんの顔、夫のマスオ、父の磯野浪平、母お舟、弟のカツオ、
妹のワカメの姿が私たちの内側にペッタリ・・・・」(p6)

ちなみに、この本には新聞の切り抜きをはさんでありました。
忘れていたのですが、朝日新聞夕刊1992年7月2日の文化欄の切り抜きで、
鶴見俊輔の「長谷川町子さん追悼」とあります。
はい。以前のものを、この本にはさんでおいた記憶があります。

そのくせ、本自体は読んでいなかった。
この本については、長谷川洋子著「サザエさんの東京物語」で、
洋子さんが、あとがきで触れられておられました。

「しかし今、改めて『サザエさんの〈昭和〉』を読み返してみて、
視点は読む人の数だけあることを、当たり前のことながら学ばせて
いただいた。・・四コマ漫画の作品だけから町子の深層心理を分析
したり洞察したりされる先生方があり、そういう視点もあるのかと
驚かされたことだった。・・・」(p219)

はい。この機会に「いじわるばあさん」も読んでみたいし、
せめても、「よりぬきサザエさん」も読んでみたくなります。
そういう気にさせる視点が「サザエさんの〈昭和〉」にあるのでした。

ひょっとしたら、長谷川洋子さんの本は
「サザエさんの〈昭和〉」が、ニガリで豆腐がかたまるように
作用して、まとまったのかもしれないなあ。そんなのことを
つい思い浮かべてしまうような箇所が要所要所にあります。

おそらく、洋子さんの無数にある三姉妹とお母さんの思い出は、
このニガリがなければ、まとめられなかったかもしれないなあ。
そう思える本として「サザエさんの〈昭和〉」があります。

さいごには、鶴見俊輔氏の言葉を一箇所引用。

「 家庭の日常の雑事の中に生きがいがあるという
  サザエさんの哲学が、・・よく生かされている。 」(p67)



コメント (3)
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