和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

「きりん」の鉛筆。

2018-03-13 | 詩歌
竹中郁・採集「子供は見ている」(東都書房・昭和34年)を
読めてよかった(笑)。いろいろなことを思います。
せっかくなので、一篇の詩を引用。

それは小学四年生・平井健允の詩「雪」。

     雪

   詩を書いていると
   雪が降ってきた
   えんぴつの字がこくなった



この詩に添えた竹中郁の文は

「日本人特有の繊細な感覚に注目したい。
 はじめ鉛色にみえた鉛筆の文字が、
 雪の白さになじんだ目には、
 次には一段と濃くみえたのである。
 貴い感覚とほめてやるべきだ。」


ゆっくり、ページをめくっていると、
ここから、思い浮かぶ詩があります。


   雪   井上靖


 ―― 雪が降って来た。
 ―― 鉛筆の字が濃くなった。

 こういう二行の少年の詩を読んだことがある。
 十何年も昔のこと、『キリン』という童詩雑誌で
 みつけた詩だ。雪が降って来ると、
 私はいつもこの詩のことを思い出す。
 ああ、いま、小学校の教室という教室で、
 子供たちの書く鉛筆の字が濃くなりつつあるのだ、と。
 この思いはちょっと類のないほど豊饒で冷厳だ。
 勤勉、真摯、調和、
 そんなものともどこかで関係を持っている。


これは詩集「運河」にあります。

うん。そういえば、井上靖の最初の詩集「北国」には、
子供と少年とが、ところどころ登場しているのでした。
おかげで、詩集「北国」は色褪せず読めるのでしょうか?



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