和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

今、会いたい人はいますか?

2023-10-19 | 本棚並べ
「絵の旅人 安野光雅」(ブックグローブ社・2021年)の表紙の題名の下に
副題らしき小文字で「 思い出を語る人たち 伊藤元雄 編 」とあります。

あとがきにかえてには、こんな箇所

「2020年・・福井さんは打ち合わせが一段落した時に安野さんに
『 今、会いたい人はいますか 』と聞いたら

『 司馬さんだなあ。司馬さんと会っていると楽しいのよ。
  いつも前向きで、同じことを言わない人だった 』と、

 なつかしそうに語ったといいます。 」(p218)

今日になって安野光雅著「絵のまよい道」(朝日新聞社・1998年)が届く。
うん。本の帯に「週刊朝日連載」とあります。
おわりの方をひらくと

「書きながら、司馬さんは毎週この三倍もの長さの『街道をゆく』を、
 一千回以上書いてきたんだからな、などと思った。

 そもそもこの連載は司馬さんが亡くなったときの
 精神的空白のためにスタートしたようなところがある。・・ 」(p258)

「これを書いているいまは、司馬さんが亡くなってから二度目の
『 菜の花忌 』をむかえようとしている一月末である。 」(p259)

「・・・72歳だった。司馬遼太郎が亡くなったのも72歳である。
 『街道をゆく』の題字を書いた棟方志功も72歳だった。
 そしてわたしの父も72歳だった。  」(p260)

ということで、本の最後には

「 いま気がついた。72歳というのは一種の還暦で、
  12で割り切れる。格別の意味はないが・・・。  」(p261)

うん。本は、わたしにはお薦めの本といえるようなものではないのでした。
そうそう、『若い頃の自前の個展』にふれた箇所がすぐに見つかりました。
最後にそこを引用。

「まず会場を借り、案内状を刷り、作品を搬入してそれを飾り、
 サイン帳や茶菓子などを用意して、
 ふりかかる針のような視線に耐える期間のことである。」(p13)

「・・・個展は表現というものの宿命的な祭りなのである。
 だから、何を言われてもしかたがない。・・・・

 むろん絵が売れるということは奇跡に近い。
 しかしその頃は、どんなに純粋に、はるかな芸術の姿を
 夢みていたことだろう。

 その個展というパフォーマンスは、作品の良し悪しは別にして、
 いじらしいまでに感動的なものなのである。 」(p14)




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