和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

ドローン『飛鉢の法』

2023-09-03 | 思いつき
鴨長明著「新版発心集」上巻(角川ソフィア文庫)。
はい。私のことですからもちろん現代語訳の箇所をひらきます。

その現代語訳を読みすすめていると、何だか現代のことを
読んでいるような不思議な気分になってくるのであります。

ここは、ひとつ引用。
「浄蔵貴所(じょうぞうきそ)が鉢を飛ばすこと」(p350~352)

「浄蔵貴所と申し上げるのは・・・並ぶ者のない行者である。
 比叡山で飛鉢の法を修業して、鉢を飛ばしながら暮らしていた。

 ある日、空(から)の鉢だけが戻って来て、中に何も入っていない。
 不審に思っていると、これが三日間続いた。・・・

 四日目に、鉢の行く方角の山の峰に出て様子を見ていると、
 自分の鉢と思われるものが、京の方向から飛んで帰って来る。
 すると北方からまた別の鉢が来合せて、その中身を移しとって、
 元の方角に帰っていくのが見えた。 」

こうして犯人さがしにむかうのでした。

「・・老齢の痩せ衰えた僧がただ一人いて、肘掛けによりかかりながら
 読経している。『見るからにただ者でない。きっとこの人のしわざだろう』
 と思っていると、老僧は浄蔵を見て
『どこから、どのように来られた方か。
 普通では人がお見えになることなどございませんが』と言う。

『そのことでございます。私は比叡山に住んでおります修行者です。
 しかし生計を立てる方法がないので、この度、鉢を飛ばして、
 人から喜捨を受けて修行を続けておりましたが、
 昨日・今日と、大変不都合なことがございましたので、
 一言申上げようと、参上致しました』と言う。

 老僧は『私は何も知りません。でもとてもお気の毒なことです。
 調べてみましょう』と言って、ひそかに人を呼ぶ。

 すると庵の後ろから返事があり、出て来た人を見ると、
 十四、五歳くらいの美しい童子で、きちんと唐綾の華やかな装束を着ている。
 
 僧はこの童子に『こちらの方がおっしゃっていることはお前のしわざか。
 全くあってはならないことだ。これから後は、そのようなまねはしては 
 いけないよ』と諫めると、童子は赤面し、何も言わずに下がっていった。

 『こう申しておきましたので、今はもう同じようなことはしますまい』
 と言う。

 浄蔵は不思議に思いながら、帰ろうとする時、
 老僧は『はるばる山を分け入って来て下さり、
 きっとお疲れでしょう。ちょっとお待ち下さい。
 接待申上げたい』と言って、また人を呼ぶ・・・・

 浄蔵は『老僧の様子は、ただ者とは思えなかった。
 法華経を読誦する仙人の類だったのだろうか』などと語ったという。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 富士正晴、道元を読む。 | トップ | 迷いから離れる門出。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

思いつき」カテゴリの最新記事